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はじまりの町 10

 突然現れた闖入者に、皆の視線が集まる。

 だがスタンは、そんなものを気にしない。

 悠然と室内へと入っていく。

 素早く視線を走らせ、室内の状況を確認する。

 リッカ達に大きな怪我がない事を確認したスタンは、内心安堵(あんど)した。

「テメエ、何者だ!? どうやって入って来やがった!」

 一番近くに居た男がスタンへと殴り掛かってくる。

 顔を狙った男の拳を、難なく躱したスタンは、

「こうやってだよ」

 すれ違いざまに、その腹部へと膝を打ち込む。

 男は胃液をまき散らかし、あっけなくその場へと崩れ落ちた。

「野郎っ!」

 あっさりと仲間がやられ、男達に緊張と動揺が走る。

 スタンはその隙を逃さず、次なる行動を起こす。

 脚へと括りつけていたナイフを、続けざまに投げ放つ。

 放たれたナイフはそのまま空を裂き、リッカの近くに居た男達へと突き刺さった。

「ぐあぁっ!?」

 肩や脚などを、ナイフに貫かれた男達が大きくよろめく。

「今だ! 走れ!!」

 スタンの上げた声に、リッカがハッと我を取り戻し、即座に反応する。

「行くよ!」

 子供達の手を引っ張り、男達の間をすり抜けるリッカ。

 一目散に、スタンの下へと駆けていく。

 しかし、相手も黙っている訳ではない。

「ガキ共を逃がすな!」

 その声に反応した者達が、リッカ達を取り押さえに掛かる。

 子供達が捕まってしまえば、スタンも迂闊な動きが出来なくなるだろう。

 逃げる子供達へと、魔の手が迫る。

「させるわけないだろう?」

 スタンの手から、再びナイフが飛翔する。

 ナイフは正確に、リッカ達を狙う相手を貫いていく。

 男達が痛みで動きを止めている間に、リッカと子供達はスタンの下へと辿りついた。

「無事か?」

「ああ、子供達も私も怪我はないさ」

「そいつは良かった」

 子供達は無事に保護する事が出来た。

 あとはここから逃げられれば終わりなのだが、

「見逃してくれる訳がないよな」

 荒くれ者共が武器を構える。

「いいか! ガキを狙え! そうすりゃあの野郎は動けなくなる!」

 先程とは違い、統率が取れた動きだ。

 前にいる者は剣や槍を構え、その奥には弓を構える者、そして魔術を唱えようとしている者の姿も見えた。

「厄介だな……」

 弓も魔術も、今のスタンには脅威だった。

 子供達を救う為に、ナイフは全て投げてしまった。

 彼らを倒す為には斬りこむしかない。

 だが今は、リッカ達がいる。

 彼女達を守らねばならないのだ。その傍を離れる訳にはいかない。

「どうするかな」

 先に逃がす事も考えたが、この屋敷の中に、まだ敵が(ひそ)んでいないとも限らない。

 彼女達が捕まってしまえば、状況はさらに悪くなる。

「ま、何とかするしかないか」

 じりじりと相手が迫る中、スタンは剣を抜き、構える。

 相手がタイミングを見計らい、飛び掛かってこようとした瞬間、

 凄まじい轟音と共に、屋敷が振動した。




「な、なんだぁ!?」

 突然の轟音と振動に、男達がうろたえる。

「これはアンタの仕業なの!?」

「……いや」

 リッカの質問をスタンは否定する。

 スタンは単身でここへと乗り込んできたのだ。

 時間も無かったし、何かを仕掛けているような暇はなかった。

 轟音は連続して響き、振動はさらに強くなる。

 音はどんどんと近付いてくるようだった。

「まさか……」

 この原因に、スタンは一つだけ心当たりがあった。

 まさかそんな事はないだろうとは思うのだが、それ以外には考えられなかった。 

 音と振動が最高潮に達し、遂に広間の壁が轟音と共に破壊される。

 砕かれた壁の向こう、舞い上がる粉塵(ふんじん)と共に、その原因が姿を現す。

「やっと見つけましたよ、師匠!」

 現れたのは、自分の背丈(せたけ)ほどの戦鎚(ウォーハンマー)(かつ)いだ少女の姿。

 予想通りの人物の登場に、スタンは苦笑するのだった。

 

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