お荷物
俺は一瞬何を言っているのかわからなかった。
「アエルも君と気が合いそうだし、どうせ天界にいても何もせず食っちゃ寝してるだけだからコイツも連れていって面倒見てくれないか?」
なんでこんなポンコツニートを俺の胸が踊る様な冒険に連れていかなきゃ行けないんだよ。
「お断りです。コイツの面倒なんて見たくありません。俺はこれから美少女たちにちやほやされる予定なんです。こんなポンコツぽっちゃりニート天使は要りません」
「ちょっとパパ!私もこんな男と一緒だなんて嫌よ!第一地上に降りたら天界に戻ってこれるかわからないのよ?パパは私に会えなくなってもいいの?」
「私はそこにいる荻野さんが世界を変えてくれると信じてる。いつか天界に戻ってこれるようにしてくれるさ」
エルトナはそんな無責任なことを言ってくる。あれだろ、コイツが面倒くさいから俺に押し付けたいだけだろ。
「荻野さん、さっき美少女たちにちやほやされたいと言ってましたね。うちの娘も今じゃこんなんですが痩せたら中々美人ですよ?」
もしコイツを連れていき、痩せて本当に美人になったとしても中身を知ってるからなんとも言えないだろう。
「それにコイツも一応天使です。少しは役に立つんじゃないんですかね」
「私は嫌よ!絶対嫌!」
コイツもさっきからうるさいな。
「娘さん自身が嫌って言ってますし、連れていくのはやめておきたいのですが」
するとエルトナはため息をついた。
この人は一人娘を任せるほど俺を信頼しているのか?やっぱりただ押し付けたいだけだろう
「はぁ...わかりました...そこまで言うなら...」
わかってくれたか!
「無理やりでも連れていってもらいます」
は?と思っていると俺とアエルの足元に魔方陣が現れ眩い光を放っている。
エルトナは微笑みこう言った。
「荻野さんが世界を変えてくれることを信じています」
その大柄な巨体から出たと思えないくらい優しい声と優しい微笑み。
「そう言えば若返らせるのを忘れていましたね。『ヤーガン』これで今あなたの身体は18歳になりましたよ。あちらの世界では16歳で成人なのでお酒も大丈夫ですよ。」
18歳か!若いって素晴らしい!
「そんなことはどうでもいいのよ!ちょっと待ってよパパ!冗談よね?嘘でしょ!?ねぇ!ねぇってば!」
あぁ...このお荷物...あっち着いたら置いてくか。
そんなことを考えているとエルトナが言った。
「娘を捨てたりしたらどうなるか...わかってますよね」
いや無責任過ぎんだろ!あぁもう本当!面倒くさい!
「では健闘を祈ります」
辺りは光りに包まれ、未だに叫び続けているアエルの声を聴きながら俺は瞳を閉じた。
そしてポツリと呟いた。
「何か忘れてる」