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君が恋した時間と僕が生きた日々  作者: 星野 葛葉
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4 名前

 今日も天気は最悪だった。

 家を出ると土砂降りのの雨が太陽の日差しの代わりに雪に降り注ぐ勢いで迫ってきていた。

 「今日も雨なんだ」

 折り畳みではなく大きめの傘を開いて、重い足を引きずるようにして歩き出す。

 学校に着きいつものように教室へ向かう途中、

 「黒川さんだ!おはよー」

 「あ、どーも」

 何でもない、まるでそれが日常であるかのように彼は雪に挨拶をして、雪も返事をした。

 挨拶しただけで問題なんて無かった。彼が女子に人気がある学年で指折りのイケメンでなければの話だが…。

 そんな事とは知らず、雪は教室に入り夏と雑談を始める。その時クラスの女子の視線が鋭くなっていることに気づいていれば彼と雪の物語はエンドロールに進んでいただろう。

 鈍感さと、思った以上にクラスに興味がないのとの2点で物語は雪の望まぬ展開へ進むことになる。

 「雨が続くとジメジメしてやだねー」

 「ほんと、湿気強いよね」

 - 物語が動きだした事にこの時はまだ誰も気づかなかった。 

 

 それから何日たった頃だろうか。雪は昼休みにクラスでも可愛い感じの女子に呼び出された。

 何故だろう、そんな疑問を抱きながら約束の場所に向かった。

 彼女はもうすでにその場にいて敵意むき出しの目でこちらを見ていた。

 「ねぇ、急にどういうつもり?」

 彼女の口調はきつく雪をさらに睨む。

 どういうつもり?と言われても雪には心当たりが全くと言っていいほど無かった。彼女と雪の接点なんて何もないはずなのに。

 その答えは彼女自身が教えてくれた。

 「なんかさ、勇太と軽々しく挨拶しちゃて。あんたなんかよりもっと沢山の人が勇太と話すだけもって頑張ってんのに!」

 勇太という聞いたことがない名前に、名前も知らない彼かと思う。

 でも彼と雪の間にはその後何もない。そんな場違いな八つ当たりをされても困るのだが、人間関係に乏しい雪にはどうしたらいいのか分からずその場に立ちすくむことしか出来ない。

 しかし、その行動がさらに彼女を苛立たせた。

 「なんか言ってよ!」

 ふわふわした長い髪が揺れる。

 可愛らしい雰囲気とは真反対のオーラと目に思わず後ずさりすると、何かに当たった。

 「え?」

 振り返ってみるとそこにいたのはあの彼だった。

 「なに黒川さんいじめてんのー?」

 「うぐっ、勇太。なぜここに?!」

 「たまたま通りかかっただけだよ」

 「タイミング考えてよね、さすがバカは違うわ」

 雪を挟んで交わされる会話に彼と彼女を交互に見る。すると、彼がそれに気づき少し笑いながら説明をしてくれた。

 「まず名前からだよね、僕は池田勇太。こっちのもこもこが井口唯で、僕たち幼なじみなんだ」

 もこもこと言われて一瞬唯が勇太を睨む。

 そんなことは気にせずに勇太は続けた。

 「もう1人橋口優って奴も幼なじみなんだけど、たぶん優のことは知ってるよね?」

 「橋口くんって夏に告白した人だよね?」

 「そうそう!仲良くしてやって」

 勇太はまたキラキラと輝く笑顔を咲かせた。

 雪はその笑顔に見とれてしまいそうになり、ダメダメと自分の頬を軽くたたく。

 「私てっきり黒川さん勇太の新たな追っかけかと思ってた、ごめんね!」

 「大丈夫だよ、でもなんで私なんかに井口さんが?」

 雪はあまりクラスでも目立たないので、夏意外と話す機会も少ない。

 そんな雪が勇太と挨拶をしたぐらいで、クラスでも明るい唯が呼び出しまでするなんておかしい。

 「唯でいいよー。怪しい芽は早めに摘んでおかないと!なんたって勇太は学年の王子だからね」

 「え、学年の王子って池田くんだったの?!」

 噂では聞いたことがある学年の王子。ファンクラブまであるとかなんとか…。

 「あはは。なんかそんな感じになってるけど、僕、全然王子なんかじゃないのに」

 全く困るよね、と言いながら頭をかく勇太。

 本人の自覚が無いとしても、あの笑顔は納得できると雪は思った。

 「池田くんかっこいいよ?」

 なぜだろう、考えるより先に口が動いていた。

 「い、池田じゃなくて勇太でいいからっ。じゃ、僕もう行くね!」

 「うん。またね、勇太くん」

 勇太が早歩きで戻って行くのを見て、雪が唯に怒ってるのかな?と聞くとどうだろうねと笑われてしまった。

 「さぁ、黒川さん。私たちもそろそろ戻ろっかー」

 「うん!私のことも雪って呼んでほしいな」

 「じゃあ雪ちゃんって呼ぶ!」

 雪ちゃんなんて久しぶりに呼ばれて、嬉しいような恥ずかしいような不思議な気持ちになった。

池田勇太と井口唯という新たな登場人物が加わりました!


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