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第3課題 LADYBUG 第6問


 駒沢大学駅を過ぎ、三軒茶屋駅が近づいている。


 その間、ナナはとても入念にヴァージニアスリムを吸った。


 おそらく次の作業が極めて複雑で重要なオペレーションであり、心を落ち着かせる必要があるのだろう。

 

 フィルターすれすれまでヴァージニアスリムを吸うと、吸い殻を床に投げ捨て、右前脚で揉み消した。


 そして大事に手に提げていたレイディバッグを、足元にそっと置いた。


「いよいよ始まるんだね」


 神経を集中している彼女に、もちろん俺の声は届かない。


 ナナはレイディバッグの中からアリス鉗子、ベガール持針器、メイヨー剪刀等、次々と手術道具を取り出し、手際良くいつもの配置に並べた。


「あるべきものが、あるべき場所にある」というのは彼女なりの哲学であり、意味ある術を施す為の儀式でもある。


 そして一番しっくりくるというABraun社製のラテックスグローブを両手に装着し、一切躊躇無く視床に向かってメスで切り込みを入れ、手術を開始した。


 ちょっとくすぐったい。


 ナナによれば、ナナの神経細胞と、俺の視覚、聴覚、体性感覚を司る視床とを結合させることで、俺の動きをコントロールする事ができるんだとか。


 文系の俺にはちょっと難しい話だが、ガンダムのコックピットのようなイメージなのだろう。



 俺はすっかりナナの作業に魅了され、三軒茶屋で一般車両に乗り換える事をすっかり忘れている。


 降車する人はほとんど無い代わりに、追加で乗車してきた女性達が既存の女性陣に加わり、更に冷たさを増した視線を浴びせ続ける。


 どこかの血気盛んなおばちゃんが、何か文句を言っている。


 黙ってろ。


 今大事な所なんだ。


 そんなに血の気が多いからカリカリすんだよ。



 ヒルにでも血吸わせとけって。

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