特殊能力と強力なアイテム
「そうでしたね...あなたを転移させた理由をまだ話していませんでしたね。それでは説明しましょうか、あなたをこの世界に転移させた理由は...」
「ちょっと待って!」
「な、なんでしょう?」
「俺会社に勤めてるんですよ。退職届とか出してないですけどそこら辺とかどうなるんですか?」
「あぁそれならあなたはあっちの世界では亡くなったことになってますよ」
「マジで?それって死因とかどうなるんですか?」
「え?それはまあ、なんか死んだってことで...」
なんか死んだってなんだよ!半年に一回くらい死因がわからない遺体が発見されるってニュース見たけどもしかしてこれのことなんじゃ...
いやそんなのどうでもいい!それより大事なことが二つある!
「お願いがあるんだ!部屋のオタクグッズ処分させて!それと劇場版の魔法少女鍋子ちゃんまだ見に行けてなかったんだよ!」
説明しよう!魔法少女鍋子ちゃんとは子どもから老人まで幅広い世代に絶大な支持を受けている大人気アニメなのである。最近劇場版が公開されてますます勢いが増している。その劇場版をまだ見に行けてなかったのだ。数量限定、入場特典の喋る!鍋子ちゃんキーホルダーをゲットしたかったのに...!
「でもあちらの世界にはもう戻れないんですよね...」
終わった...くそっ!もういい!どうせあっちの世界では死んでるんだ!
「両方は無理だけど片方なら叶えられるんじゃない?」
そう言ったのはどこから出したのかわからないスナック菓子を頬張っていたアエルだった。
「それって本当か!?」
「えぇ...まぁ叶えられるには叶えられますが...」
どっちかなら鍋子ちゃんの方がいい!
「どうやって叶えるんだ!?」
俺が質問すると、エルトナはコホンと咳払いをし説明を始めた。
「実は異世界転移時に一つ特殊能力や強力なアイテムなどをランダムで授けるんです。本当はあなたにも転移と同時に授けるはずだったんですが...」
エルトナは苦笑いをしながら言った。
「実は今天界はすごく忙しくて猫の手も借りたいくらいなんです。なのでここにいるニートのアエルにも久々に仕事を任せたんです。そしたらこいつがやらかしまして...」
なんだろう、嫌な予感がする。
「仕事内容はあなたを転移させることだったんですが、無理やり転移させた上に特殊能力や強力なアイテムを授け忘れてまして...」
「つまりそこにいるニートが俺を無理やり転移させたにもかかわらず、言葉もわからないような場所に何も与えず放り出したと」
さっき言っていたミスとはこれのことだったのか。
人んちの階段から転げ落ちたし確かに無理やりだったかもな
「うるさいわね!反省してるから許して!」
コイツ本当に反省してんのか?
「本来異世界語も転移と同時に頭にインプットさせるんですがそれすらもしていなかったようで...」
なるほど、天使にも無能がいるのか。
「普通、転移者はここに来ないんです。ですが今回は謝罪と特殊能力や強力なアイテムを選んでもらおうと思い、ここに来てもらいました」
「その特殊能力やらを貰う代わりにさっきのどっちかを叶えると、そう言うことですね」
「はい...すみません、本当は願いも叶え特殊能力やアイテムも授けたいんですが流石に上に叱られるので...」
俺もよく上司に叱られたが天界も同じようなもんなのか
「わかりました。では劇場版の鍋子ちゃんを見せてもらいたいです。この世界は特殊能力とかは無しでのんびり暮らして行きたいと思います」
「いやそれは困るわ」
スナック菓子の次はキャンディーを舐めていたアエルが言った
「え?なんで?」
「実は今この世界がピンチでして...」
あっこれは...
「世界を救ってもらうために転移させたのでのんびり暮らすのはちょっとやめてほしいのですが...」
あーまじですか...
「いやおかしいですよね、勝手に人を転移させて世界を救えだ?無理無理。それこそ特殊能力やら強力なアイテムやらがないと無理ですよ」
何も持たせず勝手に転移させて死んじゃいましたとか無責任にも程がある。
だからと言って俺は劇場版鍋子ちゃんを見ないまま人生を終えるなんてできない。
するとエルトナは深くため息をつき
「わかりました...多分めちゃくちゃ叱られますが願いを叶えさらに能力も授けましょう」
まじか!それならいいわ!世界救ってやるわ!
「いいんですか!?じゃあ早速映画見せてください!」
「わかりました」
エルトナが指を鳴らすと魔方陣から大きいテレビが現れ劇場版鍋子ちゃんが始まった。
約90分の映画を見終わった俺は大満足した。まさか鍋子ちゃんのペットの犬がケルベロスになって街を滅ぼすとは思わなかった。
その俺を見てエルトナは言った
「では特殊能力か強力なアイテムを選んでもらいます」