表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/53

プロローグ/冷たい過去

 出会いは緑の頃、始まりは雪の頃。

 今でも俺の中には赤く 赤く燃える気持ちがあって、その後ろには 哀しい過去がある。

 でも、来るまでの道のりはともかく、今は此処にいてよかったって思う。此処にいれば この気持ちもいつか流れ落ちて天に昇ってくれる気がするから――



「お父さん、遅いねえ」

「そ、そうだな」

 地図に名前すら載っていない程小さな村。その中でもひときわ小さい、小屋と言ってしまってもいいような赤い屋根の家。家の中には今、二人の兄妹がひっそりと身を暖めあっていた。

 なにしろまだ此処は寒い。もう季節は春で、木々は鮮やかな緑色へとなっているのに。だが、家には自分達の身を暖めてくれるものはいちまいのぼろっちい毛布だけなのだ。

(本当、どうしたんだろ。三日後には帰ってくるって言ってたのに……!)

 ぎゅっと寒さに凍えている幼い妹の体を自分の小さな腕の中に入れて精一杯の力で暖める。

「お兄ちゃん……」

 少し先っぽがくるくるとは寝ている蜜色の髪、大き目の水色の瞳。ボロボロの服を着ていても、その愛らしさを損なう事は無い。

 そしてまた、その兄・シンディアも妹に劣らない容姿を持っていた。母親似の妹と違い、顔だけ母親似らしい。漆黒の髪と藍色の瞳、女の子の格好をすればきっと誰もが美少女だと間違えるだろう・・。

「大丈夫だ、アイシェリア。お兄ちゃんがいるだろ?」

 そうにっこりと微笑むと妹はうんっとこっくりと頷いた。

「ね、お兄ちゃん。子守唄、歌って?」

 しかしまだ怖くて眠れないのか妹は子守唄をねだってきた。

「しょうがないなぁ。いいよ」

「わーいっ、有り難う!」

 ちらりと妹を見てから歌いだす。ゆっくりと歌い始める、子守唄を。


 俺は子供だったからその時は何も分かってなかったんだ。この世界が少しずつ 少しずつどんどん崩れていってる事を

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