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第三部 お芝居とお仕置き。

 いつになく真剣な京司郎さんに促されて、私と清水さんは京司郎さんの向かいに座った。

「ジュリアちゃんが寝てるって話だったから、飯でも食ってから相談しようかなって思ったんだけどさ。起きてて、なかつその姿を見てしまったのだから、先に話をしよう」

「村で何かあったんですか?」

 聞きながら私はこの数日、まったく家の外に出ていなかった事に気づく。

「うーん。確かにこの村はヘンだよ。閉塞的だし排他的。正直うんざりさ。だから俺はイギリスに逃げて……」

「京司郎の無駄話はいいから、早く言えよ」

「ああ……」

 物凄く言いにくそうな京司郎さんを見て、なんとなくわかってしまった。

「私が怪しいとか?」

 正直ウンザリするほどよくあるのだ。

 日本人に見えない外見のせいで、悪目立ちしてしまっているのだろう。

「ああ」

 京司郎さんの答えを聞いて、私は平気だったのだけど、清水さんが立ち上がった。

「呪いの息子が連れてきた女が全ての禍の原因だってのか! ジュリアがここに来る前から始まってたんじゃないのかよ!」

「通じるわけないだろ? 年寄り連中に。よりによって長老様が直々に仰ったそうだぞ」

「で。魔女狩りかよ。全然変わんないな、この村は!!」


 魔女狩り。

 なんとなく納得してしまう。

 それでも……。


「私はタダで狩られる気はありません。残念ながら魔女ではなく呪術師ですので、それなりの反撃をさせて頂く事になると思いますが……」

 余裕の笑みで微笑むと、京司郎さんが大笑いし出した。

「やっぱ俺が思った通りの子! 本当に最高! 結婚したい! 本気でイギリス行こう一緒に!」

 どさくさ紛れに凄い事を言われた気がしたけど、とりあえず笑って誤魔化した。

「ほら大河も座れ。今から作戦を説明するからさ。これが上手くいけば、事件は解決。万々歳」

 私達は顔を突き合わせて、相談を始めた。




 それから数時間後。

 清水さんの実家の扉をドンドンと叩く音が響いた。

 村人が、魔女狩りに来たのだろう。

 私達はお互いに1度頷きあってから、玄関へ向かった。


「大河! お前の連れてきた女! どこへやった? 出せ」

「あの子が全ての原因なのよ!」

「隠すな」「引っ張り出せ」

 物凄い怒声が重なる。

 数人で固まってやってくる事も想定済みだ。


 私は清水さんの影から、黒巫女の装束で姿を見せた。

「私に何か御用ですか?」


 村人の怒声が一瞬止んで、ヒソヒソ話が始まる。

「外人だ」

「巫女だ」

「話が違う」

 ずっとコソコソと相談していたが話が纏まったらしく、代表者らしきおじさんが大声で叫んだ。


「この悪しき者が!! お前が禍の正体だ!」

 本当に清水さんや京司郎さんが言っていた通りだ。

『自分達と違う者は排除せよ』

『癒者でない者は村人ではない』

 そんな考えのせいで、清水さんのお母さんは不幸になった。

 やっぱり、おかしいし、許せない。


 私は、躊躇っていた村人への「お仕置き」の決意を固めた。



 街灯なんてほとんどない、真っ暗な夜道を村人に取り囲まれるようにして進む。

 適度な距離と適度な好奇の目。

 本当に何かの罪を犯したみたいな気分だ。

 先頭を歩く数人が松明を掲げて道を歩く姿は、まるで昭和のホラー映画さながらで、この異様な村の雰囲気にぴったりと馴染んでいた。

 自分が主演女優になった気がしてくる。


 まあ、実際今から「演技」をしなくてはいけないのだけど。

 この雰囲気なら、さぞかし「いい恐怖」を村人に与えられそうだ。



 長老の家と呼ばれた場所には、十重二重の人垣が出来ていた。

 もしかしたら、村人が全員集まっているのかも知れない。

 それでも100人にも満たない少ない数。

 この村も私と同じ。

 滅び行く運命に晒されている。

 この現代社会に置いて、世間から認められない「特殊能力者」なんてもういらないのだろう。

 京司郎さんがイギリス行きを熱望しているのは、わかる気がする。

 これからは「隠す」能力ではなく「認められる」能力が必要なのだ。

「はあ……」

 誰にも聞こえないように小さくため息をつく。


 呪術師が「認められる」日なんて永遠に来ない。

 この能力は私の代でお終いにしよう。


 私の中の迷いがまた1つ消えた。

 それだけでも、この村に来てよかった。

 村人に埋もれて姿が見えない清水さんと、京司郎さんに秘かに感謝した。


 そんな事を考えているなど微塵も感じさせないポーカーフェイスを保ちながら、長老宅へ足を踏み入れた。




「では、お主は巫女じゃと言うのじゃな?」

 おばあちゃんよりも、かなり年上に見える長老に問われた。

「そうです」

 無表情、平坦な声を保つ努力をする。

 室内には今にも飛び掛ってきそうな、おじさんやおばさんで溢れかえっている。

「再度問う。何をしにこの村へやって来たのだ? 異国の黒い巫女よ」

「この村の呪いを解く為にやって来ました。私の力があれば、今夜中に村の呪いは解かれるでしょう」

 私の答えに、室内がざわめきだす。

 まあ、怪しいのは自分でも自覚している。

 それでも京司郎さんが言った「犯人がまったく特定出来ない事件だから、藁にでも縋る思いでジュリアちゃんに頼るはずだ」 

 その言葉を信じるしかない。


 無表情のまま長老と向かい合う事、数十分。

 大きく息を吸った長老が、ついに結論を下した。

「異国の黒巫女よ。お主の能力で、この村の不幸の原因を突き止めてほしい。ただし今夜中だ。今夜中に出来なければ、この村からすぐにお引取り願おう。もちろんお主が不幸を運ぶ者でないと証明してもらった後で……じゃが」

 要するに、今夜中に何とか出来なければ、村人から何をされても文句は言うなって事?

 本当に、この村はヘンだ。

 この村独自の倫理感や法律は、もう世間には通じない事をわかってない。


「お引き受けしますわ」

 私の演技で少しはこの村が変わればいいと、本気で願った。


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