レッツパーティー!
遅れました。
それではどうぞ
学校の帰り道、俺たち6人は、10分ほど歩いたところにあるそびえたつ建物の前に来ている。自らの存在をアピールする看板、建物の横にある駐輪場、主婦達の闘争本能を掻き立てる特価情報の貼り紙、庶民的な食べ物に雑貨物まで売っている万能の店。
つまりはスーパーに来ている。
「スーパーに着いたな」
はっきり言ってやる気が出ない。勢い余って承諾してしまったが今は後悔していて反省もしている。流されるのは駄目ですね。
直したいなぁ〜、この流されてしまう性格、通知表にも書いてあった気がする。
「んで? パーティーやるのはこの際いいとして何にする?」
まずは食材を買うのだが何の料理を作るのか決めていない。行き当たりばったりな企画だから仕方ないけどね。
「お前に任せるぜ! リアンが作ったのなら何でも美味いからな」
「……は?」
いかん、この歳で耳が遠くなるとはヤバイな。
「だから、リアンに任せる」
どうやら俺がおかしいんじゃなく、レイがおかしいようだ。
「レイ、このパーティーは何を祝うんだ?」
俺はレイに優しく問う。
「いまさら何言ってんの? クリス兄妹とリアンの再会パーティーに決まってんじゃん」
レイは呆れた口調で言う。ここは我慢だ。きっとレイなら理解してくれる。
「つまり、主賓は誰だ?」
これで理解してくれただろう。やっぱり物事は順序立てて考えるのが一番分かりやすいね。
「リアンとクリス達だろ? 自分のことだから舞い上がって混乱してるのか?」
予想外ですね。全てを理解していて俺に作らせるつもりかこんにゃろう。
「私たちも手伝いますから……ね?」
優しいユウナは手伝ってくれるらしい。それでも俺が作ることに変わりはなかった。
「あぁ、わかったよ。作ればいいんだろ? みんなに振る舞ってやるよ。」
「やったぜ!」
はしゃぐレイとは対極的にテンションがだだ下がりな俺がいる。まぁとりあえず大勢が食べれて一気に作れるもの……カレー、いや、煮込むのに時間が掛かるから却下、鍋、さすがに初対面の人がいるのに直箸というのもなぁ、分けるのは違和感があるし……
「パスタでも作るか……」
一気に作れるし、ソースにもたいして時間は掛からないからな。
「パスタ大好き!」
リズも喜んでくれてるし反対意見もないな。じゃあ決定。
しかしリズ、子供っぽ過ぎないか?
「ソースはトマトベースのさっぱりしたやつにしよう」
そうと決まればさっそく中に入ろう。
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場所は変わり、リアンの自宅、3LDKという1人で住むには少しばかり広く、ひどく殺風景だった。リビングの白い壁にはカレンダー以外のものは一切なく、何の装飾も施されていない。真ん中にテーブルが置いてあり、椅子はテーブルとセットで買ったのだろうか、3人家族なのに4脚あった。窓のほうにテレビ、そしてそのテレビを見るためであろうソファーが設置してある。ゲームが好きなのか、テレビの横には様々なゲーム機種が置いてあった。
「リアンの家は相変わらず殺風景だな〜」
とレイの余計な一言、こいつは人の家に入っておいて何だよその言い草は、物が少ないのは必要ないからだ!
「私は入るのは初めてです。フィリアは?」
若干緊張でもしているのか、強ばった表情を見せている。ちなみに女の子を入れたことはない。
何だろう? この虚しさは。
「私も初めてだよ。男の子の部屋っていうか家にしては酷く殺風……片付いてるね!」
フィリアの優しさが心に響くぜ……出来れば、言い直す前の言葉が容易に連想出来るので、発する前に考えて欲しかった。
何だろう? 俺の部屋が歪んで見えるぞ。
「お兄ちゃんは趣味のない淋しい人なんだよね!」
俺のガラスのハートは崩れ去りましたよ。とりあえず俺の心の汗は溢れて来る。
俺はふらふらと玄関に向かう。
「今から電器店に行ってネジばっか買い込んでやる! 単1電池ばっか買ってやるよ! 両面テープも大量に買ってやる!」
もう自暴自棄です。殺風景が嫌いなら綺麗なネジと単1電池の花を部屋中に咲かせてやる。
「ちょっと待て! 何でそんな使い所がありそうでないものばかり選ぶ!? 悪かったから! 謝るから許してくれよ。」
まぁ実はそこまで怒ってはない。だだちょっと傷ついてノリに乗っただけだ。このへんで許してやろう。 クリスも苦笑いだしね。
「冗談はさておき、さっそく作るぞ、フィリアとユウナは手伝ってくれ、料理は3人で充分だから男性陣とリズはテーブルと食器の用意だ。ってもまだ用意はしなくていいから適当に遊んでてくれ、後で呼ぶ」
みんな快く承諾し各々が動き始める。
さて、作るか。
俺とフィリア、ユウナはキッチンへと向かう。とは言ってもリビングとキッチンは繋がっているのでたいした距離ではない。そして男性陣はまだ役目がないのでゲームをやるようだ。
