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22話 騎士の鼓動 上

執筆速度の都合で、一話分を上下にわけるため、今回は短いです

「ダンフォード侯爵」

「はっ」


 ダンフォード侯爵が書類を手に立ち上がった。

 背筋が伸びた堂々とした佇まいは、騎士を目指す身としては憧れちゃうね。


「エイミス伯爵邸が魔物の襲撃を受けた件の聴取を始めます。

 温室でエイミス伯爵夫人ルシンダ殿、その令嬢パトリシア嬢、カロライン嬢、そしてテイラー侯爵令嬢ヴィクトリア嬢により茶会が行われていました。

 当時、エイミス伯爵は登城のため不在。

 邸宅の警備は四人。うち二人が門衛を務め、残り二人が邸宅周囲を警らしており、この警らに就いていた二人が最初に魔物の襲撃を受けました」


 文書を読み上げるダンフォード侯爵の顔は職務に真摯な男の人そのもので、さっきまでの男子高生みたいな笑顔は影も形もない。

 おかげと言っていいのか、私の緊張も高まるばかり。


「二人をすぐに無力化。一人はその場に捨て置かれましたが、魔物はもう一人を抱えて塀を飛び越え、敷地内に侵入。

 それを温室内にいたヴィクトリア嬢が発見された。ヴィクトリア嬢、ここまでに間違いは?」

「いいえ、ありません」

「結構、では続きを。

 ヴィクトリア嬢の指示により、ルシンダ殿、パトリシア嬢、カロライン嬢の三名は温室から邸宅へ退避。

 一方、ヴィクトリア嬢はその場に留まり、魔物と交戦。

 ルシンダ殿の命を受けた門衛が駆けつけた頃には、魔物は撃破され、ヴィクトリア嬢は意識不明。

 しかし、大きな怪我はなく、極度の疲労によるものだっだと医師の報告があがっております。

 エイミス伯爵邸は魔物の襲撃を受け、重傷者二名、軽傷者一名が出たものの、死者はおりません。

 魔物の特定は未だ出来ておりませんが、二足歩行が可能かつ、大の男を大きく上回る体躯、現場に残された痕跡などから、かなりの力を持つ魔物だったのは間違いないでしょう」


 あれ、魔物の種類ってまだ特定されてなかったんだ。

 でも確かに、『シャドブ』に出てたから知ってたけど、図鑑では見た覚えがない。


「質問をよろしいでしょうか?」

「どうぞ、ヴィクトリア嬢」

「特定が出来ていないということは、魔物は希少種、あるいは新種だったということでしょうか?」

「まさにそれです。そのことが、ヴィクトリア嬢をお呼びした理由です」


 えっと、つまり、私に覚えてる限りの魔物の情報を出せってこと?

 それにしたって、わざわざこんな場を設ける必要ある?


「特定が出来ていない理由は、魔物の死体が失われたからなのです」

「失われ、た?」

「はい」

「それはどういう……」

「ここからは私が説明しよう」


 ダンフォード侯爵が手振りでハイアット公爵に促され、着席した。

 すると、さっきまではダンフォード侯爵や手元の文書を見ていた騎士団長たちの視線が私に集中する。

 騎士団長五人分の視線ともなると威圧感がすごい。

 せめて一人は違うところ見てくれないかな……。お父様、貴方のことデスヨ。


「ヴィクトリア嬢は魔物の死体が消えたと聞いて、どのような手段を想像したかね?」

「焼き払われたか、神官による浄化が行われたかのどちらかかと」

「そうだろうな。普通であれば、そう考える」


 魔物には、死体になっても疫病や呪いを撒き散らすはた迷惑な種類もいる。

 そんな魔物の死体や汚染された土地は浄化しなくちゃいけないわけね。

 で、浄化には二種類あって、大量の聖水と数ヶ月の時間が必要だけど誰でも出来るやり方と、『純なる魔力』の持ち主──ほとんどが神官だね。彼らだけが使える、一瞬で完了する浄化の法ってのがあるんだ。

 ちなみに、浄化は呪われた土地には効果があるけど、生きてる命への呪いには効果がない。

 効いたら話は早かったんだけどね。


「今回の魔物が消えた理由はそれらではない。しかし、我々はその原因になりうることをもう一つ知っておるのだ」


 豊かな白い眉の奥にある目が細められた。

 鋭い眼差しで貫かれたせいで、背筋がざわざわして落ち着かない。


「ヴィクトリア嬢よ。そなた、魔物に直接、魔力を打ち込んだな?」

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