暗い男女交際
世間では明るい男女交際が推奨されている。でも私たちは暗いほうが好きだ。何しろ私の名前は『土中滋味子』、彼の名前は『影日陰影二』。名前に負けていない日陰者カップルだから。
待ち合わせはマンホールの下。下水道施設の中を歩いていくと、目の前にうっすらと暗い影のようなものが現れた。
「待った? 影日陰くん」
「待ったよ。……あーあ、大切な俺の時間を7分も無駄にさせやがって」
「フフフ……。私のために無駄にさせてやった。ざまぁ」
「まぁ、俺様は優しいからな。特別に許してやってもいいよ。んで? 今日はどこへ行く?」
「いつもと同じよ。何いってんの?」
「今日はどっか行きてーのかと思って特別に聞いてやってんだろ。バカか?」
そして私たちはいつものように、そこでじっと何も喋らずに、ネズミを観察して過ごすのだ。
「……」
「……」
「……」
「……」
「落ち着くわね」
「うん」
「ところでそろそろ……しない?」
「ククククク……。するのか?」
「フハハハハ! するのよ、黒くて真っ暗な男女交際を!」
「ヒヒヒヒ! やるか!」
高校生カップルがしてはならないことを、私たちはした。
もちろん不純なことではない。そんなのは明るいカップルがやることだ。
私たちは
─ 続く ─
影日陰くんの名前は四宮楓さま『影日向くんは引きこもり』よりお借りしました。
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