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君が恋した時間と僕が生きた日々  作者: 星野 葛葉
8/11

8 心の声

 本格的な夏がやって来て、少し動くだけで汗が出るほどの猛暑が続いている。

 いよいよ明日が夏祭りに迫って来ているというのに、雪はまだ勇太を誘えないでいた。

 雪の心とは裏腹に蝉はその短い生命をうるさいくらいに響かせていた。

「うーん」

 雪は頬杖をつきながら大きなため息をする。

 その姿を目の前で見た夏は顔を歪ませた。

「あのさ、さっきからそればっかり。」

「ごめん…」

 聞こえるか聞こえないかで返事をする親友の姿に、夏は机をバンッと叩いて立ち上がる。

「ねぇ、雪。悩んでいても何も変わらないよ?自分から行動しないと!」

 驚いた顔をする雪を置いて、夏は席に戻って行った。

「自分から、ねぇ」

 ついには机に突っ伏す形になった雪はまた新たに唸り声を上げた。


 そのまま行動できずに気づいたら五時限目が始まっていた。

 雪は自問自答を繰り返す、私は何がしたいのだろうと。

 ノートには板書をして、先生の話だって聞いているのに、頭の中はあの笑顔でいっぱいで。

 内容なんてさっぱり入ってこなかった。

「気お付け、礼。ありがとうございました。」

 そして何もかも分からないまま終わっていく授業。

 ふと窓の外を見ると、雪の心の迷いが表れたのか、朝は晴れていた空に雲が広がっていた。

 その後のHLは適当な業務連絡の後に春ちゃん先生の話があって終わった。

「いいかお前ら、時間は戻らないからなー。自分がしたい事を思う存分やるよーに。」

 タイミングよくチャイムが鳴り、ぞろぞろ教室を出ていくクラスメイトたち。

 そんな中、雪は一人席に座り考えにふけっていた。

「私のやりたい事。私はどうしたいの?」

 耳を澄ませば聞こえる、心の声が。

 “勇太の隣に居たい”

 蝉の鳴き声に混じり聞こえた声に従って、今を変えてみようと思ったのは夏の気まぐれなのかもしれない。

 立ち上がった雪は教室を飛び出した。

 勇太が何処にいるのか分からないけど、何かに導かれるように走って行く先に見えた姿は彼だった。

「勇太くん!」

 名前を呼んでみると、勇太はこちらを振り返ってにこやかに笑った。

「黒川さん、どうしたの?」

「私、私ね、伝えたい事があるの」

 息を切らしながら言葉を紡いでいく。

 勇太も静かに雪の言葉を待っていてくれる。

「一緒に夏祭り行きませんか?」

 ずっと心にしまっていた言葉を今、伝えよう。

 


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