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第3話:最強ならず者軍団!

銀行の地下金庫は、冷たく湿った空気に満ちていた。


「フム。ここだね。この金庫の奥の壁、魔力反応が不自然に歪んでいる。隠し通路だ」


エラーラは、ボロボロになった白衣のまま、金庫の壁をコンコンと叩いている。


「で、どうすんだい? 銀行員は気絶させちまったし、カギもねえぞ」


バルガが、クソ重いプラズマライフル「ドラゴンブレス」を肩に担ぎ直した。


「フン。鍵など、このミャオ様の『ネコミサイル』で壁ごと……」


「馬鹿者! 爆破すれば生き埋めだ! 少しは君、脳みそをだね……ああ、いかん! 魔力がないと解析もままならない!」


エラーラが頭を抱えたその時、ミャオが壁の模様をジッと見ていた。


「……おい、白衣の。このライオンの紋章、押し込めそうだぞ」


「ライオンではない、グリフォンだ! ……フム? おお、本当だ!」


エラーラが紋章を押すと、ゴゴゴゴ……と、重い音を立てて壁がスライドし始めた。


「「ヒャッハー!」」


バルガとミャオが、お宝の匂いを嗅ぎつけて銃を構える。


「行くぞ! 非合理的な二人組!」


扉の奥は、灼熱の通路だった。


「うわっ! 暑っ! なんだここ!」


「フム。地熱を利用した防衛システムか。実に古典的だが……」


エラーラの分析が終わる前に、通路の奥から燃え盛る炎の塊が姿を現した。火の怪物だ。


「グオオオオオ!」


「出やがったな! 私のドラゴンブレスの餌食だ!」


バルガが、恐怖で腰が引けながらも、ヤケクソ気味に引き金を引いた!


ドギュウウウウウン!


青白いプラズマが発射され、火の怪物を直撃する。


「ギャアアア!」


「見たか! 私の活躍!」


バルガがドヤ顔をした瞬間、プラズマを吸収した怪物が、二回りもデカくなって炎を吐き出した!


「馬鹿者! 炎にプラズマとは! 火に油だ!」


エラーラが叫ぶ。


「「うわああああっ!」」


三人は慌てて通路の影に隠れた。


「ど、どうすんだよ! アンタのクソ重い銃が役立たずだ!」


ミャオがバルガを蹴飛ばす。


「うるせえ! 大は小を兼ねるんだよ!」


「フム! 黙りたまえ二人とも! あの怪物の核! 一瞬だけ見える!」


エラーラが、怪物が炎を吐く瞬間に、胸の中心が冷たく光るのを見抜いた。


「バルガ! もう一度撃て! ヤツのエネルギー吸収が飽和した瞬間、ミャオが核を撃ち抜く!」


「無茶言うな!」


「報酬が減るぞ!」


「「乗った!!」」


バルガが「私を盾にするなよ!」と泣き叫びながらライフルを乱射し、ミャオが「報酬は私が7割だ!」と叫びながら、その弾幕の隙間を縫ってネコミサイルを怪物の核に叩き込んだ!


ドカアアアアアン!


火の怪物は、けたたましい断末魔と共に四散した。


「……はぁ、はぁ。まったく、君たち二人がいると、戦闘データが非効率極まりない」


エラーラがため息をつく。


「うるせえ! お宝はどこだ!」


ミャオが鼻息荒く先を急ぐ。

次の通路は、一転して水浸しだった。第三話でゴウが落ちた水路とは別の、腰まで浸かる汚水路だ。


「げげっ! 最悪だ! 私のブーツが!」


バルガが文句を言う。


「静かに。水音がする」


エラーラが制止した直後、水面が盛り上がり、ゴウが遭遇した個体よりも数倍デカい触手の怪物が姿を現した。


「ウオオオオオ!」


「またかよ!」


「今度は私の番だ!」


ミャオが、高価なネコミサイルを、まるで石ころのように触手めがけて投げまくる!


ボカン! ボカン!


「フン! ライオンの爪にかかれば、タコなど前菜だ!」


ミャオが強気になった瞬間、怪物の本体が水上から現れ、粘着爆弾をすべて弾き返した!


