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30話 駆け抜ける時間

 王都から帰ってきてから毎日が慌ただしい。

 毎日の鍛錬や座学、お茶会なんかの社交に勤しみ、それに加えてブリッジ商会でアランと打ち合わせの日々。


 ついでにレジナルドの様子を見るのも忘れない。

 今のところ、暴走中のレジナルドに出くわす確率は三割ってところかな。

 一度、ミックが休みの日に暴走してて、アランはもちろんジャックでもどうにも出来なかったから、二人は同じ日に休ませることにしたってアランが苦笑いしてた。

 それと、毒を食らわば皿までの精神で、ミックとレジナルドに麻雀を教えてみた。

 一応、アランに許可は取りマシタ。

 自分が作るものを知っておくのは重要だとかもっともらしい理由で。

 二人とも打つのはあまり興味無さそうだったけど、手牌を見せて何翻あるか考えるのは面白いみたいだった。

 楽しみかたは十人十色だね。

 雀牌を作らせることに比べれば麻雀を打たせるのってなんてことないよ。

 すでにフィリップ殿下も打ってるし、たぶんセオドアも打ってるしね。


 ああ、フィリップ殿下と言えば。

二盃口(りゃんぺいこう)が三翻だけっておかしくない?』

 っていう手紙が来た。

 時候の挨拶は流石にあったけど、仮にも婚約者候補に送る初めての手紙がこれってどうよ。

 気持ちは大いにわかるけど。わかるけどさ。

 二盃口は数ある麻雀の役の中で作るのが難しい役のくせに、それこそ役満なみに出ないとか言われてるくせに、狙って成立させるだけのリターンがあるかと言われれば、ぶっちゃけ無い。


『実のところ、私も自分の夢に同じことを言ってやりたいと常日頃から思っております』

 って返しといた。


 エルヴィラ様には増産の目処が立ったこと、ルウェリンからの注文は出来るだけ早く納品してもらうことを連絡します入れといた。

 そうしたら、王家からの発注が来たってアランから報告が来た。

 雀卓や雀牌の裏とかにつけれるオプションを増し増しにした特注品。

 見積を出したら、値段を上乗せして見積書が返ってきて、こっちの値段で見積書をもう一回出せって言われたとか。

 報奨金の代わりってとこかな。



 そんな忙しい日々の中、微妙に空いた時間を調べ物に当てているんだけど。


「見当たらない……」


 何かと言えば『異国の巫女』の手がかり。

 信仰してる神が誰か分かれば、巫女の出身国からヴィクトリアの死亡回避に使えそうな『昇華薬』を入手出来る──そう考えていたんだけど、探しても探しても出てこない。


「旅こそが我が信仰、我らが巡礼……ね」


 異国の巫女は二つ目のルートで主人公を『我が神』として崇めるけど、どういう神なのかは言ってないんだよね。

 こんな事になるって知ってたらもっと真面目に考察を読み漁ったんだけどな。


 読み終えたばかりの本を机の隅に押しやって、ノートにピット横線を引いた。

 うちの蔵書の神話や宗教の本を集めてタイトルをリストアップして、読み終えたらチェックを入れるようにしてたんだ。

 けど、今の一冊で終わり。全部のタイトルに一本線が入っちゃった。


 とはいえ、悲観はしてないんだけどね。

 こっち方面はうちの蔵書の弱いジャンルだってわかってたから。

 武具や魔物、魔術とかとにかく戦闘に関わる本に力を入れまくってて、他のジャンルは必要最低限しか揃えてないのが結構ある。

 神話や宗教系はまさに必要最低限ジャンル。魔物との戦いに役立つものじゃない。

 だけど、我が家には無いだけであるところにはある。

 王都の図書館や王城の図書室とかね。

 こうなると、今回の王都行きはいろいろ都合が良かったのかもしれない。

 他にも王都でやらなきゃいけないことはあるし。


 ただ、王都にフローレンスはいないけど。フローレンスが! いないけど!

 そのことを思うと体が重くなる。

 長くなる王都の滞在期間、フローレンスがいない日々に耐えられる自信が無い。

 スマホで気軽に通話できた現代日本が恋しい。

 魔法師の皆さん、可及的速やかに遠距離通信魔法具を作ってください。

 そんなことを考えながら、私はノートを閉じるのであった。

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