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172 合流

 俺は揺れるヒッポリアスの背の上で、鑑定スキルと製作スキルを使った。


「ふう。慣れた作業とは言え、揺れる環境での鑑定製作スキルは少し疲れるな」

「ぴっぴい」


 ピイがすかさず頭と肩をもみほぐしてくれる。


「ピイ、気持ちいいよ、ありがとう」

「ぴぴいぃ」


 ピイに揉まれると、肩こり、首のこり、頭のこりがほぐれていく。

 それだけでなく、魔力のよどみも解消してくれるのだ。

 頭がすっきりして、魔力が体内から湧いてくるような感覚がする。

 本当は魔力が沸いているのではなく、滞りがなくなって、正常化しただけなのだろう。

 それでも、魔力が新たに沸いているのと同じような効果があるのだ。


 ピイにマッサージをして貰っていると、ヒッポリアスが鳴く。

『きゅお! みえた!』

 無事に拠点まで帰ってくることが出来たようだった。


 俺はヒッポリアスの背中を撫でる。


「お疲れさま、ヒッポリアス。ボアボアの家に寄ってくれ」

「きゅうお!」

「ありがとう」


 俺たちが拠点を出るときジゼラはボアボアの家にいたのだ。

 ヒッポリアスがボアボアの家に近づくと、扉を開けてジゼラが顔を出す。


「みんな、おかえり!」

「ぶぶうい」「ぶい!」

「がぁお」

「……おかえり」


 ジゼラの後ろから覗くようにボアボアとボエボエ、そして飛竜が顔を出している。

 意外なことに、アーリャまでいた。

 アーリャは子供の頃の憧れの対象だったジゼラと話がしたかったのかもしれない。


「べむ!」


 ジゼラやボアボア親子、飛竜、アーリャをみて、イジェに抱っこされた陸ザメは嬉しそうだ。

 短い手足をバタバタさせている。

 出会ったとき、シロを怖がったのに、ボアボア親子や飛竜のことは怖くないらしい。

 もしかしたら、陸ザメは速く動く物が怖いのかもしれない。

 この説は、あとでケリーに教えてあげよう。


 ヒッポリアスはボアボアの家の前で足を止める。

 俺はヒッポリアスの背から降りると、ケリーたちも背から降ろした。

 すると、シロが俺の足元にやってきて尻尾を振る。


「ジゼラ、説明と紹介は少し待ってくれ、水をやらないと」

「うん、待ってる」

「はぁはぁはぁ」


 走るヒッポリアスに付いてきたシロは、口を開け荒く息をしていた。

 俺は魔法の鞄から器を出して、水を入れると、ヒッポリアスとシロの前に置く。


「ヒッポリアス、シロ。喉が渇いただろう? 沢山飲みなさい」

「がふがふがふ」


 ヒッポリアスは小さくなって水を飲む。

 身体を小さくすることで、少量の水で喉の渇きを癒やそうとしているのだろう。

 物理的に考えたら、あり得ない。

 だが、そもそも、物理的に考えたら、身体が大きくなったり小さくなったりするわけがない。

 物理とは別の理屈で、小さくなったら少量の水で喉の渇きを癒やせるのだろう。


「ぴちゃぴちゃ」

 シロも勢いよく水を飲んでいた。


 そんなヒッポリアスとシロのことを撫でる。

 小屋から出てきたジゼラとアーリャもヒッポリアスとシロを撫でた。

 ボアボアたちも小屋から出てきて、俺たちのことを興味津々な様子でみている。


「お疲れさま、ヒッポリアスにはもう少しがんばってもらわないとだが……」

「きゅお!」


 水を飲んだヒッポリアスは任せろと言って再び大きくなった。


「三人とも、子魔狼たちと一緒に拠点に戻ってくれ」


 悪魔、つまり魔熊モドキと戦うのだ。

 あいつは相当な強さだった。

 ケリーたちを連れて行くのは危険すぎる。


「シロ、皆を頼む」

「わふ」


 シロは力強く任せろと返事をしてくれた。

 ケリーは、少し不満げだ。


「私は甜菜の様子をみてみたいのだが。今後の為に大切なことだ」

「イジェも」

「気持ちはわかる。だが、危険すぎる。明日にでも改めて行こう。それにヴィクトルへの報告も頼む」

「わかったよ」

「ウン。アシタ」「わかた」「わふ」


 ケリー、イジェ、フィオは、留守番を納得してくれた。


「子魔狼たちは、どうかな……」

「みゅ……」


 俺はケリーが前に吊している籠の中を覗く。

 子魔狼たちは、まだ気持ちよさそうに眠っていた。

 ヒッポリアスの揺れが心地よかったのかもしれない。


 話が一段落付いたと判断したジゼラが、イジェが抱っこする陸ザメを見て言う。


「新しい仲間? お名前は?」

「この子には名前はないよ。保護をしたばかりだ」

「ふんふん。ぼくはジゼラ。で、ボアボア、ボエボエ。そして飛竜だよ」

「べむう」

「で、ジゼラ。仕事を頼みたい」

「お、いいよ! なんでも言って」

「悪魔が出たから倒す」

「りょうかーい!」


 元気に返事をすると、ジゼラは近くにあった鍬を手に取る。

 ボアボアの家は畑の近くにある。

 だから、農具類もボアボアの家の近くにおいてあるのだ。


 あとで農具置き場も作りたいなとふと思った。


 すると、ケリーが呆れた様子で言う。

「まさかとはおもうけど、鍬で戦うつもり?」

「うん。そうだけど……」

「ジゼラ安心しろ、剣は直しておいた」

「さっすが、テオさん!」


 俺は先ほど修繕した剣を、魔法の鞄から取りだしてジゼラに渡した。

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