表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
現実は乙女ゲーよりも奇なり  作者: 春賀 天(はるか てん)
【第3部】
65/67

【8】因縁の再会⑱ー4 (雨降っても地は固まりません!)

【⑱ー4】



あぁ〜やっぱり奏って良い匂いがする⋯⋯



無意識にもスンスンと鼻をひくつかせていると、どこからともなく呆れたようなため息が聞こえてくる。



「はぁ〜、おい、お前らイチャつくのは自由だけどさ、時と場合を考えてくんねぇかな」



それは康介の声で、ハッと我に返った途端、目の前には奏の体が至近距離にあり、どちらも反射的に慌てて身体を引いて離れる



ーーわわ、私ってば、な、何やってんのおぉぉ!?



「い、イチャついてなんていないから!変なこと言わないでよ!」



私の抗議の声に康介は目を細めて鼻で笑う。



「ふん、端から見りゃ、ラブラブバカップルにしか見えねーわ。あのな、一応ここは公衆の目のある場所だからな。たからそういうのは人目のつかないとこでやるこった。ああ、勿論俺の前でもやめてくれよな。身内のそういうの目の前で見せられるのはマジ、キッついから」



これでもかと続く弟の問題発言に、さらに慌てふためいてしまう。



「は? ラブラブバカップルって、なに馬鹿なこと言ってんの!そんなわけないじゃん! あんた目がどっかおかしいんじゃないの? しかも奏にだってすごく失礼じゃない。ほら、奏も言い返してやんなよーー」



そう言って私は奏に視線を向けるも、視線を合わせた途端、何故か妙な気恥ずかしさから、お互いに焦ったように同時に顔を逸らしてしまった。



ーーな、なんだか無性に恥ずかしいんですけど!? バカ康介のヤツが変なことを言うから、奏とおかしな雰囲気になっちゃったじゃんか!



「康介、そういう言い方はちょっと⋯⋯結構困る」



視線を逸らしたまま、奏が手で口元を隠して、いたたまれないように口を開く。



「ほら見た事か、奏だって困ってるじゃない!康介のバカポンタンめ!」



私が康介に詰め寄ると、康介は面倒くさそうに首を左右に振った。



「バカポンタンって、なんだそりゃ⋯⋯まあ、いいけどよ、ーーはぁ、じれったくて見てらんねぇ」



いつもながら、そのぶてぶてしい態度にムカついたので、むんずと康介の服の裾を引っ張る。



「だったら変な言い方しなきゃいいでしょ! 若者をからかうのは大人の専売特許だって知らないの? あんた今からオヤジ化してたら後が大変だよ! 女子から思いっきりドン引きされるんだから!」


「おい、むやみに服引っ張んじゃねー!破れたらどーすんだ。大体大人の専売特許って、どっからそんな発想持ってくんだよ。少しは考えてもの言わねぇと、周りから恥かいても知らねえぞ?」



康介は私の手を振り払い、ヨレてしまったシャツを直している。私の方はいつもの事だが返す言葉が見つからず、ムググと拳を握りしめて弟を睨んでいると、間に入ったのは、これまたいつもの如く奏である。



「二人とも、その辺で。ここでこうしていても仕方ないし、先に行こうよ。お店も忙しそうだし邪魔になってもいけないから」



それを聞いて私もその通りだと頷く。



「ほら康介、奏の言う通りだよ。ここは姉の働いている職場なんだから、きちんとお行儀よくしてくれないと困るわ。あんた弟なんだから姉に恥をかかせないでよね」 


「はぁ? おめーがそれを言うかよ! それは俺のセリフだっつーの。ーーくっそ!なんで俺がわざわざ休みの日に、こんなの相手にしなきゃなんねぇだよ。あ〜あ、やってらんね、俺は先に帰るからな」



康介は苛立ちながら、くるりと踵を返して一人で引き返そうとするので、私は慌てて康介の片腕にしがみついた。何故かって、そりゃ奏と二人っきりにされるのは色々と困るってことを先日学習したばかりだし、しかもこの妙な雰囲気を作った張本人のくせして、このまま1人だけフェードアウトしようなんざ、絶対に許さん!!



「うわっ、何なんだよ!離せって!」


「わーわー、待って待って!!康ちゃん、ごめんごめん! そう怒んないで、私が言い過ぎた。お願いだから機嫌なおして一緒に来てよ。それに奏を誰も知らない所に一人置いていくつもり? あんたに付き合って、わざわざここまで一緒に来てくれたんでしょ? なのに放置って、それはないんじゃないの?」



すると康介は思いっきり呆れ混じりの長いため息をついた。



「はあぁぁぁ〜あのなぁ、誰のせいだと思って。奏がわざわざここまで来たのは姉ちゃんのせいだろうが」


「え? 私??」



その意外な言葉に私はきょとんと首を傾げる。



なんで私のせいで奏が? なんかあったっけ?



