伝説の大魔法使い
俺死んだ。
異世界に転生できるらしい。
転生条件を相談。 ← 今ここ
自慢じゃな…いや、自慢だな。
若くして死んだしまった事を除けば、
恵まれた人生であった。
それほど真面目に勉強しなくても、
現役で東大に合格できた頭脳。
少しは、運動もしなければと軽い気持ちではじめたスポーツで、
インターハイに出場できてしまう、運動神経。
ちなみに、あまり勝ってしまうと後々面倒なので手を抜いて途中でワザと負けた。
中学・高校とモデルのバイトでそこそこ稼げたほどの、
容姿端麗、スタイル抜群。
当然、異性にモテモテ、一部同性にまでモテてしまった事は黒歴史にしている。
そんな俺なので、最初にこう言った。
「今の容姿、頭脳、運動神経等々、
とても気に入っているので、事故にあう直前のまま転生
ん、転移というべきか?
にして欲しいのだが、可能か?」
「あまり推奨はしないが、まあ、可能だのう」
「じゃあ、まずはそれで」
「まあ、本人の希望はなるべく叶えることにしているからしょうがないのう」
「もう一つぐらい希望してもいいか?」
「内容にもよるのう」
「確認しておきたいのだが、
これから俺が転生?
する世界には魔法があるんだよな?」
「うむ、普通にあるのう」
よしっ!
幼稚な夢と笑われるので、誰にも言っていなかったが、
魔法を使う事にあこがれていた。
30歳まで童貞だったら、魔法使いになれるという都市伝説を聞いた時、
何で俺はあんなに早く童貞を捨ててしまったのかと後悔したほどだ。
まあ、初体験から18年も我慢できた保証はないけどな。
しかも30歳になる前に死んでるし。
「じゃあ、その世界にある全ての魔法を使えるようにしてくれ!」
「いや、それはちょっと無理だのう」
しまった、欲張りすぎたか。
すこし条件を緩くすれば、ワンチャンないだろうか?
「じゃあ、転生直後に魔法を使えなくていいから、
全ての魔法の効果・取得方法を知っている。
とかならどうだ?」
「う~ん、まあ、それなら不可能ではないが、
本当にその条件でいいのかのう?」
「いいよ、いいよ。
頑張れば、全ての魔法を習得できるんだろう?」
「うむ、簡単な魔法ならともかく、
高度な魔法はそれなりに時間はかかるが、習得できない事はないのう。
じゃが……
「いいよ、いいよ。
それで頼むわ」
時間をかけて、やっぱりダメとなったら大変だ。
さっさと決めるに限る。
「まあ、本人がいいと言うのだから、問題ないのう」
こうして、俺はこの世界にやってきた。
元の世界の身体のままで。
早速、俺は簡単な魔法を習得した。
神様が言うとおり、簡単な魔法は直ぐに習得することができた。
直後、俺は前世?も含めて、はじめて絶望を実感することができた。
この世界で魔法を使うには、体内にマナを取り込まなければならない。
この世界に生まれた存在であれば、量・速さ・性能に差はあれど誰でもできる。
そう、この世界で産まれていれば!
この世界で産まれていないこの身体では、マナを取り込む事はできなかった。
そのマナを使わないと魔法は発動しない。
つまり俺は、常にMP0の魔法使いになってしまったのだ!!!!
この世界には
【伝説の大魔法使い】と呼ばれる魔法使いが何人かいた。
その中に、ひときわ異彩をはなつ大魔法使いがいた。
彼は大魔法使いでありながら、唯の一度も魔法を使わなかったというのだ。
後世の歴史家の中には、彼は魔法使いではないのでは?と疑うものも少なくない。、
しかし、彼の弟子に優秀な魔法使いが何人もいるので、その説は一蹴される。
弟子の中には、大魔法使いと呼ばれてもいい程の実力者もいたが、
「師匠に比べれば、私などまだまだ未熟です」
と大魔法使いを名のる弟子は一人もいなかったと言う。
余談だが、かの【伝説の大魔法使い】は弟子の魔法を何とも微妙な表情で見ていたという。
そう、弟子の成長が嬉しいという表情と、羨ましいような表情を同時にしていたとか……