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5 もう充分、堪能した

「先月の事件の経緯については、以上です」

「ご苦労、万田くん。車で逃げた男の素性はわかったのかい?」

「車のナンバーと男の映像を使用して、事件のあった日の前後一週間を基準に、近辺の防犯カメラの映像とマッチングしました。すると、ある建物に頻繁に出入りしていることがわかりました。建物の借主は『ラスカル・ジャム』という会社でした。なんの会社かはよくわかりませんでしたが、間尼怜斗という人物が経営者だそうです。間尼怜斗ってご存知ですか? あの、間尼商会の後継者だそうです」

「間尼? 間尼……あの時の……」

「社長? どうします? 清見刑事に今までの事伝えておきますか? 湊博物館、甘夏島、有珠田さんの事件……と、全てに同じ男が出てきました。しかもその男のバックにいるのは、どうやら間尼怜斗という大手企業の関係者です。放置するわけにはいきませんよね」

「そうだな。万田君の方から連絡しておいてくれ。今後は警察とも協力しながらやっていくことになるだろう」

「了解です」

万田が部屋を出ていくと、樹太郎はひとりもの思いにふけった。自分が現役バリバリの刑事だったころを思い出して……。

「間尼怜斗……あの男……」






 外へ出ると、朝いちばんの少しひんやりとした清らかな空気を胸いっぱいに吸い込んだ。私は日課にしているジョギングを開始した。まわりの木々は太陽の恩恵を受けて濃い緑色に生い茂って、互いの恰幅の良さを元気に競い合っているように見える。

 ボンヤリと考え事をしながら走っていると、脇道から人が飛び出してきた。危うくぶつかりそうになりながら、サッと身体をよじった。が、運悪く道端に転がっていた小石を踏んづけて足をひねってしまった。

「……おっと……」

もう少しで転びそうになったところに、救いの手が差し伸べられた。ぶつかりそうになった人物の手だった。衝突を回避しつつも、とっさに私を支えてくれたのだ。

「危ない! ケガはなかったかい? お嬢さん」

建物の隙間から差し込む朝の太陽を浴びて、その人の輪郭は金色に光り輝いていた。まぶしくて、思わず瞬きを多めにしていると、その人物は続けた。

「驚かせてしまったかな。悪かったね。キミもジョギングかい?」

「あっ……はっ、はい……」

次第に相手の顔立ちがはっきりと見えてきた。親しみやすそうな笑顔がこちらへ向けられている。明るいはちみつ色の髪と瞳。一瞬で魅入られそうになった甘やかな声音。ポカンと口が開いたままになっていたのに気づかれないように、慌てて私は会話を続けた。

「日本語、お上手ですね」

「はい、昔この近くで暮らしていたことあります。数年ぶりに戻ってきましたが、このあたりは変わらないですね」

先ほどの敏捷な身のこなしにはおよそ似つかわしくない、穏やかな話しぶりだった。

「こちらへは、観光旅行……ですか?」

「そうだったらよかったんですが……」

何かを思い出したのか、ため息をついた。

「ちょっとした仕事です」

「そうなんですか」

「それでも、久々の日本を楽しみにしています。会いたい人もいますから」

「それはよかったです。滞在を楽しんでください」

「ありがとう」





 その日やって来た依頼人は、丸花八 朔夜(まるはなはち さくよ)と名乗った。大きな風呂敷包みを抱えている。

「これをご覧になってください」というと、その女性は持ってきた風呂敷包みを解いた。中から一幅の風景画が出てきた。

豊かな緑の木々に差し込む、太陽のぬくもり。どこかの家の庭であろう、ペンキの色褪せた柵の向こうに、めんどりの世話をしている女性の姿が描かれている。庭に植えられた木には、小さな白い花が咲き乱れていた。

「この絵は、その昔……わたくしが産まれる前のことですが……わたくしの母の両親の家で下宿していた男性が置いていったものです。生前の母が言っていたことには、この絵はその男性の手によるものだそうですわ」

「ここにサインが書き込まれていますね」

拡大鏡で隅々まで調べていた万田さんが言った。

「ええ……『S・ワッサー』と読めませんか?」

「んまあホント……画家のジーク・ワッサーと同じサインね。……そんなことってあり? ジーク・ワッサーといえば、遺作が盗まれたとかニュースになってたわね」

横からのぞき込んでいた青島さんが、そう付け加えた。

「ええ、今話題になっているジーク・ワッサーの『残照』にそっくりですの」

万田さんが検索した画面を皆に見せた。

「この画像に写っているのが、その盗まれた『残照』ですね」

確かに今目の前にある絵は、盗まれたという『残照』とウリふたつだった。

「今回の盗難事件が起きるよりも前に、わたくし、この絵の作者を知りたくて、鑑定士に見てもらったことがありますの。鑑定士によると、サインは確かにジーク・ワッサーと書いてありますが、タッチがとても荒々しくて、本人の作品とは言えない……と」

