とある転生者の失敗 その2
俺死んだ。
異世界に転生できるらしい。
転生条件を相談。 ← 今ここ
自慢じゃないが、本当に酷い人生だった。
チビ・デブ・ハゲの三重苦だけでなく、
常に汗をかいていて、体臭、口臭がキツく、
運動は苦手、頭も悪い、おまけにセンスも良くなく、貧乏。
これだけ条件が揃っていれば、異性にモテる筈も無く、
あらゆる異性に嫌われていた、と言っても過言ではなかった。
童貞のまま死ぬと知っていれば、
借金してでも、無理に休みをとってでも、
風俗に行っておけばよかったな。
勤め先がブラック企業だったので、
給料も少ないし、休日なんて無かったからな。
そんな俺だから、
神様から、転生の条件を聞かれて、
こう答えてしまったのは、仕方がないだろう?
「今までとは正反対の人生をおくりたい!」
「ほう、ここまでノータイムで答えるとは珍しい。
よかろう、かなえてやろう!」
「本当ですか!
よし、これで今度の人生は勝ち組決定だ!」
ひょっとしたら、ハーレムでウハウハとかもあるかも
あっ、そうだ、一応確認しておこう。
「あのぉ~、転生先の世界って一夫一妻制ですか?」
「うん?変なことを気にするのう
一夫多妻もあれば、一妻多夫もあるのう」
よっしゃぁ~!!
ハーレム有りじゃん。
むしろ、ハーレムルート一直線でしょう!
そうと決まれば、神様、はよ!
って、ちょっと待ったぁ~!!!
「何じゃ転生をやめるのか?」
「じゃなくて、性別!
性別だけに性反対じゃなくて、
性別だけは男のままでお願いします」
「何じゃ、次の人生は女に産まれたかった訳では無かったのじゃな」
あっ、危なかった。
もう少しで、たくさんの男共に言い寄られる人生をおくるところだった。
よく気がついた俺。
ナイスだ俺。
自分で自分を褒めまくりだ!
「では、最終確認じゃ。
性別だけは男のまま、
あとは今までとは正反対でいいんじゃな?」
「はい、それでよろ」
……………
………
……
…
失敗した。
いや、間違いなく、男には転生できた。
だが、俺は忘れていたんだ。
全てに恵まれていなかった俺に、
唯一誇れる事。
あの過酷なブラック企業の業務に耐えられる丈夫な身体。
風邪すら引いたことの無い健康な身体。
それまでも、正反対になるとどうなるか?
俺の第2の人生は、短命に終わることになりそうだ………