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171 剣の修繕

 しょんぼりした陸ザメをみて、イジェは言う。


「オイデ」

 そういって、イジェが手を伸ばすので、俺は陸ザメを渡した。


 そうしてから、俺は陸ザメに皆のことを紹介する。


「ケリーと、イジェ、フィオだよ。皆、仲間だ」

「べむ? べむ!」

「アナタはトウサンのトモダチ?」

「べむう?」

「ナニをイッテイルのかワカラナイケド……。タブンソウナノカナ」

「イジェに、にたひとと、なかよかたて!」


 天才テイマーであるフィオが通訳してあげている。

 陸ザメもイジェに抱っこしてもらえて、嬉しそうだ。


「べむべぇむ!」


 陸ザメは嬉しそうに一生懸命話している。

 それをフィオが通訳し、イジェが返事をしていく。


 どうやら、陸ザメはイジェの一族と仲良くしていたらしい。

 陸ザメたちは甜菜を栽培してイジェの一族に渡していた。

 そしてイジェの一族は、陸ザメたちに対価として色々渡していたようだ。

 イジェの一族が渡した物には、甜菜以外の食べ物や、衣服や農具なども含まれていたようだった。


 陸ザメの話は非常に興味深い。

 だが、俺にはやらねばならないことがある。


「ケリー、子魔狼たちをそのまま頼む」

「もちろん構わないが……」

「イジェ、フィオ、その子を頼む」

「ワカッタ」

「わふ! まかせて」


 そして、俺は魔法の鞄から金属の塊を取りだした。

 続いて、ジゼラから預かった折れた剣も取りだす。

 ケリーがその剣を見て尋ねてきた。


「テオさん、それは?」

「ジゼラの折れた剣だよ。修繕するって約束してたのを忘れていた」

「そうか、これからジゼラには戦ってくれとお願いする予定だったね」

「ジゼラなら、鉄の棒でも勝ちそうだけどな」


 礼儀として、武器ぐらい整えてあげるべきだろう。


「ということで、少し集中する。ヒッポリアス、振動を少なめでお願い」

「きゅお!」


 そして、俺は鑑定スキルを剣にかけていく。

 ジゼラの剣の詳細を把握していった。

 やはり、いい剣だ。オリハルコンが八、ミスリルが二の割合で混合されている。

 他にも色々な微量の金属や炭素が混じっていた。

 熟練の職人が丹精を込めて作ったのだろう。

 王都外れに家が建つぐらいの値段がするに違いない。


「だからこそ、修繕しがいがあるというものだ」

「そうなんだね?」

「あ、ごめん、ケリー。鑑定、製作スキル中に何か言っても返事してくれなくて良いよ。独り言だからね」

「そうか、気持ちはわかる。私も研究中に独り言を呟いているらしいからな」


 うんうんとケリーは頷いている。

 どうやら納得してくれたようでなによりだ。


 俺は金属インゴットにも鑑定スキルを軽くかける。

 インゴットを製作する際に素材の精選まで行なっているので、金属の純度は非常に高い。

 だから、改めて鑑定スキルをかけなくても、素材特性は把握済みではある。

 敢えて鑑定したのは剣の特性を把握したあとに、改めて素材特性を頭に入れて、修繕プランを組み立てやすくするためだ。


「修繕に使う素材は、元々の素材に似せた方がいいから……やはりオリハルコンとミスリルを中心にして……」


 ヒッポリアスと金属を採掘しに行ったとき、オリハルコンやミスリルが見つかった。

 その際、今後のためにとオリハルコンとミスリルのインゴットもつくっておいたのだ。


 折れた剣と素材の金属の鑑定が終われば、あとは製作スキルで修繕するだけだ。

 丁寧に金属の配合と細かな構造を調整しなければならない。

 非常に難しい作業だが、俺にとっては数え切れないほど行なってきた作業だ。

 もう慣れたものだ。


 ジゼラたちと同じパーティーにいた頃は、戦闘中に修繕したりもした。

 敵の猛攻の中、素早く修繕してきたのだ。

 ヒッポリアスの揺れる背の上だろうと、何の問題にはならない。


「よし、できた」

「え? 早いね」


 ケリーが驚いている。


「いや、今回はゆっくり丁寧にやった方だよ」

「そうなのか? とてもそうは見えなかったが……」

「戦闘中にやることも多い作業だからね」


 俺は修繕の終えた剣を軽く振ってみた。

 ジゼラ好みのよい重量バランスだ。

 もっとも、十年間で好みが変わっていなければだが。

 もし変わっていた場合は、調整しなおせばいいだろう。


「あとは……」


 念のために修繕の終わった剣に鑑定スキルをかけてみる。

 失敗していないはずだが、何事にも絶対はない。

 もし製作スキルを失敗していて、目に見えないような亀裂がある場合でも、鑑定スキルをかけることでわかるのだ。


「よしっと……。うん。いい剣だ」


 鑑定スキルをかけた結果、とても良い剣だとわかった。

 元々剣を作った職人の腕が良かったのだろう。

 俺は剣を魔法の鞄にしまう。


「テオさん、鞘は作らなくて良いの?」

「鞘は、ジゼラが持っているだろうさ」


 ジゼラは物を捨てられない性格だ。

 剣が折れようと、それまで使っていた鞘はそのまま魔法の鞄の中にしまっているだろう。

 それに、もし、鞘が壊れていたら、鞘もなおしてと俺に渡してきたはずだ。

 だから、とりあえずは剣をなおすだけで良いだろう。

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