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第二部 呪い屋で救い屋。

 暑さで目が覚めた。

 見覚えの無い景色に一瞬戸惑うが、昨夜の出来事を思いだす。

 急いで携帯を見ると、時間は午前11時。

 もう、お昼前だった。

「そうだ、清水さん……」

 昨日はチャペルの長いすで眠ってくれた筈だ。

 申し訳ない気持ちで清水さんの部屋を出てチャペルに向かう。


「あれ?」

 チャペル内は無人だった。

 もしかしたら、授業に行ったのかも知れない。

 置いてけぼりで、少し寂しくなる。

「起こしてくれたらいいのに……」

 必修の授業をサボってしまって力が抜けて、そのまま、チャペルの長いすに座りこんだ。

 昨日の長い長い1日が過ぎて、少し気が抜けてしまっているのかもしれない。

 何をするわけでもなく、少しボンヤリして、その日は授業には出ずに帰った。


 1週間後。


 あの日以来、清水さんには連絡をとっていなかった。

 何度も携帯を開いて確認するが、清水さんからのメールすらない。

「はあ……」

 今日何度目かのタメ息をつく。

 あれから、どうなったのかも気になる。連絡を自分からしてみるべきだ、とは思う。

 でも、何て言えばいい?

「アイツは呪われましたか?」「弱ってきてますか?」

 なんか……怖すぎるでしょ! 私。

 かといって、普通に連絡をいれる話題も……ない。

 また、モヤモヤしてムカムカして、気が滅入った。


「ジュリア。お客さんだよ」

 おばあちゃんが、階下から呼ぶ声が聞こえた。

 珍しい……。友達? はないから、また呪いのお客様だろうか?

 部屋から出て、下に行こうとしたら何かにぶつかった。

「っつ!」

「あ、悪い。大丈夫か?」

 思考が止まる。こ……この声は……。

「えーっと。色々報告が合って来たんだけど……」

「…………し……みずさん?」

 何故家に? 何故私の部屋の前に? 思考停止から混乱に突入する。

 おばあちゃんが2階に上がってくる気配がして、私は急いで清水さんを自分の部屋へ押し込んだ。


「えっと。何故直接家に? 携帯とかで連絡してくれれば……」

 軽くクレームをする。

 自慢じゃないが、男の人が家に来るなんて初めての事だ。

「ちょっと遠くまで仕事に行って、帰ってきてからアイツらのその後を調べて、気づいたら携帯がずっと充電切れだった」

 清水さんから連絡が無いのは当然だったんだ!

「もしかして、あの日から出かけてたんですか?」

「ああ。朝起きて、そのまま車で出かけて、3日ほど前に帰って来て、そこからアイツらを調べた。遅くなって悪かった」

 申し訳ない気持ちになる。

 私が調べておけばよかったのに……。

「で、報告。ジュリアが動いてくれた主犯らしき男。後は実行犯2名。今は警察にいる」

「え??」

「聞いた話だが、主犯の男。アイツはあれ以降行動がおかしくなってたらしい。何も無いところを見て叫んだり暴れたり。心配した実行犯のヤツらが止めようとして、ナイフで刺された。場所が自宅だったし、精神鑑定の必要ありって事で、まだ一部にしか情報が伝わってない」

「他の……」

「他の2名。アイツらも捕まった。刺された現場が主犯の家だ。家宅捜索で、出てきたらしいぞ。あのDVDが大量に。しかも、被害女性は1人や2人じゃなかったらしい。そのうちの被害者1人が被害届を出してくれて、逮捕された。まあ、おいおい連続暴行事件の犯人でニュースになるだろうよ。今は刺された傷が深くて2人とも入院中だそうだ」

「…………」

 そんな事、まだ大学内でも噂になってない。

 この人はどうやって、そんなに詳しい事情を知ってるの!?

「あ……あの、どうしてそんなに詳しいんですか?」

「まあ、色々? 後はありがとうな。今回の件はジュリアが正しかった。俺1人だと学校に隠したDVDを廃棄して終了してた。ダビングなんて探しようがなかったよ。それに、あの手首だけ飛ばしてた女性の霊。アイツらが捕まってから目撃されてない。多分……成仏できたんじゃないかな」


 よかった。辛くて悲しい思いをして、死んでからも辛い思いを抱き続けるなんて可哀想だ。

 少しは手助け出来ただろうか?

 私にも悲しんでいる人を救えただろうか?

 たとえ霊体であっても……。


「じゃ。そう言うことで」

 立ち上がって帰って行こうとする清水さんを思わず呼び止めた。

「まっ待って!!」

 清水さんが私を見て笑う。

「今度は携帯の充電切れには注意する。後は仕事の連絡が入ったら電話する。それでいいか?」

 それで? まだ何か足りないような気がする。

 黙り込んだ私を見て、清水さんがもう一言足してくれた。

「何かあったら、チャペルの俺の部屋に来い。仕事が無い時はたいていあそこに隠れてる。じゃあな、頼りにしてるぜ。俺の相棒の呪術師さん」

 ほしい言葉を全部言ってくれた清水さんに、私は微笑んだ。


「呪い屋」で「救い屋」

 どうしてこんなにも、心が満たされるのだろう。


 生まれて初めて私は、自分の進む道を自分で決めた。



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