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白金の乙女  作者: 夢野 蔵
第一章
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第三話

 あれから一ヶ月程経ちました。


 どうやら私は転生したみたいです。

 輪廻転生というものが本当に有った事に驚きますが、記憶まで引き継がれるものなのでしょうか。

 まぁ考えても答えは出ませんし、死んでしまったのはどうしようもないので、これからの人生を頑張りたいと思います。


 私の新しい名前はノノ。

 愛称かもしれませんが、とりあえずそう呼ばれています。


 歳は一歳位。

 首もすわっているし、たしか赤ちゃんの視力がはっきりしてくるがその位なので、多分合っているでしょう。


 私の世話をするのは一人の少女。

 意識がはっきりとした時に、一緒に居た少女です。


 彼女の名前はナナといいます。


 歳は14歳ほど。

 身長は140位で、いつも白い修道服の様なものを着ています。

 肩まで届く真っ直ぐに伸びた銀の髪に、陶器の様に透き通る様な白い肌。

 人形の様に整った顔に浮かべるやさしい笑みは――


(聖女……)


 そう、私は聖女にお世話されています!

 24時間、食事からお風呂まで。しかもそれだけに留まらず下のお世話まで!


 夜中にうんちを漏らして、彼女を起こしてお尻を拭いて貰うのは、かなりの羞恥プレイでした。

 何回、恥かしさと申し訳無さでどこかに消え去りたいと思ったことでしょうか。


 基本的に彼女はいつも私と一緒に居ます。

 今日の彼女(と私)の一日は、次の通り。


 朝。日の昇らぬ内から起床し、朝ごはんの準備を始めます。

 準備が終わると私の食事の世話をしつつ、自分の食事も取ります。


 食事が済むと後片付けをして、そのまま家の掃除を始めます。

 掃除の間、私は彼女の背中に背負われたままです。


 そして掃除をしている内に、日は昇りきります。

 すると、「おはようございます」と元気なあいさつをしながら、何人かの子供達が訪れてきます。


 私たちが住むのは二階建ての小さな建物です。

 二階には部屋が三つ有り、その中の一部屋で寝起きをしています。

 一階には調理部屋やトイレがあり、また小さな教室があります。


 そこで彼女は子供達相手に、文字や算数などを教えています。

 子供達からは「ナナ先生」と呼ばれて、親しまれているみたいです。


 集まる人数は4~6人。年齢は5歳~10歳位の年端も行かない少年少女。

 毎日来る子も居れば、週に数回しか来ない子も居ます。


 ちなみに週という概念はあり、6日の平日の後に1日の休日があるみたいです。


 授業中、私は同じ教室で寝かされています。

 もちろん彼女は何度も様子を窺ってくるし、ぐずれば飛んできてあやしてくれます。

 しかし、さすがに他の子供達の面倒を見ながら私の世話をするのは大変だろうと思い、なるべく静かに授業を聴いています。

 そのお陰か、簡単な言葉も少しずつ解ってきました。


 勉強をしているとその内、どこからか鐘の音が聞えてきます。

 村の中心にある鐘で、これが鳴ると午前終了の合図です。


 午前中は子供達に勉強を教え、子供達が帰ると昼食を取ります。

 午後の行動はまちまちですが、この日は私を連れて外出をしました。


 私達が住むのは、人口が数百人程度の小さな村です。名前はバール村。

 ドが付くほどの田舎で、人の出入りも少ないみたいです。

 そのため基本的に自給自足を行い、村人の多くは農家を営んでいます。


 彼女はそんな村の中を、私を抱いたまま廻り、村人一人ひとりにあいさつをします。

 そしてあいさつを貰った村人と世間話を始めたり、畑で取れた野菜を貰ったりします。


 ちなみに村人からは「ナナ様」と呼ばれています。


(様!?)


 初めて聞いたときは、びっくりしましたが、どうやら村人には敬われているみたいです。

 もしかして、ナナは身分が高い人なのでしょうか?


 他に村を回った時に気付いたことがあります。

 私はどこか欧州の田舎に生まれたかと思いましたが、どうやら違うみたいです。


 どんな田舎でも何かしらの電気仕掛けの機械があるはずです。

 しかしそんなものは一切無く、あるのは簡単な機構のものだけ。

 もちろん自動車は一台も無く、代わりに馬車があり、村人の服装や建物もファンタジー映画に出て来る様な古い姿をしています。

 明らかに以前に居た世界とは違います。

 俗に言う、異世界転生でしょうか。ちょっとわくわくしてきました。

 いやしかし、過去の欧州ということも可能性としては有り得るのではないでしょうか?

 その辺は追々、調べたいと思います。


 閑話休題。


 村を廻り終わると家に戻り、夕食まで自由にしています。

 この時間帯は掃除をしたり、何か書類を書いたりと日によってまちまちです。


 その後、夕食を取ると小休憩の後、お風呂の時間です。

 お風呂と言っても、お湯で絞った布を使い、体を拭くだけです。


 私の体を拭き終わると、彼女も自分の体を拭きます。

 その時に彼女の裸体を拝しました。


 染み一つない肌に、引き締まった体。

 まだ未成熟な身体で胸はちっぱいです。

 しかしそれはミロのヴィーナスの失われた腕と同じものです。

 芸術品のように美しく均整のとれた体は、正に地上に舞い降りた天使!


 そう彼女は聖女様であり、天使なのです!

 美しい。あまりの眩しさに、後光が射して見えます。

 現に彼女が微笑むと、私は照れて直視できません。最近はやっとなれてきましたが。


 お風呂が終わるとそのまま就寝します。

 もちろん前述した通り、夜中にお漏らしで聖天使様を起こしてしまうこともありますが、概ね平和な一日を過ごしています。


 あと最後に一つだけ気付いたことがあります。

 まぁ、今は赤ちゃんだから、あんまり実感が無いのですけど。


 どうやら私、女の子として生まれてきたみたいです。



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