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27話 三人目の気配

今回はスマホのみでの執筆なので、誤字脱字を多発させてる自信があります。

気がついたら修正します。

「お久しぶりです、ヴィクトリア様。本日はようこそおいで下さいました」

「久しぶりね、アラン。早速で悪いけれど、連絡しておいた件についていいかしら」

「もちろんですとも」


 私は挨拶もそこそこに要件を切り出す。

 その相手であるアラン・ブリッジもわかっていたみたいで、すぐに資料がテーブルに置かれた。

 お茶よりも先に資料が出てくる話の早さ、楽でいい。


 ここはブリッジ商会の応接室で、アランはブリッジ商会の跡取り。

 麻雀のあれやこれやの販売を引き受けてもらってる商会の担当さんデス。

 最初はテイラー家と懇意の商会にお願いしようとしたんだけど、「うちよりもこういうのが得意なところがある」って紹介してもらったんだ。


「やっぱり問題は材料よりも魔法師ね」

「募集をかけてはいるのですが、当商会は魔法具を扱っていないので、マーブル加工を行える腕がある魔法師はまず来ません」


 マーブル加工っていうのが例の、ユリア樹脂みたいな手触りにするってやつ。

 魔法もややこしく、魔法の中に魔法と錬金術と、あとほかにもいろいろあるんだよね。

 ヒト科にヒト属やチンパンジー属、ゴリラ属がある感じ。我ながら例えが微妙すぎるな。

 それは置いといて、このマーブル加工は錬金術と魔法のちょうど境目の技術らしい。

 両方の技術をかじってないと出来ない難しい加工のくせに、活用の幅がほとんどないっていう困ったちゃん。


「ですが、ヴィクトリア様さえ良ければ二人ほど呼べます」

「その二人に何か問題が?」

「正式な魔法師ではありません。二人とも高等学校の入学年齢に達していないんです」

「なるほど」


 魔法師も魔術師も国家資格なんだよね。高等学校の専門課程を修了しないとダメ。

 修了で『葉』の階級、技能試験に合格すれば『蕾』、さらにその上が『大輪』だけど、これは勲章に近い。ちなみに、薔薇の花ね。

 無資格でもいいっちゃいいんだけど、やっぱり資格持ちのが信頼性あるんだよね。実力の保証にもなるし。

 有資格のメリットは他にもいろいろあるんだけど今は省略。


「でも、こうやって話に出すからには腕が良いのではないの?」

「おっしゃる通りです。試しに五回ずつやらせてみましたが、どれもムラなく綺麗に仕上げてみせました」

「そう……」


 エルヴィラ様から要請されてるし、人手が増やせるなら増やして増産したい気持ちはある。

 とはいえ、ターゲットは富裕層。

 魔法師っていう、質の保証は大事なんだよね。


 悩んでると、アランの奥さんであるチェルシーがお茶を持ってきてくれた。

 チェルシーのお茶は本当に美味しいんだ。

 なんでもお茶の拘りが高じて、馴染みのお店とオリジナルブレンドまで作っちゃったらしい。


 一口飲んでみたらキャラメルの香りがした。

 これならミルクを落としたいな。そんな私の考えを予想してたかのように用意されてるミルクピッチャー。

 ミルクの量に悩む。たっぷり入れたい気持ちはあるけど……ううん、一杯目は少なめにして、二杯目にたっぷり入れよう。

 さらに一口飲んで確信した。すごく好きだな。かなり好み。

 美味しくて口角が緩みかける。


「今日のお茶はチェルシーの馴染みの店で買えるの?」

「ええ、扱ってますわ。ヴィクトリア様のメイドに店とブレンド名を伝えておきましょうか?」

「ありがとう、お願いするわ。家でも飲みたいの」

「ふふ、ヴィクトリア様のお好みを探ってきた甲斐がありました」


 ティーカップを置いてぺらりと資料をめくると、今度は数字がズラっと並んでいた。


「あら」

「どうされました?」

「思ってた以上に数が出てる」

「ああ、()()()と棲み分けが出来たからですね。

 あちらはマーブル加工をしないかわりに単価を落とし、平民向けとして売り出しているので」

「なるほど。魔法師の確保が出来なかったのね」

「はい、そのようです。結果として客層に違いが出来たので、あちらとしてもかえって良かったのでしょう」


 と、なると気持ちが採用寄りに傾く。


「その二人の身上は?」

「こちらに」


 追加で差し出された資料を受け取り、目を走らせる。

 一人目はブリッジ商会唯一の魔法師と同門。『ミック・スカーフ』。

 腕そのものは並。仕事ぶりは丁寧。

 ただし、家が貧しいため、安定した収入になるかもしれないと死にものぐるいで練習してマーブル加工を習得した、と。

 高等学校に入学出来るかも怪しいから一芸を磨いたわけか。

『葉』もない魔法師だと、尖った技能がないと魔法師としての賃金は低いからね。

 真面目って話だし、問題はなさそうかな。


 で、二人目はっと。

『レジナルド・ハル』。

 ……。

 …………。

 危なかった、紅茶が口に入ってたら噴いてた。ううん、ティーカップ落としてた。

 これって『さきはな』の魔法科の攻略対象の名前なんデスケド。

 いや、でも同姓同名の別人の可能性だってある。たまたま同じ名前で、偶然にも同じ魔法師の別人の可能性が。

 なになに、こちらも同門の魔法師で商人の息子、技術力が高く、難しい技術の習得及びその扱いに意欲的。没頭すると周囲が見えなくなる悪癖あり。

 ……。

 …………。

 資料を読めば読むほど、本人としか思えなくなってく。

 でも、でも、でもね? 可能性は否定したくなるでしょ?

 だって、乙女ゲーの攻略対象に雀牌を作る手伝いさせるなんて、彼のファンの皆様に申し訳なさすぎるでしょ!!

 面白がる人もいるだろうけどさ、なんなら私もただのユーザーなら面白がったけどさ。

 やらせる側からしたら「すみませんでしたっ!」って土下座したい気分だよ。


「ヴィクトリア様、なにか気になるところでも?」

「なんでもない……いいえ、少しだけ。レジナルドは高等学校の入学を考えているの?」

「はい、学園への入学を考えていると聞いております」

「そうなると、一年半で彼は抜けることになると思うのだけれど」

「その頃には生産数が落ち着くはずですし、それまでにもう一人ほど人手を確保する予定です」

「抜かりは無いわけね。ならいいわ、この二人を入れて頂戴」

「かしこまりました」


 背に腹は変えられない。

 ごめんね、レジナルドのファンの皆。彼には雀牌の製造に携わってもらうよ。


「お会いになりますか?」

「ええ。いつならいいかしら?」

「ミックは呼べばすぐにでも来るはずですが、レジナルドは来週になります。

 師の手伝いがあるそうです」

「では来週に二人まとめて会いにくるわ」


 そう答えつつも、心の中で盛大なため息を吐く。

 攻略対象とろくな出会いかたをしてない気がする。

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