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魔王の息子でした

どれくらい気を失っていただろうか意識を取り戻すと俺は声を上げて泣いていた。


少しの間があいて全て思い出した。

そっか転生して今は産まれた直後の赤子なんだった。泣かないと命の危険みたいなこと保健の授業で聞いたことあるからここは腹から声出して泣いておくか。


「オギャァァァァ!!!!!」

「魔王様!ルシフェル様!元気な男の子ですよ!」

「おおっ!ついに産まれたか!頑張ったなルシフェル!私は嬉しいよぉ....グスッ....グスッ....くそ、涙が止まらん。」

「まぁ、なんて元気な子。これならあなたの世継ぎとして立派に育つわね。」

「そうだなぁグスッ....立派になるんだぞぉグスッ....!!」

「あらあら、そんなに泣いていると魔王の面目丸つぶれですよ?」

「グスッ....ウッ....す、すまん....グス....い、今はお父さんにならせてくれぇぇ....グスッ」


こんぐらい泣いとけばいいか。泣いた途端に周りからワッと歓声が上がった。

目が開いてないから誰かわからないが魔王の他に助産師的な人が何人かいてその中の1人に取り上げられたんだと思う。

助産師達の歓声が上がる中で大泣きしてんのが俺の父、魔王なのだろう。ルシフェルと呼ばれてたのが母のようだ。子を産んだ直後とは思えない落ち着きよう、絶対強い。

その後は身体を洗われたり色々されたが、如何せん赤子なものであまりの体力の無さから疲れで寝てしまった。


異世界に生を受けた日から数週間がたった。

目も見えるようになり、色々把握できるようになった。

やはりこの世界での俺は魔王の息子だった。

今の名前はエルと名付けられているが、魔王の座を継承するとサタンとなるようだ。

今は魔王城の2人の愛の巣にある高級そうなベビーベッドで育てられてるんだがベビーベッドがもう異世界。日本のだとおもちゃや鈴が吊るされているものが一般的だが異世界、魔王城だと少し違う。おもちゃや鈴は電池もないのに光ってるし動いてるし、何より吊るされてない。浮いている。生きているみたいで見ていて飽きないから歩けない俺からしたら助かる。

部屋は魔王城らしく薄暗いかと思っていたがめちゃくちゃ明るくて広い。陽当たりがとても良く超優良物件だ。きっと城はもっと広いのだろうな。早く城中を歩き回りたくて堪らん。

異世界に来て驚くことはそれだけじゃない。

両親が美男美女だった。

父ちゃんは魔王だから角でも生えてんのかと思ってたがそんなことはなく黒髪に紅眼のイケメンで、軍服のよくな黒い服にマントがよく似合う。

クールな外見とは裏腹に超親バカだ。

母ちゃんは銀髪に碧眼、ナイスバディな超美人、たまに翼を広げている姿がカッコイイ。

まだ鏡で自分を見たことがないがこれは俺の容姿も期待できる。むしろ期待しかない。

魔王城には家政婦のような人も多くいて、どの人も魔族なのだろう、アニメで見るみたいに角が生えてたり尻尾が生えてたりと色々だ。母の変わりに世話をしてくれたりするがみんな笑顔で優しい。

戦争しているとは思えないほど幸せで穏やかな充実したそんな毎日を俺は送っていた。


どうやら今日も出産祝いに誰かが訪れているようで父さんが誰かとワイワイ話しているのを母さんの腕に抱かれウトウトしながら聴いている。

いつも話の内容どれをとっても結局は子供の話になるからかお構いなしに話す魔王とは反対に相手は呆れ気味で生返事しかしない。相手が可哀想だ。

急に母ちゃんから誰かに渡され抱きかかえられた。


「ヒッッ!」

「おいパズズ!あんまりエルを驚かすなよ!」

「しょうがねぇだろ。顔は変えられねーんだから。」

「あなた。あんまり大きな声を上げないで。それこそ驚くわよ。」

「うっ....すまん。」


なんだよ。今日の客はライオンの顔かよ....思わずチビりそうになったわ。

魔王の元には前世でいう悪魔や魔神、悪霊なんかの類が来るのだが、どいつもこいつも本当に怖い顔をしている。ただ、顔とは違いで性格はみんないい人なよう。魔王に逆らえないだけなのかもしれないがとにかくいい人達だ。


