トロンボーンを吹く少女
買い物帰り、なんとなく川辺の土手に腰を下ろしてぼんやりしていると、向こうの方から「ボーッ」という楽器の音が聞こえてくる。どうやらトロンボーンを吹いてるようだ。
学生服のその少女は吹奏楽部なのだろう、同じ曲を繰り返し練習している。
そう、この曲は確か…。
意識が急激にあの頃に還る。愉しいのか苦しいのかよく分からない、でも確かに青春であったあの熱い日々。思わず笑みがこぼれてしまう。
さて、帰るか。
家族が待つ家に帰るべく、私はすくっと立ち上がり土手をあとにした。
私の遠い日々を、沈む夕日が赤く照らしていた。