「じゃあこの絵は贋作?しかし『残照』が描かれたのは、せいぜい10数年前では? この絵が描かれたのは……」

「わたくしが産まれる前からありましたから、『残照』よりもずっと前から存在していたことになりますわね。……そこで、こちらにお願いしたいのは、この絵と、母の家から出て行ったこの絵の作者の男の素性をつきとめることですわ。何分古い話です。もしかしたら詳細不明のままにしておいたほうが、関係者全員にとって幸せなことなのかもしれません。わたくし自身つい先日までそう思っていましたの。ですが……どこから聞きつけたのか、この絵を欲しいという人物が家にやって来ました。母が大切にしていた絵です。売却する気は毛頭ございませんが、この絵の正体は知っておきたい……そう思いました」

「その男性に関するものが何か残っていませんか? 写真……とか?」

「母の手元に残っていたのは、この絵と、手紙だけです」

そう言って朔夜さんは、一束の手紙を差し出した。絵の中の女性が髪に結んでいるのにそっくりな、でも今ではすっかり色褪せたブルーのリボンで束ねられていた。

「お母様とその男性……もしかして恋人同士だったの?」

「あなたもそうお思いになる?」

「ええ、ワタシ、ピン!と来ちゃったわ。お・と・めの勘ってやつね」

「え? おと? ……オホン、はっきりとは聞いたことはありませんの。母が結婚した相手、わたくしの父はそれは優しくていい人で、母も幸せな人生だったと思います。だからあえて過去の出来事をほじくり返したりしないで来ましたの」

「外国から来た手紙のようですね……知らない言語だな」

「わたくしもさっぱり読めなくて、住所だけは……Tangerinnaタンジェリンナとかいてありますの」

「……なるほど……では、こちらでもできる限り調査をしてみましょう。絵画と手紙の写真だけとらせていただきますが、原物は今日のところはお持ち帰りください」






 その日は、来客がもうひとりいた。祖父に呼ばれて社長室へ行くと、祖父と客人が楽しそうに語り合っていた。こちらへ振り向いた客の顔を見て、私はハッとした。今朝衝突しそうになったあの人だったのだ。

「やあ、また会ったね」

「あなた……は……」

「しまった、僕の名前を言ってなかったね。タンジェリンナ王国王室付文化財捜査官、フォーブル・デ=コポンです」

そう言ってデ=コポン捜査官は優雅なお辞儀を見せてくれた。

「君が樹太郎さんのお孫さんの、柑奈さんだね。おじいさんから君の話を聞いていてね、いつか会いたいと思っていたんだよ。やっと願いがかなった」

「なんだ柑奈、初対面じゃないのか?」

「うん、今朝ジョギング中にバッタリ」

「まあぁぁ、そんな偶然ってあるのね。見て見て、デ=コポン捜査官からタンジェリンナ王国のお菓子をお土産にもらっちゃったの。お茶淹れてくるからみんなで食べましょ」

青島さんがお菓子を持ってご機嫌な様子で部屋から出て行った。

「うちの祖父と知り合いだったんですね」

「うん、今朝、会いたい人物がいると言ったろ? 君のおじいさんのことだよ。僕が日本で暮らしていた時、とてもお世話になったんだ」

「湊博物館事件の時に協力してくれた王国側の捜査官というのは彼のことだよ……今回はゆっくりしていけるのかい?」

「時間がとれるといい……と思っています。とはいえ、仕事が片付けばの話ですが」

「お持たせですが……」

「オオ……ありがとうございます。日本茶にも合いそうですね」

青島さんが、運んできたお茶とデザート皿をテーブルに並べた。フカフカのパウンドケーキに、オレンジ色の果肉が散りばめられていた。表面には艶やかな蜜がかかっている。しっとりとしたほのかな甘みのケーキを口に頬張ると、閉じ込められていた初夏の清らかな風味がパッと口の中に広がった。

「んふ……おいしいれす……甘くてさわやか……」

「我が国の名産品タンジェリンを使用したお菓子です。お気に召したのなら、次の収穫の時期に、果実をお送りしますよ。加工せずにそのまま食べても気に入っていただけると思います」

「今回は仕事で来日したと言っておったが、例の……画家ジーク・ワッサーの盗まれた絵の件かな?」

「ええ、窃盗団『サイドカー』の仕業ということまではわかっています。実は盗まれた絵『残照』には、対になっている絵が存在していて、日本のある家庭にあるのではないかと研究者の間で言われています。『サイドカー』は、現在日本に潜伏しているようですから、もしかしたら……」

