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105 大きな犂とヒッポリアス

 畑に戻ると、皆のんびりと作業を再開していた。

 そして、ケリーとフィオが子魔狼たちと遊んでいる。


「フィオ、ケリーありがとうな」

「わふ! まかせて」

「子魔狼たちは元気だぞ。おやつも食べて、そろそろ眠たくなる頃かも知れないな」


 子魔狼たちが楽しそうにじゃれつきに来る。

「きゃふきゃふ!」「……」「わふ!」

「おお、元気だな。少し待っていてくれ。ヒッポリアスたちに水をやらないとだからな」

『わかった!』「わふ」『まつ』


 子魔狼たちは行儀良くお座りしながら、尻尾を振っている。


「えらいな」

 そして、俺はヒッポリアスとシロのために器を出して水を入れていく。


 その間に、ヒッポリアスは機嫌良く畑の方に走っていった。

「きゅおきゅお!」

「おお、ヒッポリアス。散歩から帰ったのか。少し休むといいぞ」

 そんなヒッポリアスを冒険者たちが撫でまくっていた。


 俺はそんなご満悦のヒッポリアスに声をかける。


「ヒッポリアス。水をいれたから飲んだらどうだ」

『うん! ひっぽりあす、みずのむ!』


 ヒッポリアスはこっちに戻ってきて水を飲む。


「シロも飲みなさい」

「わふ!」


 ヒッポリアスとシロが美味しそうに水を飲んでいる間に、俺はおやつの準備もする。

 子魔狼たちと違って、ヒッポリアスもシロも肉をそのまま食べられるので、準備は楽だ。


「ヒッポリアス、シロ、おやつも食べなさい」

「きゅお!」「わふぅ!」


 ヒッポリアスとシロは、肉を美味しそうに食べていく。

 美味しそうに肉を食べるヒッポリアスたちを見ていると心が和む。


 そして、俺はフィオと子魔狼たちを見る。


「クロ、ロロ、ルル。いい子にしてたか?」

『くろいいこ』「ぁぅ」『してた』

「そうかそうか」


 俺は子魔狼たちを撫でまくった。


 しばらく休憩したあと、子魔狼たちのことをフィオに任せて、俺も作業に復帰する。

 ヒッポリアスも早く作業に戻りたいようで、犂のところでふんふん鼻息を荒くしていた。


『ておどーる。これつけて』

「おお。任せてくれ」


 先ほど作ったばかりの犂をヒッポリアスに取りつけていく。

 ヒッポリアス用の犂は牛用のものを大きくしたものだ。

 牛に曳かせる犂は後ろに人が付いて操作しなければならない。


「たい肥用の穴を掘るつもりだったが、俺は犂の操作したほうがいいかな」

『ておどーる、やって』


 ヒッポリアスも俺にやって欲しいようだ。


「わかったよ、任せてくれ」

「きゅお!」


 俺が犂の後ろにつくと、ヒッポリアスは元気に動き出す。


「きゅぅお!」


 ヒッポリアスは力一杯曳いていく。

 牛の比ではない力強さだ。

 見ていた冒険者たちから歓声があがるほどである。


「きゅお!」


 そしてますます、機嫌が良くなったヒッポリアスが、どんどん畑を耕していった。

 冒険者たちもたい肥用の穴をイジェと一緒に掘ったり、畑から石を取り除いたりと忙しく作業していた。



 太陽が西に移動して、空が赤くなりかけた頃。

 ヒッポリアスは結構広めの畑を耕し終えた。


「さすがはヒッポリアスだな!」

『ひっぽりあす、すごい?』

「おお、凄いぞ」

「きゅうお!」


 ヒッポリアスは嬉しそうに尻尾を振った。


「まさか一日で終わるとはな、ヒッポリアス本当に凄まじいな」


 冒険者たちもそう言って、ヒッポリアスを撫でる。

 イジェも冒険者たちと一緒に、ヒッポリアスを撫でていた。


「アシタには、タネをウエラレそう」

「そうか。楽しみだな」


 俺は改めて畑の周囲を見回す。


「ヒッポリアスの匂いがしているから、魔物に荒らされる心配は少ないとはいえ……」


 畑の周囲を柵で囲った方がいいだろう。


「明日はヒッポリアスが伐採してくれた木材を使って、畑を囲う柵を作るか」

「きゅお!」


 そして、俺たちはみんなで拠点へと戻る。

 みんな農作業で疲れているが、とても楽しそうだ。


 帰る途中、俺はイジェに尋ねる。


「イジェ。たい肥の方はどうなったんだ?」

「ミンナがテツダッテクレタからデキタ。シロもテツダッテクレタ」


 イジェは近くを歩くシロの頭を撫でる。


「シロもお疲れさまだ」

「わふぅ!」


 シロは充実した表情をしている。

 穴掘りで貢献したことが誇らしいのだろう。


「穴掘りしたせいで、大分汚れちゃったな」

「わふ?」


 シロの綺麗な白い毛皮が泥まみれである。


「シロ。今日は一緒に風呂に入るか」

「わふ!」


 シロも風呂に入りたいようだ。尻尾の揺れが大きくなる。


『ひっぽりあすも!』

「ヒッポリアスも一緒に入ろうな」

「きゅうぉ!」


 小さくなれば、ヒッポリアスも一緒にお風呂に入れるのだ。


 俺たちが拠点に戻ると既に料理が用意されていた。

 皆でご飯を食べ、後片付けを済ませると風呂場へと向かったのだった。

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