堅物騎士の困惑
アギレイとマシロを仲良く…していきたいナ☆
アギレイの視点です。
陛下の案内で隠し部屋に入り、それはそれは美しい少女がいるのだろうと思っていたが想像は覆された。
部屋の床に座り込み、なにやら作業をしている小さな背中。
「マシロ」
陛下が声を掛ける、が小さな背中は振り返ることなく何事かを言う。その言葉はアギレイの聞いた事のない韻の言葉。
抑揚がなく、巫女の経のような歌うような。
落ち着いた声音は好ましかった。
「まーしろ」
背後から抱き込んだ陛下に小さなそれはじたばたと暴れだす。
なるほど、知らない言葉であばれる様子は小動物のようでかわいらしい。
しかし、それだけで陛下が少女に入れ込むとは考えにくい。どう取り入ったのかとつい視線を厳しくしてしまった。
女官長のアメアが少女の世話をするのが一番の適任者であるのだが、第二の母といえるアメアに、少女を隠し部屋にかくまっていると知られたときの恐怖があるのか、陛下はいやいやであるが、アギレイに世話役を命じた。
だからこそ、アギレイは少女をしっかり選定せねばと自分を律した。
ふと目があった少女は、なんというか…まぁ美少女ではない。
顔立ちはなんともいえない。美少女ではないが、頭に残る顔。顔立ちが変わっている。
まぁ、かわいらしいといえばかわいらしいだろうが、陛下が溺愛するほどのものではない。
こちらの視線が厳しすぎたのか、少女の目が恐怖でゆれた。
「マシロ、こいつはアギレイ・クルル。アギレイ、マシロへの態度を改めろ」
陛下より厳しい視線を送られ、とりあえずは大人しく従う。
「申し訳ありません、姫、アギレイ・クルルです」
自分より身分の上の者にするように、膝をついて少女に視線を合わす。
陛下と少女がそれぞれ母国語で好き勝手に話しているが、その様子はどう見ても話が伝わっていない。しかし二人は問題としていない。
このまま説明なく陛下がいなくなれば、少女は大丈夫なのだろうかと思うと、不安でならない。
少女は本当に何も知らないお譲ちゃん、に思えるのだ。
幸い、陛下は1ヶ月は帰らない。
これを機に、少女にできるだけ文字と言葉を覚えさえ、出自や目的を聞き出そうとアギレイは思った。
陛下はしつこくしつこく少女に気を遣え、といっていたが、アギレイは返事をしたが頭では教育方法について脳を働かせていた。
教育ママができました。