「いやだ、ねえ……万田ちゃん、今朝のお客さん……」

「午前中に私どもの事務所にいらした依頼人が、一枚の絵を持ち込んできました。これです」と写真を見せた。

「オオ、『残照』にそっくりですね、ワッサーの直近の作品と比べると、だいぶ筆遣いが違いますが」

「鑑定士は贋作と判断したそうですが……」

「……ですが、画家も人の子。遥か昔に描いた絵が、現在の能力に及ばないこともあるでしょう。それに、気に入ったテーマを何度も作品に登場させることもよくあるお話です。……ぜひその依頼人に合わせてください。お役にたてるかもしれません」

「そうだな。では、この件に関しては、T.C.P.Iと合同で捜査することにしよう」






「お客さん、こちらはいかがですか? ご希望通りのスペックだと思いますが、ええ」

「やけに安いな。何か理由でも?」

「前の持ち主が、事業に失敗しましてね……できるだけ早く処分したいんだそうです。ええ、ええ、ほとんど使用されていないせいか、内部も綺麗なままです。お買い得ですよ」

「まあ、いいだろう。買うよ」

「ありがとうございます。ええ、では、こちらで手続きを……。ええ、現金で一括払いですか……はい、はい確かに。お客さん、運がよかったですね、ええ。このサイズの車はなかなか中古車市場に出回らないんです。お仕事でお使いなさるんで?」

「……中古家具の輸入販売でも始めようかと」

「それは結構なことでございますね、ええ。……そうだ、こちらを……お買い上げいただいたお客さまには漏れなく差し上げております。招き猫の置物です。今後も幸運が続くことを願っておりますよ、ええ」

 幸運……だと? そんなものそこらの野良犬にでも食わせておけ。俺の立てた計画は完璧なはず。運だとかこんな……エサ代のかからない猫なんかの割り込む隙もないほどにな。男はもらったばかりの招き猫としばらく睨めっこした。ゴミ箱に捨ててやろうか……。どんなににらみつけても、うすら笑いを浮かべたつぶらな瞳が無言で見つめ返すのみだった。男は手近な場所にあったゴミ箱に招き猫を放り投げると待ち合わせ場所の公園に向かった。

 背中合わせに設置されたベンチのひとつに座っていると、間もなく、連絡役のメンバーがやってきて背後のベンチに座った。

「望み通りの車は、手に入ったか?」

「ああ……いい買い物だったよ。明日の午後納車だ。それまでに今使っている部屋をひきはらう準備をしておけ。今後はトレーラーの中で生活する。」

「トイレとシャワーは……ついていないんだな」

「……すまん。トイレは公衆トイレを使えばいいし、あとは何とかガマンしてくれ。たったの一週間の辛抱だ」

「一週間か……俺、この国は初めてだから、いろいろ見て回りたかったんだがな。寿司もかつ丼も牛丼もラーメンもまだ食ったことがないしな」

「おいおい……ここへ来た目的を忘れるな。ん? それは?」

さっき捨てたはずの招き猫が彼の手の中にあった。

「いいだろ? これ。そこで拾ったんだ」

「捨てて来いよ」

「いいだろ? 俺は気に入ったんだ。顔がいかしてるじゃないか」

「そうかよ。俺はそいつの顔は気に食わないが……まあいい、好きにしろ。一週間後に実行は決定事項だ。気を抜くなよ」

「その日じゃないといけない理由が何かあるのか?」

「ああ、一週間後の日曜日、この町では花火大会が行われるそうだ。皆が空を見上げている隙に、俺らは地中にもぐり、お宝をいただくっていう寸法だ。詳しい計画は皆が集まった時に説明する」






「これは、これは……」

デ=コポン捜査官は感嘆のあまり、言葉を失った。

「僕はタンジェリンナ王国にあった『残照』を実際にこの目で見たことがあります。この絵からはそれに勝るとも劣らないパワーを感じます。描かれたのは、何気ない日常の様子ですが、ハートフルな光景です。……行方不明になっている『残照』とそっくりな構図ですね。木々の隙間から太陽が差し込み、手前の空間に女性がひとり……。『残照』とはタッチがだいぶ違います。かなり粗削りですね」

「いやぁ、デ=コポン捜査官すごいですね。絵を見ただけでそこまでわかるんですか。絶対勉強になるから行ってこいと上司に言われてやってきたんですが、その通りでした」

一緒に来ていた清見刑事が感心して言った。

「いえいえ、僕などまだまだ修行中の身です。今回の件も、僕の知識が少しでも役に立てば……と思ってここにやって来たのです。清見刑事も協力してください。そして我々皆でこのヤマを乗り越えるんです」

