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古曲/魔女と子供

 俺とアイシェリアが魔凛に初めて出合ったのは、あの日の夜の事だった。父が魔物だったんだ、という事を初めて知った夜の――


「あれれ? 僕達一体どうしたんだい?」

 命からがら、身も心もボロボロになった俺たち二人はいつのまにか森の置くまで着ていた。そこで、赤い屋根の家を見つけた。

家の前で、この家の人に助けるかどうか二人共迷った。しかし、迷っている最中に扉が開いて女の人が出てきた。

 その女の人は俺たちを家の中に入れてくれ、食事をくれ、休ませてくれた。翌日、俺がどうしてこんなに優しくしてくれるんだ? って訊いた。

「え? 普通だろう?」

 そうしたら、首を傾げられた。

 前日、あの赤いドレスの女に言われた『人間もどきの魔人』なんだと告白すると女の人は笑って。

「私もそうなのだよ。だから此処にいる」

 と言った。

 その後に、

「君ィ、素直なのはとぉーってもいい事だぞー」

 と付け加えて。

 この女の人こそが、俺たちの師匠だった。そしてその家で暮らすようになって数日後、魔凛は俺たちにこう言ってくれた。

「私の弟子にならないか?」

 と。

「この世界で私達のような魔人が生きていくためには力が必要だ。時には残酷といえる程の力が。優しさや甘さや戯言のみでは生きていけないのだよ」

 にっと唇が笑みの形になる。

「私が君達に力を与える! その代わりと言ってはなんだが」

 じっと顔を見つめられたシンディアは不思議そうに首を傾げた。

「君の事が気に入った! 代わりに、君を貰おうか」

「俺をって、どういう?」

「簡単さ! 私と結婚してくれればいいのだよ。まー、後6、7年は後の事だけどね」

 それで、それを嫌がっていたアイシェリアを一ヶ月かけて無理矢理説得させ、現在に至る。俺は魔凛からちゃんとした剣術と召喚術、そして魔術師のクラスを得たために魔法剣士となった。そしてアイシェリアは――

「お前に教えられるのは一つだけだ」

「一つだけですか?」

「そう、一つだけ。お前に教えるのは封印術だけだ」

 アイシェリアの不安げな声に魔凛は頷いて答えた。

「どうしてだ!? アイシェリアは凄く強い魔力を持ってるのにっ!」

「確かに、強いだろうな。だが、いくら強くても使いこなせない力は強さどころが弱さになる」

 だから、封印術を教えるんだよと魔凛は二人の頭を撫でた。


 そうして、三年もの月日が流れ、俺は魔法剣士と召喚士、独学によって竜使いのスキルをマスターした。アイシェリアは封印術のスキルをマスターした。

封印術はその名の通り全てを封印する。魔法だろうが人間だろうが剣だろうが。術が決まれば相手にとってすっげえダメージになる。術者の力が強ければ強いほど長く封印していられる。今のアイシェリアだとタンスほどの大きさの物は二時間は軽く封印していられる。うっかりすると俺のほうが負けてしまいそうだ。

「じゃっ、俺 自習練行ってくる!」

「はぁーい」

「行ってらっしゃい」

 いつもと変わらない二人。そう、いつもと、なにも変わらなかったんだ。


 何も変わって無くても安心してはいけない。その手を離してはいけない。いつその手がほどけてしまうか、分からないのだから

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