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0話:「神殺しの旅路」

はじめまして、ゴンザレス中村と言います。

拙い文章ですが、読んで頂ければ幸いです。

世界には、九つの大陸が存在する。


レグナディア、かつて魔王に支配され、勇者によって解放された大陸。現在もその血筋を受け継ぐ者たちが存在する。


アクアフィルム、海と湖に覆われた大陸。水魔法が発達し、水に関する伝承が数多く残されている。


シルヴェリア、広大な森林に囲まれた大陸。エルフとドワーフが共存し、高度な魔法と鍛冶技術を誇る。


メカトリア、錬金術と機械文明が発達した近未来大陸。技術によって魔法の力すら再現する。


ネクロジア、瘴気に覆われた呪われし地。かつての魔王の居城があり、今は魔族が統治する大陸


グレイシア、最北端の氷と雪に覆われた大陸。厳しい環境を生き抜く者たちが剣術と氷の力を研ぎ澄ませている。


デザラン、最南端の砂漠大陸。広大な砂海と鉱物の採掘地帯が点在する荒涼の地


ヤマトガルド、独自の剣術や魔法技術を発展させ、伝統を重んじる民族が住まう大陸


フレアエルド、人類が初めて火を手にしたとされる地。火にまつわる伝説が数多く残り、熱を操る者たちが栄えている。


 各大陸はそれぞれ独自の文化と歴史を持ち、幾度となく争いと平和を繰り返してきた。


 その均衡を保つために設立されたのが、「世界平和維持機構(WPK)」 である。


 WPKは強大な力を持つ9人の監視員によって構成されていた。


 彼らは各大陸を担当し、時には独裁者の鎮圧、時には自然災害への対応などを行い、平和を守り続けてきた。


 その強さはまさに神に等しく、彼ら一人ひとりが大陸を滅ぼすほどの力を持つとされている。


 だが、完璧な組織など存在しない。


 WPKもまた例外ではなかった。


 監視員の中には、自らの力を濫用する者、あるいは独自の正義を貫く者もいた。


 そのような存在を抑制するため、WPKはひとつの対策を講じた。


 それが「番外席次」と呼ばれる存在。


 名をネメシス。


 人工的に作られた存在であり、9人の監視員全てを監視するための影の存在。


 感情を持たず、与えられた任務を遂行することだけを求められる器用貧乏なオールラウンダー。


 そして「神殺し」の役割を持つ存在でもある。


――――――


 辺境の村。


 文明の手が届かず、訪れる者も稀なこの地で、黒髪の青年は一つの宿屋を見つけた。


「へぇ、お前さん、働き先を探してるのかい?」


 カウンター越しに尋ねるのは、白髪の老人。


 彼の前に立つ青年は、茶色のローブに身を包み、無表情のまま頷いた。


「路銀が無い、働き口を提供してくれるなら助かる」


 淡々とした声。その言葉には、感情の欠片すら含まれていない。


「なら、丁度いい…。ここは人手不足なんだ。畑仕事を手伝ってくれれば、食事と宿を用意しよう」


 老人は奇妙な興味を抱いている様子だった。


 青年は黙って頷き、作業を始めた。


 鍬を振り、土を掘り返し、種を撒き、水を与える。


 その一連の動作は、驚くほど正確で無駄がない。


「……本当に旅人かい?」


「効率を考えただけだ」


 その言葉に老人は驚きと共に微笑を浮かべるしかなかった。


――――――


日が沈みかけた頃、村人の一人が息を切らして宿屋に駆け込んできた。


「じいさん! 近くの森に魔物が出たって話だ!」


 老人の表情が険しくなる。


「またか……最近、この辺りは魔物の被害が増えてきてるんだ」


「魔物退治を手伝えば、報酬は出るか?」


 青年は無表情のまま尋ねた。


「そりゃ、助かるが……あんた一人で行く気か?」


「あぁ、問題ない」


 そう言い残し、青年は村の外へと歩き出した。


――――――


 森の中は静寂に包まれていた。


 だが、その静けさは決して安寧を意味するものではない。


 青年は周囲を慎重に観察しながら、足を進めた。


「グルルル……!」


 不意に、茂みを掻き分ける音と共に巨体が現れる。


 筋肉に覆われた体躯、血走った目、鋭い爪と牙を持つ魔物。


 それは、この辺境で恐れられる「バーベル」と呼ばれる獣だった。


 バーベルは咆哮と共に青年へと襲いかかる。


 鋭い爪が空を裂き、苛烈な一撃が彼を切り裂こうとする。


 彼は無駄な動きをせず、最小限の足捌きでそれを避ける。


 逆に魔物の横腹へと踏み込み、素早くナイフを繰り出した。


 鋼の刃は肉を断ち、痛みに吠えるバーベルの体躯へと正確に突き立てられた。


バーベルは苦痛に叫びながらも、その巨体を震わせて反撃の隙を探ろうとした。


 だが、彼は一切の躊躇も見せずにその動きに対応する。


 バーベルが再び襲いかかろうと前足を踏み出す瞬間、彼は鋭い一閃を繰り出した。


 その一撃は魔物の前足を断ち切り、バランスを崩した巨体が地面に崩れ落ちる。


「グォォォォォッ!」


 苦痛の雄叫びを上げるバーベル。その声が森全体に響き渡った。


 だが、青年の冷徹な瞳は何の感情も浮かべず、次の行動を淡々と実行する。


 再び魔物が襲いかかろうとする前に、彼は地面を蹴って間合いを詰めた。


 剣を逆手に構え、一息で喉元へと突き刺す。


 心臓へ確実に届いた刃が、魔物の命を刈り取る。


 目の光を失ったバーベルの巨体が、鈍い音を立てて地面に沈んだ。


「……処理完了」


 静かに呟く声。


 周囲の静寂は、彼の言葉を飲み込むように再び訪れる。


 青年は魔物の死体を確認すると、振り返って森を後にした。


 彼の中に達成感も安堵も存在しない。ただ、任務を完了したという事実だけが残った。


――――――


 夜の宿屋。


 "ネメシス"は静かに腰を下ろし、目を閉じた。


 その瞳に映るのは、WPKからの指令。


「9番席の監視員、エリアス・グレイブに不穏な動きが確認された。調査と監視を命じる」


 それが彼に課せられた使命であり、存在理由。


 世界を守る監視員たちを監視し、必要とあらば討つ――。それが彼、ネメシスの役目である。


 エリアス・グレイブ。


 火の大陸フレアエルドを担当する監視員であり、古代魔法「原初の火」を使う力を持つ女性。


 その力は大陸を焼き尽くすほどの威力を秘め、もしも暴走すれば世界全体に脅威を及ぼしかねない。


 そして、エリアス・グレイブの動向に異常が確認された――。


「……9番席、エリアス・グレイブの行動を調査するため、中央都市へ向かう」


 ネメシスはゆっくりと立ち上がり、再びローブを纏い直す。


 辺境の村から続く道は険しく、危険が多いことは容易に想像できる。


 だが、彼にとっては些細な問題に過ぎなかった。


 ――この旅は始まったばかりだ。


 ネメシスは何も恐れず、ただ淡々と歩みを進めた。


古代魔法【原初の火】は核爆弾だと思ってくれれば良いかな―と思います。


ここまで読んで頂きありがとうございました。

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