「はいっ! もちろんです!」

「この絵に名前は付いているんですか?」

「この手紙の束が残されていました」

「中身を見せていただいてよろしいですか? ……うん、タンジェリンナ語ですね。―――ここで過ごした思い出を持っていく代わりに自分の描いた絵を残していきます。絵のタイトルは『兆し』と名付けました―――と書いてあります。この絵はどのくらい前に描かれた作品かお判りですか?」

「わたくしが産まれたときにはもう母の手元にございましたから……ウフフ、わたくしと一緒で半世紀以上前には存在していたことになりますわね。ウフフフフ」

朔夜さんは、重大な秘密を打ち明けるかの如くそう語った。

「それだけの間大切にされてきたということですね。……『S・ワッサー』とサインが入っていますね。正確なところは専門家に鑑定してもらって……」

「あのぉ……わたくしのほうで既に鑑定済みですの。その時は、ジーク・ワッサーの作品ではないとの結論でした。筆使いが全然違うと言われました」

「そうですか……どうでしょう奥様、僕の国から専門家を呼び寄せるのをお許しいただけますか? もちろん、費用はこちら持ちです。タンジェリンナ王国では、文化財の保護に力をいれています。僕のように専門の捜査官がいるくらいです。ジーク・ワッサー氏については、母国ということもあって研究が盛んです。当然ながら鑑定能力も抜きんでていると言えましょう」

「ええ……ええもちろん、こちらからお願いしたいくらいですわ。先日、馬弓探偵事務所にお伺いした際に申し上げた通り、この絵を買い取りたいという人物が接触してきました。わたくしがこの絵を持っているのを知っているのは、わたくしの家族と鑑定士だけなんです。だから……どこから情報を得たのか、不気味に思っていたところですの」

「それは大変、怖い思いをなさったでしょう。そうなると、保管方法も気を付けたほうがいいでしょう。現在はどちらに置いてあるんですか?」

「この家の蔵で保管しています。セキュリティレベルを上げたほうがいいのかしら……」

「これから僕たちと一緒に考えましょう」

 デ=コポン捜査官は本当に好青年だ。べっ別にイケメンだからどうとかいうことではない。仕事熱心で親切で……。今も朔夜さんの悩み事に細やかに寄り添っている。

「ええ……。あっあら……カップが空になっていますわね。お菓子も足りなかったかしら……」

「さっきのクッキーは奥様のお手製ですか? とてもハッピーな気分になります。夢中で食べてしまいました。なぜだか懐かしい味で……うむ、故郷の母を思い出します」

「あらまあ、どうしましょう……今お代わりをお持ちしますわね」

そう言うと朔夜さんはウキウキとした足取りで部屋を出て行った。

そして……デ=コポン捜査官の優しい態度と貴族的なルックスに篭絡された者が、ここにもうひとり……。

「デ=コポン捜査官、あっという間に丸花八さんの信頼を勝ち取りましたね。すごいです。僕も見習いたいです」

「いえ……これから良くないニュースをお伝えしなければなりません。清見さんも心して立ち向かってください」

「有名な絵画泥棒一味がここにも来るかもしれないってことですよね。自宅に置いておかないほうがいいのでは?」

「保管場所を移動させても、犯人たちがそのことを知らなければここに来てしまいますからね。それよりも、警備体制を強化するべきです。そこで柑奈さん、あなたの事務所の出番です」

「警報装置とか防犯カメラの提供ですね。……私はどっちかっていうと、待ち伏せよりもさっさと攻撃の方が好みなんですけど……」

「僕知っていますよ。『先手必勝』というのですよね」

 そこへ朔夜さんがお茶とクッキーの追加を持ってきた。

「すっかりお待たせしてしまって……。それで警備のお話でしたっけ……本物のジークワッサーかどうかまだ判らないのに、大袈裟すぎではありませんの?」

クッキーに夢中になっているデ=コポン捜査官の横で、清見刑事が説明を始めた。

「いいですか、丸花八さん。すでに日本にジーク・ワッサーの作品があると、ある界隈で噂になっています。その界隈とは、画商や故買屋の他に、絵画専門の窃盗グループも含まれています。とある窃盗グループが日本に入国した可能性も指摘されています。この絵を買い取りたいという人物が来たとおっしゃいましたね。あなたこそが日本にあるジーク・ワッサーの持ち主だと知っている者たちがいるということです。その人物の顔は覚えていますか?」

