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白金の乙女  作者: 夢野 蔵
第一章
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第九話

 あたしの住むバール村は辺境の田舎にある。

 村の周りは畑が広がっていて、その先には鬱蒼と茂る森、もしくは広大な山しか見えない。

 隣町までは、大人が歩いても2日は掛かる。


 あたしの家は昔からこの土地に住んでいて、代々農家をやっている。


 あたしの名前はアンリ。

 歳は10歳で、短い髪と男勝りな言動で、良く男の子に間違われる。


 そんな平凡で何も無いバール村にも特別な人間は居る。


 ナナ・ラヴェンナ様。

 大人たちは様付けで呼ぶけど、あたし達はナナ先生と呼んでいる。


 ナナ先生の仕事は魔獣を退治する『タリアの乙女』というものらしい。

 魔獣を退治するからには、家のお母さんよりも体格の良い人だと思っていたが、そうではなかった。


 初めてナナ先生に会ったとき、先生は「こんにちは」と挨拶をしてくれた。

 その時、あたしは惚けていて声が出なかった。

 キラキラと輝く銀色の髪。雪の様に白い肌。

 この村にも何人か若い女の人は居るけれど、誰もが相手にならない位、綺麗に見えた。

 まるで絵本に描かれるお姫様の様で、私達とは別の世界の人間にも思えてくる。


 ハッと気付いたあたしが、慌てて「こんにちは」と返すと、ナナ先生は優しく微笑んで「これからよろしくね」と言ってくれた。

 その笑顔はとても眩しかった。


 こんな綺麗な人が魔獣を退治するとは、この時は到底信じられなかった。

 ……まぁ、数ヶ月もすると、ナナ先生に対する認識はガラッと変わったんだけど。


 今、先生の下で勉強している子供の数は4人。


 一人目はあたし。


 二人目は同い年のトール。

 トールの家とあたしの家は隣にあり、トールとは昔からの腐れ縁である。

 他に遊び相手も居ないし、なんだかんだで気が合うのでよく一緒に遊んでいる。

 たまたま、あたしよりも数ヶ月早く産まれただけで年長者ぶったりする所がちょっとムカついたりもする。

 そのため良く喧嘩もするけど、次の日にはなんとなく、いつもの様に遊んでいる仲だ。


 三人目はトールの妹であるカナデ。

 いつの頃かトールの後ろを付いて来ていて、一緒に遊ぶようになった。

 あたしと違って大人しい子で、気弱な所が女の子っぽく感じる。

 最初の内は人見知りで、あたしが目を合わせると慌ててトールの後ろに隠れていたけど、何回か遊ぶ内に仲良くなり、今ではあたしのことを「アンリお姉ちゃん」と呼ぶ様になった。

 あたしもカナデの事を妹のように可愛がって、「カナ」とトールと同じ呼び方をしている。


 最後にもう一人。それがノノである。

 先生の子供で、先生と同じ銀の髪に翡翠の瞳が特徴的。

 そてはまるで精巧に作られた人形の様で、ずっと見ていると目が離せなくなる。

 ナナ先生も綺麗だけど、ノノもそれに負けない位綺麗だと思う。


 赤ちゃんの頃から教室に居るため顔見知りだけど、正直ノノのことは良く分かっていない。

 昔からとても静かな子で、授業中でもめったに騒いだりしない。

 たまに、本当に人形ではないかと疑いたくなる。

 悪い子ではないと思うんだけど、何が好きでとかどんな事を考えているのかは、まったく想像もつかない。


 ちなみにあたしには一歳にならない弟が一人居る。

 ノノが赤ちゃんの頃にとても大人しかったため、赤ちゃんというのは皆がノノと同じで静かだと思っていた。

 だけど違った。

 弟は朝も夜も、所構わずにうるさく泣いていて、お母さんは「あんたもこんなんだったよ」と言う。


 それからノノは大人の様な言葉遣いをしていて、勉強も得意みたいだ。

 あたしやトールは最初、なかなか字が覚えられなかったけど、ノノはいつの間にか本を読めるようになっていた。

 それだけじゃなく算数の計算も速く、この間はカナデに勉強を教えていたりもした。


 授業中のノノは大体がぼーっとしているみたいで、いつも何か考え事をしている様にも見える。

 その姿は何というか……神秘的で近寄りがたく、トールもノノにはちょっかいを掛けたりしない。


 ノノはナナ先生と同じくらい特別な感じで、あたし達と同じ村、同じ教室で過ごしていても、どこか違う世界を見ているように思えた。


--------------------------------------------------


「ノノも誘ってみないか?」


 そう言い出したのはトールである。

 今日の午後は家の手伝いが無いため、皆で遊ぼうと、先生の家に向かいながら話していた所だ。


 トールはしょっちゅうカナデを驚かしたりしている割りに、妹の面倒はしっかりとみている。

 きっとこの時も、ノノに対してその面倒見の良さを発揮したんだと思う。


「んー来るかなぁ?」


 あたしとしても遊ぶ相手が増えるのは嬉しい。

 しかし相手がノノだから、どうなんだろう?


「わたしもノノちゃんと、もっとお喋りしてみたい!」


 そう横から口を挿んできたのはカナデだ。


「あのね。この間ノノちゃんが掛け算を教えてくれたの。それでねノノちゃんのお陰で、掛け算が分かるようになったから、何かお礼がしたいと思って……」

「そうやらカナは勉強を教えて貰ってから、ノノに懐いちまったみたいでな」


 カナの後を引き継ぐトール。

 人見知りのカナが積極的に、家族以外のことで発言するのは珍しい。


「それに……この間ね、わたし達が遊んでいる所を先生とノノちゃんが通り掛って、ノノちゃんがずっとこっちを見てたの。それがなんか寂しそうに見えて、きっと一緒に遊びたいんだと思うんだ」


 へー、全然気付かなかった。

 ノノもやっぱり同じ子供だったのかと少し親しみを覚える。


「俺としてももっと遊び相手欲しいし」


 トールもあたしと同じ事を考えていたみたいだ。


「そういう事ならあたしも賛成だね」

「うし。じゃあ授業終わったら、声掛けてみよーぜ」


 ということがあり、ノノも誘うことになった。

 これを機に、私もノノと仲良くなれたらいいなと思った。



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