「俺の顔を見ても泣かないなんて強い子だなぁ。」

「だろ?まったく魔王としての素質は充分だな。なぁエル?可愛いなぁ。」

「おい、サタン。お前とんでもない親バカなんだな。」

「そうよあなた。魔王としての威厳をしっかり保ってね。」

「そ、そうだな。エル、俺みたいに強く育つんだぞ。」

「キャキャキャ!」

「パズズ見たか?!笑ったぞ?!」

「はいはい見た見た」


父さんは本当に親バカだ。魔王だなんて信じられないな。

そして今日も魔王城は平和です。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


なんてことない平和な日々を過ごして俺はどんどん成長していった。

俺はいつしか5歳になった。

そしてもっと世界のことがわかるようになった。


この世界での俺は恐ろしいほど優性な遺伝子をひいているため、めちゃくちゃイケメンだった。

白髪頭で紅眼という両親の特徴を上手く取り込んでいるようで人間離れしたスペックだ。あ、魔王だった。

翼生えてたらもっと良かったのに、けど努力次第で空飛べるかな。


新たにわかった重大なこともいくつかある

現在俺の住んでいる魔王城はめちゃくちゃデカイうえに宙に浮いている大きな島の上に建っていて世界の空、雲の上を飛び回っている。初めて窓の外を見た時驚いたよ。飛行機から見える景色と同じだったからね。

父ちゃんであるサタンは最強と呼ばれるだけあり色々な悪魔や魔神を従えて時々戦いに行っている。

母ちゃんであるルシフェルは戦いには行かずにずっと1人で俺の世話、子育てをしてくれていた。

家政婦もいるのになるべく1人で世話しようとしてくれるので母の愛をもろに感じる。本当に堕天使なのだろうか....。いかにも女神様。

そして今はお腹にもうひとりいて、いつ生まれるかわからんが弟か妹ができる予定だ。もしかして俺のような転生者かもわからない。

俺ももう5歳。妊娠してる母ちゃんに迷惑かけないようにしよう。

オネショ、ダメ、絶対。


戦争の戦況としては王国軍VS魔王軍みたいな感じだ。ただ、今までは魔王軍が優勢だったようだが少し前に転生した先輩チート持ち冒険者が成長して活躍しているお陰で王国軍がやや優勢になったらしい。

まったく俺のスローライフを邪魔するようなやつは許さない。早く戦えるようになってチート持ち冒険者共を制圧しなければ。


そして今日から俺は魔法や戦闘の訓練を受けるようになっている。

魔王直々に教えてくれるようで父ちゃんは朝から張り切っているようで目が紅く光っぱなしだ。

でもごめん父ちゃん。たぶん使い方だけ教えてくれれば父ちゃんより強くなっちゃうのかも。


「よし!エル!これからは毎日訓練をする。いつかはお前も魔王として奴らと戦うことになるのだから、しっかり取り組むんだぞ。」

「はい!魔王様!」


訓練初日は慣れないことばかりのはずなのに何故かずっとやってきたことのようにスラスラ出来た。

魔法だってすぐ打てた。剣も身体の一部のように扱えた。

訓練終わりに魔王が


「なぁ?エル?お前は確かにサタンとルシフェルの間の子供だ。でもまだ5歳だ。なのになんだ?!まだ初日だというのに強すぎやしないか?俺の6ヵ月かけて作った魔王育成カリキュラムはどうすればいい、今日だけでもう2年分終わらせたぞ?身体の成長が追いついてないだけでお前は俺より強くなる!俺は嬉しい!嬉しいのだがな!....やはり威厳というものがあってだな。このペースだと後2年ぐらいしたらもう魔王クラスだ。はぁ、もうちょっと父ちゃんしたかったなぁ....」


なんて言ってた。本当に両親の能力を受け継いでいるみたいでとりあえず安心。


それから毎日魔法や、魔力のコントロール。

剣術の特訓をした。

俺は驚いたね。

1年近くたった今では身体的に出来ないこともあるが基本的にはなんでもできるようになっていた。

魔法だって威力はまだまだだが全部使える、剣術も魔王軍の騎士団長とは互角に戦えるようにはなっていた。あの時の騎士団長の顔は忘れらんねぇな。


どうやら15歳になったら魔王サタンになれるようだ。

あと9年か、それまではチート持ち冒険者共を倒すために身体を鍛えておこうと思う。



時が川のように流れる中ある時ふと思ったんだ。

あれ?この人生って冒険なし?


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