「……いいえ……普通の男の人でしたのよ。特にこれといった特徴もなくって……服装も普通の地味な背広で……ごめんなさいね、よく覚えていませんの」

「いっいえ……この場合、『特徴がない』ってことが特徴なんですよ」

「まあ、そうなんですの? でもそんな男性、どうやって探し出しますの?」

「正直言って今わかっている事柄だけでは非常に厳しいです。ですから、今は丸花八さんにできる限りの自衛をしていただきたい。」

「どうすれば、いいのかしら?」

「私ども馬弓探偵事務所にお任せください。防犯カメラと警報装置を取り付けましょう。絵の保管をしている蔵を見せていただけますか?」






 丸花八さんの家は古い商家で、母屋の隣には大、中、小の3つの蔵が並んで建っていた。件の絵画が保管されているのは、真ん中にある一番大きな蔵だ。重い扉は想像していたよりもスムーズに開いて、中身もきっちりと整理整頓されていた。暗さに目が慣れるとしだいに周囲に置いてあるものがはっきりと見えてきた。棚に収められた古い書物や巻物。キセル箱や火鉢なんかも置いてあった。

「ワォ! これは何ですか?」

デ=コポン捜査官が、木の枠にビーズが串刺しになっている道具を見つけた。ビーズはシャカシャカ音を鳴らして動く。

「昔の楽器ですか?」

「『算盤』って言います。昔、東洋の一部で使用されていた計算ツールです」

「馬弓さんくらいの世代の方でも算盤をご存じですのね」

「はい……小さい頃算盤塾に通わされていました」

現代では便利な機器が登場したとはいえ、算盤で鍛えた脳は、かなり有力なスキル持ちになるというのが祖父の持論だった。それに、もしかしたら探偵事務所じゃなくて、扇屋『あげは』に就職していたかもしれないから。

 一同はギシギシと鳴る階段を慎重に上がった。蔵の二階には、何かの箱がみっちり積み上げられていた。そんな中に額縁が数枚収納されている一角があった。空いているスペースに持ってきた『兆し』をしまうと、朔夜さんは私たちのほうへ向き直った。

「普段はここにこうして置いてありますの。他は骨董品好きだったわたくしの父が買い集めたものばかりですわ。茶器や皿をどこかから買ってきては、鑑定してもらって一喜一憂していたものです」

「二階には窓がないんですね。では、蔵の出入り口と敷地内に数台防犯カメラと警報装置を取り付けましょう」





「キヨォォォ、元気にしてたか?」

「ウッ……ギャア! グレちゃん?」

「『ギャア』とは何だ、『ギャア』とは」

「クビ、クビ絞めないで……」

丸花八家からの帰り道、突然後ろから清見刑事に飛びかかってきた女性がいた。活動的かつ小綺麗な黒のスーツに身を包んで、肩ぐらいまでの髪の毛を後ろで結わえている。楽しそうなキラキラした瞳が私たちを興味深く観察していた。

「清見さん?」

「……失礼、こちらは僕の元同期の求令武 果実(ぐれいぶ みのり)です。……墓掘り人の異名を持つ……」

「余計なことは言わない! それに元同期じゃなくて今でも同期だぞ」

「はいはい、未だに同期の求令武さんです」

「……」

「イテッ、あああ、こちらは馬弓探偵事務所の馬弓柑奈さんと、タンジェリンナ王国王室付文化財捜査官のフォーブル・デ=コポンさんです。捜査協力してもらってるんだ」

「タンジェリンナ王国王室付文化財捜査官って……T.C.P.Iのことだな。うちの部署でもこの前話題になってたぞ。文化財専門の捜査チームがあるって……ふぅん、実在するんだ」

「遠い異国の刑事さんたちに関心を持たれるなんて、光栄の至りです」

「うちにもそんな組織欲しいねって話してたところなんです。……ところでキヨたちは仕事の帰り?」

「うん、事件にまきこまれそうな家があるから話を聞きに……そういうグレちゃんは?」

「通報があってな。見たことのない大型トレーラーがずっと路上駐車していたんだそうだ。通報してきた女性によると男性4、5人がそのトレーラーで生活しているようだって。夜中に騒いだりゴミをそのあたりに放置したりもしていたようだ。現場を見に行ったが、車は立ち去った後だった。引き続きパトロールはしておこうかと……。『自分の出したゴミをそこらにポイ捨てするなんて、ワタクシこの目を疑いました。うちのミミィちゃんだってお片付けはできますのに。うちのミミィちゃんがタバコの吸い殻を食べちゃったらどうしますの? それにこの辺りは小学生の通学路です。こんなところに大型車を置いておくなんて、危険ザマす。非常識ザマす。注意してください』だってさ」

