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7.しょくぶつ

Q.

 め と は と はな が あるのに

 くち と みみ は ない

 これ な〜んだ?





 

ヒント

 おにわや うんどうじょう

 こうえんや かだんを

 みわたして みよう!






 この辺りは静かでいいなぁ。

 全然人気がない。

 昔はこの辺りは市場があって、栄えていたと聞くけれど、僕にはとてもそうは思えない。

 市場かぁ。

 遠い昔、金属や紙切れを使って、色々なものと交換していた、だっけ。


目元の綺麗なお姉さん

「──もっと遡れば貝殻や石なんかも使っていたらしいよ」


 へぇ、そうなんだ。


目元の綺麗なお姉さん

「人間って面白いでしょ」


 確かに。……これも面白いよね。


首筋の綺麗なお姉さん

「これって?」


 実際に使われていたかはわからないらしいけど、粘土を丸く固めたものもあったんだって。


指先の綺麗なお姉さん

「そんなの、いくらでも作り放題なんじゃない?」


 きっとこれをたくさん作れば作るほど、いろんなものと交換できる仕組みだったんだよ。


眉の綺麗なお姉さん

「お金って言うんだってね」


 現物貨幣に頼ってたなんて、よっぽど疑り深かったんだね。


目元の綺麗なお姉さん

「というか何かと交換じゃないと物がもらえないって言うのがそうなんじゃないの?」


 仕方ないよ。歴史の授業受けたでしょ?


目元の綺麗なお姉さん

「ああ、まあそうよね。有史以前からずーっと戦争の歴史」


 昔って野蛮だったんだねぇ。


目元の綺麗なお姉さん

「よくずっと戦争なんてしんどいこと、続けられるわよね」


 うーん。でも、歴史が進むとそうでもなくなっていくんだ。


首を傾げる所作の綺麗なお姉さん

「どういうこと?」


 うん。なんというか、遠距離で会話できる技術が発明されてさ。


目元の綺麗なお姉さん「ほうほう」


 最初は大きいし高いしだったんだけど、どんどん小さく安くなっていって、しまいには人類全員が一台ないしそれ以上、遠距離通信端末を持つようになったんだって。


首を傾げる所作の綺麗なお姉さん

「それとさっきの話がどうつながるわけ?」


 人間同士が会わなくて良くなったんだ。文面のやりとりだけ。わざわざ顔を合わせなくていい。


眉の綺麗なお姉さん

「いまいちよくわかんないなぁ」


 わざわざ人間同士が顔を会わせなくてよくなっていったもんだら、その時どんどん進化してた人工知能が色んな仕事を代わっていったんだよ。


目元の綺麗なお姉さん

「……えーっと。そうね、今まで役所とかに行かなきゃいけなかったけど、これからは全部その……遠距離通信端末? で人工知能が代わりに応対してくれるから、役所は要らなくなった……みたいな話?」


 そうそう。鋭いね。


目元の綺麗なお姉さん

「それでそれで?」


 え? ああ。全人類の仕事は最終的に人工知能が全部やるようになって、人間はみんな自宅から出なくてよくなったんだって。


目元の綺麗なお姉さん

「誰かと会いたいときはどうするわけ?」


 その頃にはもう仮想空間技術がとんでもなく進化していたから、わざわざ家から出なくても、いつでもどこででも好きなように会えたんだよ。


目元の綺麗なお姉さん

「ふーん」


 この頃には、チャットやメールが会話のほとんどを占めていたんだって。


目元の綺麗なお姉さん

「好きな時に送れて、好きな時に読めるからね?」


 そうそう。もはや朝も昼もなくなって、各人が好きな時間に好きなように活動するようになってたしね。働かなくていいから、趣味に没頭し続けられたんだ。


目元の綺麗なお姉さん

「それは今と一緒ね」


 まあね。ところで、戦争ってなんで起きると思う?


目元の綺麗なお姉さん

「そんなの、他人のものが欲しいからじゃないの?」


 この時代の人たちは、他人のものが欲しいときはお金を払えば良かったんじゃないの?


目元の綺麗なお姉さん

「えーっとそうか、そうよね。じゃあ、お金を払いたくなかった……とか?」


 まあそんな感じ。他にも色々あるけどさ。土地が欲しい、賠償金が欲しい、全部利権のために戦ったんだよ。お金だね。


目元の綺麗なお姉さん

「結局お金かぁ。私たちみたいに、お金なんかなくても自由に品物を取引できる方が絶対良いのにね」


 それは難しいんじゃないかな? 知ってる? 彼ら、口、と呼ばれる器官から波を発信して、それを耳と呼ばれる器官で受け取る、という形の原始的なコミュニケーションをしていたらしいんだ。


眉の綺麗なお姉さん

「ええ〜、不便!」


 まあ最終的には文字でのやりとりばっかりになっちゃって、口や耳はほとんど使わなくなってしまったらしいんだけどさ。


目元の綺麗なお姉さん

「目と指さえあれば会話できるものね」


 僕たちは全員脳波でつながってるよね。彼らはそうじゃなくて、頭の中で考えていることは一々口から波形を出す必要があったから……


目元の綺麗なお姉さん

「あっ! もしかして、考えていることとは別のことを言ったり出来る?」


 そうそう。嘘、って言うらしいね。


目元の綺麗なお姉さん

「ふーん。変なの。……あ、私目的地もうすぐそこなの」


 そうなんだ。じゃあね、知らないお姉さん。


目元の綺麗なお姉さん

「じゃあね。お気をつけて」





A.

 汎旧地球生物群──パン・スペース・コロニー──を起源とする、地球歴四八億年ごろの地球人(目と波と鼻は持っているが、口と耳は完全に退化していたので)

 解けましたか?

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