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122 ボアボアの治療

 ケリーは続いてボアボアの熱を測ったり、目をみたり、口の中を見たりと色々する。


「毒はまだ残っているかもしれない」

「解毒薬を作ろう」

「頼む」


 俺は魔法の鞄から解毒ポーションの材料を出していく。


「テオさん。解毒ポーションの他に飲める傷薬ポーションは作れないか?」

「飲める傷薬ポーションとは? 傷薬ポーションは塗ったりかけたりするものだが……」

「いやなに、内臓が傷ついているからな……なんとかならないかと」

「ふむ。たしかに、内臓は傷ついているだろうな」


 ボアボアは魔熊モドキの角を腹に刺されたのだ。

 そして毒を送り込まれた。


「身体の中も一応解毒ポーションと傷薬ポーションで洗ってはいるが……」


 内臓の内側も傷が付いていると言われたら、まあそうだろう。


「まあ、作れる物なら、作ってやりたいが、さすがに難しいかな」

「テオさんでも難しいか。なら仕方ないな」

「ああ、すまない。口に入れるものは、特に慎重にならないといけないからな」


 知識のない状態で口に入れる物をつくるのは恐ろしい。

 ちょっと失敗するだけで、命に関わる


「まあ、塗る系のポーションも危険はあるが……」


 俺は昔錬金術師のところで修行して、薬の知識を手に入れたのだ。

 そこで得た知識で、傷薬ポーションや解毒ポーションも作っている。


「とりあえずは、解毒ポーションを作っておこう」


 とはいえ、ボアボアを治療してから数時間しかたっていない。

 治療の際には解毒ポーションを飲ませている。


「少し弱めに作ることにしよう」

「ぶぼ」


 ボアボアは「弱くなるなら、苦さと臭さもましになるの?」と聞いてくる。


「残念ながら、軽くなるのは身体への負担だけだ。苦さも臭さも変わらないぞ」

「……ぶぼ」


 ボアボアは見るからにしょんぼりしている。

 俺はそんなボアボアの頭を撫でた後、解毒ポーションの製作に入る。


 改めて薬草の鑑定から行なって、製作スキルで一気に解毒ポーションを作った。

 完成したら、改めて解毒ポーションの鑑定を行ない成功していること確認する。


「よし、出来た。ボアボア、ものすごくまずいがこれを飲んでくれ」

「ぼぼお」


 ボアボアは一生懸命、まずい解毒ポーションを飲む。


「ボアボアは偉いな」

「ぴい!」


 ピイもボアボアを褒めるように、その腰の上でプルプルと振動していた。


「飲める傷薬ポーションは無理だが……。まあ胃薬みたいなものなら作れる」


 胃薬ポーションは、昔作り方を教えてもらっているので作れるのだ。

 俺は素早く胃薬ポーションを作ると、ボアボアに飲ませる。


「ぶぼぼ」

「お礼なんていいさ。ボアボアは俺の仲間、ジゼラを助けてくれたんだ。恩返しみたいなものだよ」

「ぶぼ」


 解毒と胃薬のポーションを飲んで、少し楽になったのか、ボアボアは眠そうにする。


「ボアボア。寒くないか?」

 ケリーがボアボアを撫でながら尋ねる。


「ぶぼぼ」

「少し寒いみたいだ」

「そうか。ならばこれを使うといい」


 ケリーは持ってきた荷物の中から、大きな布を取り出すと岩の上に敷く。


「ボアボア。この上に乗るといい。毛皮があるとは言え岩は体温を奪うからな」

「ぶぼ」


 お礼をいって、ボアボアは布の上に乗る。

 すると、ケリーはさらに大きな毛布を取りだして、ボアボアにかけた。


「これでよしと。寒さはかなりしのげるはずだ」

「ぶぼぼあ」

「体温を維持するために体力を使うからな。怪我をしているときは、大人しく温かくしてゆっくりするといい」

「ぼぼあ」「ぶぶぼ」


 ボアボアと一緒にボアボアの子供もケリーに向かって鳴いた。


「ケリー。ボアボアたちがありがとうと言っているぞ」

「お礼など不要だよ。したくてやっているだけだからな」


 そういって、ケリーはボアボアの側に座るとゆっくりと撫でる。

 ボアボアの子も毛布の中に入って、親に寄り添っていた。


 日の光の入らない洞穴の中だから、わからないがそろそろ日が沈むころだ。


「ボアボア。まぶしかったら言ってくれ。少し離れる」


 いまは俺の魔道具によって明るくなっている状態なのだ。


「ぶぼ」


 ボアボアはまぶしくないし、そのままでいいと言ってくれる。

 人間である俺としては、真っ暗だと不便なのでとても助かる。


「そうか。まぶしいと思ったら、いつでも言ってくれ」

「ぶぼあ」


 しばらく経つと、ボアボアは寝息を立て始める。

 薬を飲んで楽になったのなら、嬉しい。


 すると、ボアボアの背中辺りに乗っていたピイが毛布から出てくる。


「マッサージしてくれてありがとうな」

「ぴい」


 俺が小声でお礼を言うと、ピイも小声で返事をする。

 そしてプルプルした後、部屋の隅の方へ行った。

 そちらには、ボアボアの食べ残しが散乱している。

 そのせいで、洞穴の中はかなり臭かったのだ。


「ぴい?」

「がお」

「ぴぴぃ」


 ピイは飛竜に、掃除していいか聞いたのだ。

 そして、飛竜はもちろんいいよと返事をした。


「ぴいぴい」

 ピイは食べ残しを綺麗に掃除していく。

 相変わらず凄い勢いだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] なんやかんや言っても日常で一番頼りになるのはピイだと思われます〜
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