３１話 魔王「大臣様が怒っている…？」
前回呪族の王女を倒し、ようやく荒れ果ての地の毒霧の呪いを解いた魔王たち。
しかしその帰りの道で街にいたはずの戦魔将軍が道端に倒れていたのを見つける。
彼の身に一体何があったのか？
魔王「戦魔将軍さんが倒れている 一体何が…！」
勇者「さー帰るか」
神官妹「はあ…流石に疲れましたわ…早く帰って甘い物を食べたいですわ」
呪族の幼女「あゅまいもの…！（甘い物）わらわもたゅべたいっ！（わらわも食べたい）」
勇者「図に乗んな」ゴチ
呪族の幼女「いゅたっ！（痛！）」
神官姉「眠い…」
魔王「ちょ、ちょっとちょっと！ 皆さん待って下さい！」
勇者「は？」
神官妹「何でございましょうか？」
神官姉「？」
呪族の幼女「いゅたい…（痛い）」
魔王「何がって…戦魔将軍さんが倒れてるんですよ！ 気にならないんですか！？」
勇者「ならない」
神官妹「申し訳ありませんが…あまり」
神官姉「ごめ…んね…魔王ちゃん…私も眠くて…早く…帰りた…い」
呪族の幼女「いゅたいけな（いたいけな）ころもに（子供に）なゅあにするのぢゃ…（なにするのじゃ）」
魔王「…；」
戦魔将軍「う…」
魔王「あ…！ 目を覚ましましたよ！」
勇者「ちっ」
神官妹（そのまま寝てれば良いのに…）
神官姉「ふぁ…」
呪族の幼女「ん…？ こゅのうしわたしゅか…（この牛は確か）」
魔王「戦魔将軍さん大丈夫ですか！？」
戦魔将軍「おお魔王様！ ようやく会えた」
魔王「こんなところで倒れて一体何があったのですか！？」
戦魔将軍「儂の事はどうでも良いです。それよりも街が一大事で御座る！」
魔王「街が一大事…！？ 何があったのですか！？」
戦魔将軍「実は魔王様がお作りなられた新しい魔界政府が、お取り潰しにされそうになってるで御座る！」
魔王「お取り潰しって…ど、どういう事ですか！？」
戦魔将軍「良くは事情は知らないのですが、先程王国の大臣から遠隔魔法の通信があったのですが」
戦魔将軍「協定違反がどうのこうの言って、何やら凄い勢いで怒っていたで御座る」
魔王「協定違反…？」
勇者「大臣…？」
神官妹（大臣様…あ！ いけないたぶんあの事で怒ってるんだわ…；）
神官妹（参ったわね…）
戦魔将軍「その協定違反をどういう事なのか説明しないと、魔界政府は解体するとかどうとか言ってるで御座る」
魔王「解体っ！？」
戦魔将軍「勝手にしろ、と突っぱねても良かったのですが、一応魔王様にお伺いをたてた方が良いかと思って、毒霧を走ってきたのですが」
戦魔将軍「ははは…途中で力尽きてしまったで御座るよ」
魔王「意外と律儀と言うか…そこまで無茶するとは；」
魔王「気持ちはありがたいですが、正直引きます…；」
戦魔将軍「え！？」
呪族の幼女「まったゅく（全く）まちゃぶゅったおれてたのか（またぶっ倒れてたのか）こゅぞう（小僧）」
戦魔将軍「…？ 何ですかこの童子は？」
呪族の幼女「わゅらしでゅはないっ！（童子ではない！）」
魔王「あ、はいこちらあの呪族の王女さんです」
戦魔将軍「呪族の王女…！？ まさかこんなチビちゃいのが！？」
呪族の幼女「ちゅびちゃいゆうなっ！（チビちゃい言うな）」
魔王「はあ…何でか、いつの間にか小さくなっていまして」
呪族の幼女「おまえのちぇいだろっ！（お前のせいだろ）」