「「うわあああっ!」」


エラーラとバルガが、自分たちに飛んできた爆弾を必死で叩き落とす。


「馬鹿猫! こっちに投げるな!」


「設定を統一しろ!」


「フム! 核はあの目玉だ! だが、水中で冷却されていては、君たちのオモチャでは歯が立たんぞ!」


「じゃあどうすんだよ!」


ミャオは、水路の壁に張り巡らされた、古い魔導パイプラインに目をつけた。


「……おい、エルフ。あれ、撃てるか?」


「あれ?……って、まさか!」


ミャオが指差したのは、水路の天井を走る、高圧の蒸気パイプだった。


「撃て! あのタコを茹でダコにしてやる!」


「ヒャッハー! それだ!」


バルガがドラゴンブレスの最後のエネルギーを振り絞り、蒸気パイプを撃ち抜いた!


プシュウウウウウウ!


灼熱の蒸気が水路全体に噴射され、怪物は熱湯の中で苦しみもだえる!


「グギャアアアア!」


怪物が沈黙した。


「……フム。実に非合理的だが、結果オーライだ」


「それより、弾が……切れた」


バルガが、空になったドラゴンブレスを汚水の中に投げ捨てた。


「私のも、もうないぞ」


ミャオも、ネコミサイルのランチャーを捨てた。


「フン。だから言ったのだ。デカいだけでは……」


エラーラが皮肉を言いかけた瞬間、最後の関門が開いた。

眩い光と共に、バチバチと音を立てる電気の怪物が現れた。


「ウソだろ!?」


「今度は電気かよ!」


「フム! 最悪のタイミングだね!」


三人は丸腰だった。いや、エラーラには腰の小さな魔導ピストルが残っていた。


「バルガ! 君のそのデカい図体でヤツの視界を塞げ!」


「私が盾かよ!」


「ミャオ! 君はあの制御盤を破壊しろ! ヤツのエネルギー源だ!」


「報酬は!」


「後で交渉だ!」


エラーラは、電気の怪物が放電するパターンを冷静に分析していた。


「……3秒に一度、頭頂部が放電する! そこだ!」


バルガが「給料上げろ!」と叫びながら怪物の前に飛び出し、ミャオが壁を蹴って制御盤に飛びつく!

怪物の注意が二人に逸れた瞬間、エラーラは魔導ピストルの最後の一発を、怪物の頭頂部に正確に撃ち込んだ。


「ビビビビビビッ!」


電気の怪物は、自らのエネルギーを暴走させ、ショートして動かなくなった。


「……はぁ……はぁ……」


エラーラは、弾切れのピストルを放り投げた。


「……終わった。まったく、君たちのおかげで私の寿命が縮んだよ」


「アンタのせいだろ!」


「それより、腹が減ったぞ。報酬はまだか!」


三人は、ボロボロになりながらも、奇妙な一体感を感じていた。


「フム。この騒ぎが片付いたら、私が奢ってやろう」


「本当かよ! よっしゃ、ならアタシはケバブだ!」


「私は焼き魚だな! 高級なヤツだぞ!」


「ケバブの方が合理的だ!」


「魚だ!」


三人が「どの屋台が一番コスパが良いか」で楽しく言い争い始めた、その時。


ゴゴゴゴゴ……。


地下施設全体が揺れ、奥の壁が崩れ落ちた。

そこから現れたのは、今までの怪物たちの3倍は強そうな、巨大な怪物だった。


「「「ウソだろ!」」」


三人は絶望した。武器はない。エラーラの魔力もない。


「……フム。私の計算が……間違っていたかね……」


怪物が、三人をまとめて叩き潰そうと、その巨大な腕を振り上げた。


「「「ここまでかー!」」」


三人が覚悟を決めた、その瞬間。


ガキン!


「え?」


怪物の背後、天井の排気口から何かが飛び降り、怪物の背中に突き刺さった。

ゴウだった。

手には、あの鉄パイプが握られている。


「グギャアアアアアアアアアアア!」


弱点を突かれた怪物は、バランスを崩し、盛大にひっくり返ると、動かなくなった。


「……ゴウ君!」


「……エラーラさん!」


ボロボロの三人と、ずぶ濡れのゴウが、怪物の死体の前で再会した。

ゴウは、パイプを引き抜きながら、エラーラをジト目で睨んだ。


「……遅かったじゃないですか、エラーラさん。こっちはとっくに脱出してましたよ」


エラーラは、銀髪についたゴミを取りながら、バツが悪そうにそっぽを向いた。


「……フム。す、すまなかった。道が混んでいたものでね」



その頃、地下組織のアジト最深部。豪華絢爛な絨毯が敷き詰められた玉座の間。

先の戦闘でエラーラたちに叩きのめされた『銀龍会』のチンピラたちが、床に土下座していた。


「申し訳ありません! スカージ様!」


「奴ら、妙に手強くて! あのデカいエルフ女、無駄に頑丈で!」


チンピラたちの前に立つのは、見るからに悪の怪人といった風貌の側近、ジェネラル・スカージだった。黒曜石の鎧を身にまとい、その兜からは不気味な魔力のオーラが漏れている。