「ふぅん、グレちゃんとこも大変そうだね。厄介な人物から情報を聞き出さなきゃならないだろ?」

「いろんな人がいるからな。だが、住人の皆さんの声がダイレクトに届く部署だ。我々がしっかりやらないと警察全体の名折れになるからな。……それに、不審な集団には違いない。ささいな違和感を放置したせいで大きな脅威になってしまうことはよくある」

「その車の特徴、わかるかい? 僕たちのほうでも気にしておくよ」

「家具のイラストが描かれていたそうだ。目立つ車だからすぐに見つかるか……。見つけたらタダじゃおかないよ」

「さすが……『墓掘り人』!」

「そのあだ名はやめろって。最近はおしとやかなもんだよ。……もう行かなきゃ、じゃあなキヨ、会えてよかった。おふたりも……デ=コポン捜査官、文化財捜査についていろいろお話を聞きたいです。キヨ……わかってるね」

「はいはい、一席設けますよ」






「万田さん、もう荷物が一杯だよ」

「待ってください。これで終わりにしますから」

ここはとある骨董品市。業者も店を出しているけれど、一般の人も出店できるようになっている。私たちは窃盗団『サイドカー』をおびき出すため、闇オークションを開催することにした。今日はそのための品物を仕入れに来たのだ。

「あとは……オークション会場にする予定の場所に寄ります」

「廃業したレストランだったっけ」

「『ターボロ・スタセーラ』です。買い手が見つからずに放置されていたものを、今回短期間だけお借りすることになりました」

「『サイドカー』……来ると思う?」

「そう願います。これだけ盛大に罠を仕掛けているんですから。曰く付きの作品ばかり出品するという名目のオークションです。中でも、最大の目玉は丸花八家所有のジーク・ワッサー作品だと、噂を流しておきました。それよりも柑奈さん、今回はオークショニアになりきってもらいます。立ち居振る舞いの練習をしておいてください。闇オークションの開催といっても窃盗団をおびき出すためのフェイクですが。スタッフもサクラの客役もうちの社員で固めます。が、外部の落札希望者も少なからずやってくるでしょうからね。と言っても裏社会の情報でやってくるような連中ですが……」

「うっわ、楽しみ。ハンマーで叩く役、一度やってみたかったんだ」

「……何を叩く気ですか……」






「清見刑事、デ=コポン捜査官、今日はよろしくお願いします」

「よろしく! へぇ、ここが元レストランか……」

「元々の家具で、使えるものは残して、あとは別室に片づけました。窓や壁のレリーフなんかはそのままなのが、却って雰囲気を盛り上げるのに役立ちそうです」

前方にあるステージ上には演台と巨大なモニターが設置してある。隣の部屋は展示パネルがもうけられていて、今日のオークションに出る予定の絵が掛かっている。……そして今、本日のオークションの最後を飾る作品、丸花八家所有ジーク・ワッサー作『兆し』が搬入されてきた。

「いやぁ、すごい。丸花八さんのところで見たものそっくりに仕上がっていますね。あの人……本当に腕がいいんだ……」

過去に逮捕したことのある贋作家に協力させたそうだ。今回のオークション開催の目的は犯人グループを誘い込むことなので、体裁さえ整っていればいいのである。

「私もこのお仕事続けるのなら、もっともっとブラッシュアップしなくちゃって思います。美術の知識も身に付けたい」

「昨日の練習風景を僕も見せてもらいましたが、なかなかいい感じでしたよ」

「付け焼刃ですけどね……」

そこへ、さっきまで花の飾りつけを監督してあちこち飛び回っていた青島さんが、私を見つけて慌ててやってきた。

「みかんちゃん、何時だと思ってるの。早く身支度をなさい」

「私そろそろ行かなくちゃ……」






 オークション会場からそう離れていない路地裏に、2日前から一台のトレーラーが路上駐車していた。車体には家具のイラストがデカデカと描いてある。これこそまさしく求令武刑事が探していた車だった。そこへやって来た男がひとり、トレーラーの中の様子をうかがっていた。運転席に若い男がひとりいるだけだった。その運転手も、音楽に夢中になっているようで、外の様子には気づく気配もない。男は周囲に誰もいないことを確認してから、トレーラーの貨物室にそっと忍び込んだ。






 オークションは特にトラブルも起きず順調に進んでいた。

「皆さんお疲れでしょう? 私もしゃべりすぎでもうノドがカラカラ……皆さんのお財布がカラカラに干上がらないうちにサクサクと次へ進めましょうか。次はロットナンバー14番、豪原 満月(ごうばら みつき)作『湖畔のカラス』です。湖畔、いいですねぇ。私も今すぐここから飛んで行きたいくらいです。社長! お休みください! ついでにお給料も上げて! さて、500万円から始めましょうか。……はい、23番550万円、550万円……9番600万円、600万円……よろしいですか? はい、23番1000万円、1000万円……15番1800万円、1800万円……他におられませんか? 2200万円、2200万円……よろしいですか? ……では2200万円で23番の方が落札しました」