「見事に忘れてんのな。多分そんなこったろうと思ったよ。おめーが奏に二度と会えねぇとか馬鹿なこと抜かしやがるから、奏が心配して会いに来てんじゃねーか」


「あ⋯⋯」


⋯⋯そういや、私とんでもない失態をやらかして⋯⋯確かに康介にそんなことを言ったような⋯⋯あ、下着⋯⋯(回想中止



そこまで思い起こすなり、一気に顔が青ざめる。



「いっやあぁぁぁ! 思い出したくないぃぃ!!」



⋯⋯人間、忘れていた方が幸せな事もあるんだな。しかも今の今まで普通に奏と話してるとか、羞恥でシねるね私!!



私はバッと勢いよく康介の腕を離すと、脱兎の如くこの場から逃走しようとするも、逆に反射神経の良い康介にすかさず襟首を掴まれ引っ張られてしまう。



グエッ!!首締まる!!羞恥でシねるとは言ったけど、コロせとは言っとらんわ!!



「康介!いくら何でも手荒すぎる! 珠里が怪我でもしたらどうするんだ!」



そして見かねた奏が私を庇って康介に注意をしてくれる。ああ、ほんとに奏って優しい良い子だよね。



「仕方ねぇだろ、コイツ今逃げようとしてたんだぜ。それに今逃したら、俺の方はともかく姉貴はお前の事を避けまくるぞ。奏、お前はそれでもいいのかよ?」



その言葉にギクリとする。



確かに康介の言う通りかもしれない⋯⋯だって、だって、あんなエッチぃな下着を見られたら誰だって逃げたくなるじゃんか。超恥ずかしいし。



「それは絶対嫌だよ」


「は、はいぃぃ?」



今度は奏にがっしりと両腕を掴まれ、もはや逃げるに逃げられなくなってしまった。しかも奏の表情がなぜか怖い顔になっていて、思わず裏返った声が出てしまう。



ひえぇぇ、なんか奏怒ってる?



「全部珠里の勘違いだから。俺は何も見ていないし、珠里が気にするほど大した事じゃないよ。だから馬鹿な事考えないで」


「で、でも康介が皆見たって言ってーー」



私が言い淀んでいると、奏の顔が更に至近距離に詰め寄ってきて、私の頭はすでにパニック状態だ。



ひぃぃ、ち、近い、近いよ、奏!! 顔が近いって! けど奏ってほんと綺麗な顔してるな⋯⋯って、違っがぁ〜うから! 私なに観察しちゃってんの!? 馬鹿? 私って心底馬鹿なの?



「皆じゃない。少なくとも俺は見ていない。それに俺は珠里が何をしても態度を変える事は絶対にないから。俺を避けるとか冗談でもやらないで。心臓に悪いから」


「し、心臓って、そんな大げさなーー」



奏の怖いくらい真剣な眼差しを逸らすこともできず、もう何が何やら、あたふたと困惑するばかりで言葉がうまく続かない。



「大げさじゃない、それとも珠里は俺を殺す気?」


「ころ、殺すって、そんな馬鹿な話がーー」


「珠里」


「はいぃぃ!」



あまりの緊張からか背筋がピーンと伸びる。



こ、怖っ、奏が怖いよぅ!声は淡々として落ち着いているけど、全身から出てるオーラが怖いから!康介が怒った奏は怖いって言ってたけど、マジで怖いわ、これ。



「今後、俺を避けないこと。いいね?」


「え、えっと、それは⋯⋯」


「返事は?」


「はいぃぃ!絶対、絶対避けません!」



なんとなく脅されているような気がしないでもないが、これではもう、どちらが年上なのかわからない。しかも主導権は完全に奏の方にある。



「うん、じゃあ約束」



そう言って奏は私の両腕から手を離すと、そのまま私の右手の小指に自分の小指を絡ませて、まるで子供が約束をするような仕草をする。そしてどうやら奏のご機嫌も治ったらしく、そこはかとなく漂っていた怖いオーラは跡形もなく霧散し、いつものふんわりとした優しい笑顔が戻ってきた。


そんな奏の笑顔と絡められた小指を見た瞬間、私の中で今までとは違う恥ずかしさというか、くすぐったいような気分が沸き起こり、それに連動するようにドキドキと胸の鼓動がうるさいくらい高鳴っている。



ーーなんだろう、これ。なんで、こんなにドキドキするの? 心臓が早すぎるんですけど。これじゃ私がシんじゃうんじゃない? 心臓に悪いって、こういう事? 奏の言う通り、全然大げさじゃなかった。それになんだか顔が熱いし⋯⋯



どうやらボーッとしていたらしい私の背後から、長いため息と共に現実に引き戻す声が掛けられる。



「はあぁぁ、だからさ、そういうのは他所でやれって言ってるだろ。ったく、見せられてる俺ってなんだよ柱か? ああ、やっぱ俺は退散した方がいい様だから、後は二人で好きなだけやってれば?」



そう言うなり康介は私達を後目に、再びスタスタと歩き出す。



「康介!」


「ちょっ康介! 待って待ってってば!」



そして私と奏は慌てて、康介の後を追いかける羽目になった。



ーーなんかよくわからないけど、ごめん康介。奏ばっかり構ってたから拗ねちゃたのかな?



そう思って、康介の頭をよしよしと撫でたら⋯⋯逆効果だった。


そのあと「絶対帰る」と言う康介を私が必死で縋りついて止めたのは言うまでもないーー




「続」












評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