第1章 ただいま部活設立中 5話
『生徒会行ってきたぞ。良いってさ。さっさとはじめようぜー!』
『えっ。ちょっ。この部活ってアイデア出すだけじゃないの?』
ぼくは、完全にそう思い込んでいた。たけしは、口を半開きにして、
『んなわけねーだろ。それこそ醍醐味じゃねーか。よーし、お前ら着ぐるみ調達に行くぞ!』
『当てはあるのですか?』
先導さんは、楽しそうにたけしを見つめる。陽の光が彼女を照らす。
『んなもん、テキトーに探せばいいだろ?違うか?』
ぼくは呆れた。まさか、そんなのでうまくいくのか?前々から思っていたけどやっぱりこの部は、不安だ。とりあえず意見を述べた。このままじゃいけない。
『ならさ、刺繍部に行ってみない?』
『どうか、、』
相づちを求めようとすると、たけしはもういなかった。『バタン。』と扉は大きな音を出し勢いよく跳ね返った。相変わらずたけしは、自由なやつだ。
『おいかけます?どうしましょう?』
先導さんは、賛成のようだ。何だかテンションが高い。
『うん。速く行こう。』
ぼくらは、彼を追いかけた。
やがて、刺繍部に着いた。たけしはもう部屋の中。
『失礼します。企画部の者ですが話を聞いてもらえませんか。』
ぼくは一言言うと部屋に入った。刺繍部部長八条 胡桃は、
『まぁ、座りな君達。話は聞いている。』
と言うと、ゆっくりしてけと言わんばかりにお菓子や飲み物を運んでくれた。
『早速、本題だが君達はどんな着ぐるみがほしいのかね?』
考えてなかった。『迂闊だったーー』と思っていると、
『あ、あの〜がっこうのマスコットキャラにしたいのですがいいでしょうか?』
先導さんは恥ずかしそうに答えた。もしかすると初めからこれを想定していたのかもしれない。(ちなみにぼくの高校には、3人のマスコットがいる。えてこ、けんた、とりのんと言う。)
『まぁ、かまわんが。ただこっちにも頼みがある。実は今度、親睦会があるのだがその余興とスケジュールを組んでくれないだろうか?こちらも何かと忙しくてね。』
『お安い御用だぜ。任せな先輩。』
たけしはそういうとぼくらを見つめた。ぼくらは『うん。』と首を縦に振った。
『よっし。これで交渉成立だぜ!お前ら、次行くぞ!』
『次ってどこだよ。浩文?』
ああ、何でたけしはいつもこうなんだろう。無計画にも程がある。だが、彼の前向きな姿勢にはちょっと憧れる。
『つっ、次は軽音部なんてどうでしょう?』
先導さんが言う。いつものことだけどやっぱり緊張しているようだった。ぼくは 『なるほどそれはいい考えだ。』と首を縦に振った。たけしはどうなのかな?と横を見ると、て、もういないし!速!
『失礼しました。あの、お願いします!』
『こっちこそ。頼むな。』
八条先輩はそう言って部屋に戻った。
ぼくらは一礼すると軽音部へと駆けていった。窓の外では木々が躍っていた。