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146 魔法に興味があるフィオ

 ヒッポリアスも、子魔狼たちも、ボエボエも、本当に楽しそうに泥だらけになっている。


「……ボアボアもぬた打つのが好きだもんな」


 当然、ボアボアの子供であるボエボエもぬた打つのが好きなのだろう。


「ミンナ、タノシソウ」

「そうだなぁ」

「オカシ、ココにモッテクル」

「あ、僕も手伝うよ」


 そういって、イジェとジゼラが食堂へと走っていった。


「うーん。飛竜とボアボアが気になるな。どうしてた?」

「元気にしてましたよ。色々と農作業も手伝ってくれました」

「そうなのか。そういえば、ケリーは?」

「向こうでボアボアさんたちと休憩中です」

「なるほど。調査している最中なのかもしれないな」


 ケリーは魔獣学者である。

 新大陸のキマイラであるボアボアや珍しい飛竜の生態を調べるのに夢中なのかもしれない。


「テオさんも、あとで見に行ってさしあげたらどうですか?」

 ヴィクトルが笑顔で言う。


「そうだな。通路を建設しおえたら、行こうかな」

「それがいいでしょう。ボアボアさんたちもテオさんに会いたいでしょうし」


 そんなことを話していると、

「きゅううおおお」

『いく』「ぁぅ」『いっしょ』

 ヒッポリアスと子魔狼たちが騒ぎ出した。

 どうやら、俺が今すぐボアボアの家に向かうと勘違いしたらしい。

 泥遊びに夢中になっていたから、聞き間違えたのだろう。


「大丈夫、まだ行かないよ」

『そっかー』

「わふう」

「あとで行くときは一緒に行こうな」

「きゅういお」

「きゃふきゃふ」「ぁぅぁぅ」「ひーん」


 ヒッポリアスと子魔狼たちがドロドロのまま、石の床に上がってくる。

 どうやら泥遊びに満足したようだ。

 ヒッポリアスたちと一緒にボエボエも上がってきた。


「ボエボエはもういいのか?」


 ボエボエはボアボアの家からやって来たばかりだ。

 泥遊びをし始めたのも、ヒッポリアスたちより後である。


「ぶぶい! ぶーい?」

「向こうでぬた打ちまくってるのか」


 どうやら、ボアボアの家の近くにあるぬた打ち場で思う存分ぬた打っているらしい。

 だから、今の泥遊びしたい欲は、さほど高くないようだ。


「ぶい! ぶい!」

「そっか、おやつが楽しみなのか」


 今は泥遊びよりもおやつを食べたい気持ちの方が強いとのことだ。


「じゃあ、一緒におやつを待とうな」

「ぶぶい!」


 そして、また石の床の上で子供たちは遊び始める。

 床が泥だらけになるが、仕方がない。

 元々、靴のまま歩く場所なのだ。


「定期的に、床掃除もしないといけないかもなぁ」


 思わずぼそっとつぶやくと、ヴィクトルが反応してくれた。


「そうですね。ですが、排水溝掃除よりは重要性は低いかもしれません」

「そうだな。排水溝と違って詰まることもないしな」


 そんなことを話していると、冒険者に囲まれていたアーリャがやってくる。

 これまでアーリャは冒険者たちから、雨を降らせる魔法について質問攻めにあっていた。

 魔導師の冒険者はもちろん、戦士系の冒険者にとっても、未知の魔法は興味の対象なのだ。


「アーリャさん、お疲れさまです」

 ヴィクトルがねぎらい、

「うん。疲れた」

 アーリャは俺の近くに座った。


「ありゃ、すごい!」

「わふわふ!」


 フィオとシロはアーリャの正面に座って、きらきらとした目でじっと見つめる。

 

「ありがと」

 アーリャも照れているようだ。


「ありゃ、どやるの?」

「雨?」

「そう!」

「…………難しい」

「そかー」


 少しフィオはがっかりしたように見えた。


「……フィオは魔法に興味あるのか?」

「まほ! すごい!」

「そうだな、凄いよな」

「うん。ふぃおも、まほ、つかいたい」


 どうやら、フィオは魔導師になりたいようだ。

 そんなフィオを見て、少し考えた後、アーリャが言った。


「……フィオ。魔法教えようか?」

「いいの?」

「うん」

「やたー」「わふぅ」


 フィオはとても嬉しそうだ。

 シロまで、自分のことのように喜んでいる。


「でも、雨を降らせられるようになるかは分からない」

「むずかし?」

「うん。難しい」

「そかー」

「それでも、魔法使えるようになりたい?」

「なりたい!」

「じゃあ、教えてあげる」

「やたー!」「わふわふぅ!」


 フィオとシロの尻尾が元気に揺れる。

 本当に嬉しそうだ。


「いいのか、アーリャ」

「いい。魔導師としての仕事は少ないから」

「それは気にしなくていいんだぞ」

「そうですよ、アーリャさんは、役に立ってくれていますよ」

「ありがとう。でも、教えることで学べることもあるから」


 そういって、アーリャは微笑む。


「そうか。なら、頼む」

「うん」

「実はフィオは魔力量がとても多いんだ。だから魔導師の素養はあると思う」

「魔導師に必要な素養は、魔力量だけではないけど」


 俺自身、魔力量だけなら相当あるが、魔導師にはなれなかった。


「それでも、魔力はあるに越したことはないから。将来有望」


 アーリャはフィオとシロの頭を撫でた。


「えへへ」「わふふ」


 フィオとシロは嬉しそうに尻尾を振っていた。

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