ハンマーをバンと叩きつけた、ちょうどその時、大地が割れんばかりの轟音が轟いた。一番前の席に座って、最初からずっと居眠りをしていたウチの社員が慌てて飛び上がった。

「……地震?」

「何かの事故かもしれませんね」

客席がざわついた。

「今日はこの町の花火大会なんですよ。盛大ですよね」

私の言葉通り、また花火の音がした。

「さあ、続けましょう。皆さんあれを待ってらっしゃる? そうですよね。もうしばらくお付き合いいただきますよ。……ロットナンバー15番……」






<花火大会が始まる少し前>

「なあ、いつまでこんなジメジメした暗いところにいなくちゃならないんだ。俺苦手なんだよね。狭い場所とミミズがさ」

「シッ! 大きな声を出すな。いいか? トレーラーの車体の下からここまで地中を掘って来たんだ。あとは絵が保管されている部屋の床を爆破するだけだ」

「そんな音立てたら見つかっちまわないか? 今オークションの真っ最中なんだろ?」

「打合せしただろうが。今日はこの当たりの花火大会だそうだ。市制100周年だとかで、100連発花火を打ちあげるんだとさ。その音に合わせてぶち抜いてやるんだよ」

「……準備できました……」

「よぉし、下がってろ」

「っひゃああ! ミ………ミミズ!」

「おい、静かにしてろって。……時間だ。3、2、1、爆破!」

しばらくして視界がクリアになると、頭上に部屋の中身が見てとれた。灯りが消えている。誰もいないのか? リーダーを先頭に3人は穴から頭を出した。その瞬間、突き刺すような明るい光に照らされた。

「やあ、モグラくんたち。待っていたよ」

そこにいたのは強力懐中電灯を構えたデ=コポン捜査官と清見刑事だった。

「戻れ! 戻れ!」

「戻っても無駄ですよ。それよりも僕たちとちょっとおしゃべりしましょうか」

この時、リーダーは中古車屋でもらった置物の猫のつぶらな瞳を思い出していた。あいつ……やっぱり捨てておくべきだったか……嫌な予感がしたんだ。

「はい……ああ……グレちゃんか。うん、こっちは済んだよ。うん、わかった。すぐそっちへ行くから。デ=コポン捜査官、トレーラーが見つかったそうですから、僕はそっちに行ってきますね」

「ええ、こっちは僕たちにまかせてください」






 求令武刑事は、逸る心を押さえきれずにいた。久しぶりの大捕物だ。だが人手が足りない。清見刑事が到着するまで待ったほうがいいだろう。

「来たか、キヨ。外から見える限りでは運転席のひとりだけだ」

「じゃあ、運転手から行こうか」

「キヨはそっちから、あたしは反対側へ回る」

「了解」

「失礼、警察の者ですが……通報がありましてね。ちょっと降りてきてもらえませんか?」

「……」

「ここに昨日からずっと停まっているそうじゃないですか。路上駐車は禁止ですよ。運転免許証を拝見できますか?」

「……うっ」

「えっ? 持ってない? じゃあとにかく車を降りて」

運転席の男は素直に車を降りた。が、清見刑事の他に人がいないのを見てとると、やみくもに走りだした。

「あっ、おい、そっちは危な……」

車体の影から飛び出してきた求令武刑事が、男の襟首をつかむとその場に組み伏せた。

「こらっ暴れるな!」

「サンキュー、グレちゃん。キミのお仲間はもう捕まったんだよ。おとなしくしなさい」

「あいつらは仲間なんかじゃない。俺は運転を頼まれただけだ。土地勘があるからな。知り合いの知り合いの知り合いから仕事の依頼を受けただけなんだ」

「うん、うん、そうだろうね。詳しい話は署で聞こうか」

「グレちゃん、その前に……」

「そうだ、荷物を見せてもらうよ。開けなさい」

「何でだよ。俺、運転席に座っていただけだ」

「最近、家具の搬送のついでに悪いお薬の取引をする集団が現れてね。まっ、念のための確認だ。気にすんな」

 荷物室の扉を開けると、男がひとり、特に悪びれる様子もなく、こちらをまっすぐに見下ろしていた。

「おっ、お前誰だ……いつのまに……」

「仲間じゃないのかい?」

「知らない!」

「両手を挙げて……こっちへ来てください」

「……武器は持っていない」

「その手に持っているのは……招き猫……ですか?」

「ああ、これはそこのテーブルに置いてあったんだ。」

「招き猫を下に置いて……やっぱりいい、持ったままでいいからこっちへ降りてきてください」

「うっ訴えてやる! 俺たちのトレーラーに勝手に入り込んだんだからな」

「あんたは黙ってな」

「警察に連れて行ってくれ。……とある情報がある」

「いいでしょう。君、名前は?」

「……芹井 瓶(せりい びん)