「使えん奴らだ!」


スカージが怒りに任せて拳を振るうと、近くにあった大理石の柱が魔力の一撃で粉々に砕け散った。


「たった四人! しかも魔力なしの学者女一人に、何を手こずっている! 貴様らの存在そのものが非合理だ!」


「まあまあ、スカージ。落ち着きたまえ」


玉座から、穏やかな声が響いた。

組織のトップである『長老』だ。彼は、側近の怒りとは対照的に、満足げに笑みを浮かべていた。


「侵入者ごときで、計画が揺らぐものか。むしろ、面白い余興だ。久しぶりに退屈せずに済んだ」


「しかし、長老!」


「それより、客人がお着きのようだ。丁重にお迎えしたまえ」



一方、エラーラたちは、怪物を倒した先で、古びた牢を発見していた。

中には、ボロボロの服を着た男が一人、鎖で繋がれている。


「お、おい! 助けてくれ! 私はしがない行商人だ! あの怪物どもに捕まって!」


「うわあ、可哀想に! すぐ助けてやるぞ!」


バルガが、人の良さ、あるいはこの男が隠し持っているかもしれないお宝への期待で、牢の格子を力任せに引きちぎろうとする。


「待て、エルフ」


ミャオが、バルガの肩を掴んで止めた。


「こいつ、妙に臭わんな。地下に捕まってた割に、小奇麗だ。怪しいぞ。ライオンの勘がそう言っている」


「さっきはピューマって言ってなかったか? 大体アンタ、人を疑いすぎだ!」


「フム。ミャオ君の観察眼も捨てたものではないね。確かに、この状況で生存している確率は統計的に不自然だ。だが……」


エラーラは男をジロジロと観察する。


「データが不足している。判断に迷うね。スパイである確率は48パーセント、無実の市民である確率は52パーセント。五分五分だ」


「エラーラさん! どっちでもいいから、早く脱出が先ですって!」


ゴウが、三人のマイペースぶりにイライラと叫んだ。


「ええい! 面倒だ! 助けてから怪しかったら、もう一回殴って牢に戻せばいいだろ!」


バルガが、結局、格子を怪力で引ん曲げてしまった。


「おお! ありがとう! 恩に着る! さあ、出口はこちらだ!」


男は、狂喜して牢から飛び出すと、一行を先導し始めた。


「こっちの近道を知っている! 例の怪物ゾーンも避けて通れる!」


男は、落盤しかけた危険な足場や、複雑な分岐路を、まるで自宅の庭のようにスイスイと進んでいく。


「フム。やけに詳しいじゃないか、君。このダンジョンの設計図でも持っていたのかね?」


「ははは! 商人は勘が命でして! さあさあ、こちらです!」


そして、一行は、ついに広い空間に出た。どうやらアジトの中心部らしい。


「着いた! ここを抜ければ地上へ……」


男が振り返り、満面の笑みを浮かべた、その時。


「ご苦労だったな、スパイ男よ」


冷たい声と共に、広間の奥から、あのジェネラル・スカージが姿を現した。


「「「「な!?」」」」


四人が同時に叫ぶ。


「げ!」


「やっぱり!」


「フム! 52パーセントが外れたか!」


「ああもう!」


「へへへ、ジェネラル様。約束通り、連れてまいりました。これで報酬は!」


スパイ男は、卑屈な笑いを浮かべた。


「愚か者どもが。私の手のひらで踊っていたとはな」


スカージが、その黒曜石のガントレットをエラーラたちに向ける。


「全員、ここで塵となれ!」


スカージが、強力な魔力波を放った!


「「「うわああ!」」」


エラーラたちは、咄嗟に左右に飛んで避けた。

だが、間抜けなスパイ男は、避けるどころかスカージに向かって駆け寄っていた。


「ジェネラル様! 報酬は! 報酬をください!」


「邪魔だ」


ドゴォッ!