戦魔将軍「何と！ あの伝説の呪族の王女をこのような目にあわせると…！ 流石魔王様」
魔王「いや知りませんて」
戦魔将軍「それより何故儂を知っている？」
呪族の幼女「ふゅん！ おまぇ、まぁえもこゅこにきて（お前、前もここにきて）どゅくきりにあてぇられて（毒霧にあてられて）たょおれぇてたでぇあろ？（倒れてたであろ？）」
戦魔将軍「…！ それは儂以外知らぬはすず、知ってるとすればこの地にいたかもしれない呪族の王女のみ…」
戦魔将軍「ううむ…真に呪族の王女なのだな…」
呪族の幼女「しょういっちぇるであろ（そう言ってるであろ）」
神官妹「あ、あのー魔王様？」
魔王「はい？」
神官妹「それよりお早く大臣様の元へ行った方がよろしいのでは？」
戦魔将軍「…！ ふざけるな人間！ 何故魔王様がわざわざ人間のために足労しなくてはイカンのだ！」
戦魔将軍「話があるなら貴様らの方から出向くのが礼儀であろう！」
魔王「…！ 戦魔将軍さん！ そんなことを言ってはいけませんよ！」
戦魔将軍「え？」
魔王「こちらに何か落ち度があって怒っているのですから、出向くのは当然です！」
魔王「戦魔将軍さんは武人ですからそう言うところに疎いのは分かりますが…少しは覚えないといけないと思いますよ！」
戦魔将軍「なっ！？」
魔王「では僕はちょっと大臣様に会ってきますので、戦魔将軍さんは呪族の王女さんを街まで送っておいてください」
呪族の幼女「…」
戦魔将軍「なっ、待って下さい魔王様！ お一人では危険です！ 儂も連れていってくだされ！」
魔王「ダメです。戦魔将軍さんが来て問題を起こされても困りますから…」
戦魔将軍「起こさないで御座る！ 起こさないで御座るから、連れていってくだされ！」
魔王「ダメです！ 戦魔将軍さんはそう言う場に慣れるまではお留守番です！！」キッ
戦魔将軍「…！ そ、そんな」ガク
魔王「では大臣さんがいるところに行きましょうか…」
魔王「僕が魔法でお送りしようと思いますが、神官妹さんは来るとして、他の人も一緒に行きますか？」
神官姉「行く…」
勇者「魔族の中に一人で残されてても困るから行くわ」
呪族の幼女「わゅらわもいく（わらわも行く）」
魔王「え！？」
勇者「…まーた良からぬ事考えてるんじゃ無いだろうな…？」
呪族の幼女「そゅんなんじゃないわ（そんなんじゃないわ）」
呪族の幼女「たゅだ、しゃんぜんねぇんしゅぎたせぇかいが、どゅなったかみゅたいだゅけじゃ（ただ、三千年過ぎた世界がどうなったか見たいだけじゃ）」
勇者「ほんとかよ…」訝しげ
呪族の幼女「うゅそじゃないぅ（嘘じゃない）」
魔王「ははは…まあ行きましょう」
魔王「えーと大臣さん大臣さん」
魔王「いた…！ 空間接続…！ と」
勇者「！」
神官妹「！」
呪族の幼女「！」
大臣「！ な、なんじゃ急に何もないところに穴が開いて…」
大臣「あ！ お前たち…なんで穴の向こう側にいるんだ？」
勇者（…ここの空間と空間を繋げたって言うのか！？）
神官妹（そんな魔法聞いた事がないわ…）
大臣（な、なんなんだこれは…誰がやったのだ…）
大臣（魔法を発動してるのは魔王みたいだが…こんな魔法聞いた事が無いぞ…）
大臣（よくは分からんが…この魔法って凄く無いか？）
神官姉「魔王…ちゃん…凄い…」パチパチ
魔王「え？ いやいやこんな子供でも出来ること凄く無いですよ」
