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Sweet hug  作者: 響かほり
RAINY KISS
6/68

RAINY KISS 4



 私が内心ではらはらしていると、紫苑は自分の顔を手で押さえ、がっくりと肩を落として深く溜め息をつく。


「なんでそんな事、言っちゃうなぁ…」


 困ったような、呆れたような声音。

 完全にアウトの方だ…。


「うっ…ご、ごめん!忘れて!今のなし!」

「もう遅い」


 ゆっくりと、ダークブラウンの髪をかき上げ、気怠い色香を纏った表情で、紫苑は唇の端を歪める。


“あれ?嫌がってるのとは、なんだかちょっと違う気がする”


「俺を誘うようなこと吉良が言うの…初めてだよね?」

「…だ、駄目…かな…」

「そんな訳ない。すごく嬉しいよ?ただ、帰りたくなくなって困るけど」


 覗き込む灰青色の瞳に、吸い込まれそうで、胸の鼓動が一気に跳ね上がる。

 俳優”上坂伊織“モードが入った彼の笑みは、ちょっと苦手だった。淫靡すぎて。

 彼の色気に当てられて、頬がとても熱くてくらくらする。


「紫苑が帰って来るの、ちゃんと待ってるから」


 そんな事しか言えないけど、紫苑は何時もの様に優しく笑ってくれる。


「…遠慮なんてしないから、覚悟して?」


 甘い危険を感じて逃げようとした時には、口付けが首筋に降りて来た。


「え?い、今じゃないよ?ちょっと、紫苑っ」

「我慢できない」


 もがけばもがくほど、わたしの素肌は彼の前に晒されて、紫苑の熱が肌に絡み付く。

 仕事に真摯な彼の事だから、仕事に穴を開けるとは思えないけど、それでも心配で、彼の髪を軽く引っ張る。


「し、仕事は?ねぇ…っ!」


 胸元に降りた口付けが、チクリと肌を刺す。

 甘い痛みに驚いて、身体が震える。


「大丈夫だから、少し黙って…」


 低く囁いて、紫苑は私の体に幾度もキスの痕を刻んでいく。

 会えなかった時間の分だけ強引で、濃厚な彼の愛情表現にまどろみ、熱に浮かされ、満たされ、潤んでいく。

 寂しさや不安を埋めていくように、二人、一つにとけていく。




 降り止まぬ雨と共に……。







     END






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