「本当になんとお礼を申し上げたらよいのか……」

朔夜さんの『兆し』が本物のジーク・ワッサーだと判明したのは、『サイドカー』逮捕から更に一週間ほど後だった。

「奥様、本当によろしいのですか? あなたがDNAを提出してくだされば、親子鑑定もできますよ。ワッサー氏の奥様からも許可をもらっています」

「ええ、今更知っても。母もワッサー氏も亡くなっていることですし。それにわたくし思うんですのよ。秘密のままにしておいた方がいいこともあるって」

「……そうですか。あちらにはお子さんがいないこともあって、ワッサー氏の奥様はあなたの存在に興味津々です。親子鑑定するしないに関係なく、連絡をしてみたらいかがでしょうか?」

朔夜さんが引き上げていくと、デ=コポン捜査官がいつになく神妙な面持ちで私に問いかけた。

「柑奈さん、機会があったら僕の国に来てみませんか?」

「タンジェリンナに……ですか?」

「ええ、そうです。昨日、絵画についての知識を深めたいとおっしゃっていましたね。僕の国では美術に関する教育に大変力を入れています。いろんな国からの留学生も受け入れているんですよ。それに文化財捜査のノウハウも学べます。急には決められないでしょうが、考えてみませんか」

「留学なんて思ってもみなかったけれど……」

「もちろん、日本にいても学ぶことはできます。ですが、これからも今回のような国際派の犯人はやって来るでしょう。異国の人の思考回路や手法を知ることは、探偵の仕事にとってプラスになると思いますよ。……それに……それに、僕は若いころ、樹太郎さんにお世話になりました。だから今度は僕が樹太郎さんのお孫さんの役に立ちたいのです」

「じっくり、考えてみます」

さっきからずっと、机の上の招き猫が気になっていた。

「これはどうしたんですか?」

「ああ、これ、昨日のオークション会場の受付テーブルの上に残されていたんです。どこから来たんでしょう。僕、すっかりこの子のこと気に入っちゃいました。エキゾティックでしょ? 持ち主が誰もいなかったから、引き取ることにしました」

デ=コポン捜査官は楽しそうに招き猫の頭をポンと叩いた。






『馬弓さんですか……はい、おかげさまで全員逮捕できました。それでご相談があるのですが……昨日確保した人物の中に芹井 瓶という人物がいましてね。……はい、はい……やはりご存知でしたか。ある人物の情報を持っているが、馬弓刑事と橘刑事のふたりにしか話さないと言ってるんです。お手数ですが、こちらにお越し願えますか? はい、はい』

清見刑事からの電話を受けて、私と祖父は、警視庁へ向かっていた。

「芹井って人、知っている人? あっ、もしかして昔逮捕したことがあるとか?」

「昔の事件の関係者だった……。何度か少年院に入ったりもしたようだが……てっきり今は真面目にやっとるのかと……」

とても残念そうだった。

「思い入れのある事件だったの? ずいぶん気にかけているみたいだけど」

「どの事件も皆同じくらい思い入れがあるもんだが……普段は記憶の隅に追いやっているな。だが、ふとした瞬間に思い出すんだ。ああ、あいつ、うまく生きているかな……と」

「犯罪者でも?」

「いいか、柑奈。確かにどうしようもないくらいの根っからのワルは存在する。だがな、自分の望みとは関係なく事件にまきこまれてしまうケースもあるんだよ。芹井の場合はそれだった。もちろん悪さをしたことの代償は自身で払わなければならない。理由の如何に関わらずな……だが、そこで人生は終わりではない。一度つまずいたからといって、立ち止まっていてはいかん。それに芹井は当時、まだ22歳だったからな。若い者の行く末は、このじいちゃん、とても気になるんだよ」

「ふうん、そういうもんなの」

「柑奈もどんな大人になるか、じいちゃん、とても楽しみだよ」

「……じいちゃん……」

そんな話をしていると、すぐ近くにあるオープンカフェから人々の悲鳴とガラスの割れるような音が聞こえた。

……と、思う暇もなく、私のすぐ目の前へ一台の自動車が突っ込んできた。

「柑奈!」

その瞬間、思わず目をつぶっていた。次に目を開いた時、私の身体は空を飛んでいた。……あれ、なんで……思いっきり両腕を伸ばした。でも手のひらに掴めるものは何もなかった。胸が……苦しい……呼吸ができ……な……。


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