大臣（そ、そうか…凄くは無いのか…）
大臣（もしかして魔王って凄い力を持ってるのかって勘違いしたぞ…）
大臣（そうかそうか子供でも出来ることか、うむ確かに子供でも出来るな）ほっ。
魔王「失礼します」穴をくぐり抜ける
大臣「あ、ああ…」
神官妹「大臣様お久しぶりですわ」
勇者「ちーす」
神官姉「…」ペコリ
呪族の幼女「なゅんじゃこょのじじいわ？（なんじゃこのジジイは？）」
大臣（子供？？？）
魔王「そ、それで大臣様、今回一体どう言うご用件でお呼びになったのでしょうか？」
大臣「え？ あ、ああそうじゃ！」
大臣「こ、これは一体どう言う事なんじゃ！ 街が無くなってるじゃないか！」
神官妹（あちゃーやっぱりそれですかー…参ったわね。どう説明すればいいのかしら…）
魔王「え…と言われても、魔石鉱脈さえおいていけば、街を持っていって良いって神官妹さんが…」
神官妹「！」
大臣「何！ 一体どう言う事だ！？」
大臣「神官妹！ こいつは何を言ってるんだ？」
神官妹「あー…えーとですね」
神官妹「その魔石鉱脈以外の魔族の私物は全部持っていく事を許可したら…その魔王様が街ごと持ってかれてしまいまして…」
大臣「は？」
大臣「…」
大臣「はあ？」
大臣「ま、街ごとって…どうやって！？」
神官妹「浮かして…」
大臣「街全部？」
神官妹「はい」
大臣「…」
神官妹「…」
大臣「えと…とんでもなくないか…？」
魔王「いえ、子供でも出来ますよ」
勇者（出来ねーよ！）
神官妹（出来ないわよ普通）
神官姉（魔王ちゃん…凄い…！）パチパチ
呪族の幼女（あいつの感覚がようわからぬのぅ…）
大臣「…」
大臣「そ、そうか子供でも出来ることなのか…」
勇者（信じた！）
神官妹（え？ 信じた…？）
神官姉（魔王ちゃん…凄い）パチパチ
呪族の幼女（あやつ…頭大丈夫か…？）
大臣「ま、まあそれは良い、だが街ごと持っていかれては、魔石鉱脈を採掘する者たちが住む場所が無くなってしまうだろ！」
魔王「あ！」
勇者（あ、って分かってなかったのかよ…）
神官妹（分かってなかったって事は、言えばそこら辺配慮してくれたのかしら？）
神官姉（魔王ちゃん…凄い）パチパチ
呪族の幼女（魔族も人間も馬鹿ばっかりじゃの）
魔王「そ、それはこちらの思慮が足らず申し訳ありませんでした」
大臣「全くだ！」
魔王「すみません！ すみません！」ペコペコ
神官妹（あー…大臣様あんまり魔王を刺激しないで欲しい…）
神官妹（呪族の王女の時みたいに怒って、あの恐ろしい魔力で暴れられたら…）
神官妹（か、考えるだけで恐ろしいわ…）
神官妹（でも大臣様のやることに口出ししたくないし…困ったわ…）
魔王「本当に申し訳ありませんでした」
魔王「責任は取りますのでお許しください」
大臣「責任？ じゃあ街を元に戻すのだな？」
魔王「いえ、あれは魔族たちの思い出がつまった大切な街、戻すことは出来ません」
大臣「何！？ じゃあ貴様は街を戻さず、どう責任を取ると言うんだ！」
魔王「それは…」
魔王「僕が作ります！」
一同「！」
続く
魔石鉱脈の街ごと持って行ってしまった事にご立腹な大臣。
街を戻せと言う大臣の言葉に、自分で新しく街を作ると言う魔王。
またもやその強大な魔力で成し遂げてしまうのか？
次回に続く。