スカージの魔力波は、スパイ男に直撃し、男は白目を剥いてその場に倒れた。


「……あ」


バルガが指を差す。


「自分の部下を、一撃で……」


「フン。役立たずのスパイなど、用が済めばゴミだ」


スカージは、倒れた男を一瞥だにせず、四人を睨み据えた。


「フム! 面白いじゃないか!」


エラーラが、ボロボロの白衣を翻し、一歩前に出た。


「悪の側近対、デコボコのならず者四人組! これは実に王道の展開だ! 勝てる気がするぞ!」


「どこからその自信が湧くんだよ! こっちは丸腰だぞ!逃げた方が!」


「エラーラのせいで、こっちまでヤル気みたいになってるじゃないか!やだよ! 私はもう帰りたい!」


バルガとミャオが、ヤケクソ気味に構える。


「行くぞッ!ゴウ君!」


「えー……」



一方その頃。

長老は、玉座の間で、優雅にお茶を飲んでいた。

周囲には、エルフ、獣人、人間など、様々な種族の美少年たちが控え、彼に高級な菓子を運び、扇で風を送っている。


「フム……。スカージも、少々、血の気が多すぎるな。もっとエレガントにやらねば」


そこへ、


「失礼します!」


スカージに率いられた聖騎士団が、縛り上げられたエラーラ軍団を引っ立てて現れた。

四人は、激闘の末、結局捕まっていた。


「よく来たね、ドクター・エラーラ」


長老は、お茶を一口すすると、穏やかに笑った。


「君の活躍は、実に素晴らしかった。まさか、私の張った防衛ラインを、魔力もなしに突破するとは」


「フン! 科学の前には、君たちのオカルトなど無力だということだ!」


エラーラは、魔力がないくせにふんぞり返っている。


「それも、もう終わりだ」


長老は立ち上がり、長々と話し始めた。


「私は、この腐った世界を浄化し、新たな秩序を打ち立てる。そのために、究極の魔力因子が必要でね」


彼は、ゴウを指差した。


「その小僧が持つ、特殊な魔力因子が!」


そして、チンピラから取り上げられていた、あのクリスタルを掲げた。


「そして、その力を解放する鍵が、君が80枚で買った、その『クロノス・クリスタル』だ!」


その瞬間、縛られた三人が、一斉にエラーラに毒づいた。


「おい! やっぱりアンタのせいじゃないか!」


「そうだぞ! アンタが変なガラクタ買うから! しかも80枚て! 高すぎだろ!」


「このトースター狂い! 金の使い方が下手すぎるぞ!」


「なっ!」


エラーラは、仲間からの非難に顔を赤くした。


「私のせいかね!? 君たちがもう少し有能なら、こんなことには……! 大体、本来の私なら! 魔力が万全なら! こんな側近もどき、指先一つで!」


エラーラが、訳のわからない言い訳と屁理屈を並べ立てていると、長老が、興味深そうにエラーラをスキャンし始めた。


「……待て。……ほう。実に興味深い」


長老は、エラーラに近づいた。その褐色の肌と、科学者らしからぬ見事なスタイルを品定めするように眺める。


「小僧の因子の源は……君か、ドクター・エラーラ!」


「フム!? 私のユニークな遺伝子構成が、ついに世界を救う鍵だと!?」


「いや、世界を支配する鍵だ。……だが、必要なのは一人でいい」


長老は、スカージに顎で合図した。


「そこの三人は解放しろ。もはや不用だ」


「長老!? こいつらもエラーラの仲間ですぞ!」


「いいから、やれ。ゴミは少ない方がいい」


スカージは、舌打ちしながら、バルガ、ミャオ、ゴウの縄を切った。

三人は、顔を見合わせた。


「……え? 帰っていいの?」


「……お宝は?」


「命あってのモノだね!」


三人は、コンマ1秒で結論を出すと、縛られたままのエラーラに一切振り返ることなく、玉座の間から全力疾走で逃げ出した!


「達者でなー、白衣の!」


「エラーラさんのバカー!」


「報酬はちゃんともらうからな!」


「……あ?」


エラーラは、あっけに取られ、一人玉座の間に残された。

あまりの現金さ、あまりの非情さに、科学者の脳もフリーズしている。


「……フム」


エラーラは、気を取り直し、長老とスカージに向き直った。


「まあ、仕方ない。あいつらは所詮、その程度のデータしか持たない、ということだ」


エラーラは、わざと挑発するように笑った。


「さて、長老君。君の計画は穴だらけだ。側近の趣味も悪い。私を捕らえたつもりかね?」


その時、エラーラは、指先に、ほんのわずかに魔力が戻ってきたのを感じていた。


(……あと、5分! 魔力封じが切れ始めている!)


彼女は、自力での脱出を目論み始めていた。

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