くそ〜、羨ま……いや、ここは我慢だ。女子2人に囲まれて料理が出来るんだ。逆にラッキーだと思っておこう。
それでは始めよう。今日は茄子とトマトソースのパスタです。
「ユウナは茄子を半月状に切ってくれるか? フィリアはフライパンとパスタを茹でるお湯の用意を頼む」
俺はニンニクをみじん切りにする。匂いがつく作業は女子にやらせたくないからね。
「フィリアは終わったらフライパンにオリーブ油を入れて熱してくれ、そのまま茄子を炒めてくれると助かる。ユウナはパスタを茹でてくれ」
俺はトマトホール缶を開けて、味を整える。さすがにソースを始めから作るのはつらいから許してくれ。
「茄子に火が通ったらニンニクを投入、色がついてきたら、トマトソースを入れて煮込むぞ。レイ、クリス! 食器とテーブルの用意を頼む」
ここまできたら後は簡単、パスタをフライパンの中に入れて絡めたら出来上がり。
ざっとこんなもんだな。出来上がった料理をテーブルに並べたら終了。椅子はさらに丸椅子を2つ用意してあったのでみんなが各椅子に座る。
「まっこんなもんだな。かたっくるしいのは無しにしてみんなで食べようか、それでは、いただきます」
みんなも食べ始める。
「うまいな!」
「美味しいですね。トマトの酸味とニンニクアクセントが合っています」
どうやら好評のようだ。みんな思い思いの感想を言ってくれる。リズは一心不乱に食べ続けている。まぁ美味しいということだろう。
「んで、クリス達とリアンはどういう知り合いなんだよ?」
とレイが食べながらクリスに質問をする。まぁ気になるだろうな。
「簡単に話せば、道場で知り合って、僕がリアンさんに教えてもらってたんですよ。実力はリアンさんが一番でしたからね、武術も魔法も。しばらくはそういう関係が続いたんですけどね、ある日突然リアンさんがばったりと消えたんですよ。引っ越しという形でね。だから意外に期間は短いですよ。一年間くらいです。」
クリスが簡略化しながら俺についてみんなに話す。なんか恥ずかしいな。
「リズはね、最初はお兄ちゃんが恐かったの、いきなり師匠に挑むくらいだったから、だけどね! リズが大切にしてたお人形をなくした時に一緒に探してくれたの! 見つかるまでずっと探してくれたからお兄ちゃんのこと好きになったの! それからいっぱい遊んでもらった!」
リズが元気一杯に話す。トマトソースを口につけながら、見ていて可愛い。
「レイさんたちはリアンさんとはどういった経緯でお知り合いに?」
リズの口元を拭いながら、クリスが聞く。
「そうだな、俺は小学校の時からリアンとは友達だな。転校してきたリアンが何でも出来るやつだったから喧嘩吹っかけてやったんだよ。それから仲良くなった。やっぱり男は拳で語り合うものだよな。」
レイが腕組みをしながら何度もうなずく。
「私はファンタズム学園に入学してからかな、同じクラスになって、それから意気投合した感じ、私たちのクラスは人数少ないからね」
最初は俺含めて3人しかいないのにびっくりしたな、その時は女子1人だったから心細かっただろうな……フィリアはそんなのとは無縁か。
「何かイラってきた」
フィリアがこっちを睨み付けてくる。
「何も考えてないっす! 気のせいだよ」
お願いだから、超能力みたいなその勘をなんとかしてくれ。
「私は二年の頃にSクラスに上がってからですね。実はリアンに憧れてSクラスに入ったんですよ? 風紀委員の時助けてもらってからずっと憧れていたんです。」
予想外な暴露をしたユウナ、そんな理由でSクラスに入ったとは、ちょっと……いや、かなり嬉しいな。 そんな出会い話しで食事は終わり、その後も話し続け、あっという間に時間は過ぎていく。既に時刻は9時を過ぎていた。
「おっと、もうこんな時間だな。今日はもうお開きにして帰るか」
レイがそう言いながら立ち上がる。今日は帰るみたいだな。
「そうですね。僕たちも帰ります。報告書も書かないといけないですし、ほらリズ、行くよ」
明らかに嫌な顔をするリズをなだめるクリス、それでもリズは嫌なようだ。
「リズ、今日は楽しかったよ、また遊びに来てくれ。いつでも待ってるからさ。」
リズは笑顔になり、遊ぶ約束をする。これで大丈夫だな。
「それでは、私たちも帰らせていただきます」
「今日は楽しかったよ」
とユウナとフィリアも帰る支度をする。
「そうだクリス、これ俺の連絡先だから、何かあったら連絡してくれ。」
「ありがとうございます」
俺はクリスに連絡先を渡す。何かあったら駆けつけられるからな。
「それじゃあねお兄ちゃん! また遊ぼうね!」
元気よく手を振るリズ、久し振りに会って別れるのはやはりいつでも会えるとしてもやはり悲しい。
「それじゃあまたな、クリス、リズ。レイたちはまた学校で」
そうして1日が終わった。
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