やる気のない転生
今の状況を説明する。
俺死んだ。
異世界に転生できるらしい。
転生条件を相談。 ← 今ここ
なろう系読者であれば、
これで伝わるだろう。
わからない人は転生ものを読んで勉強していだだきたい。
他の作者のページに行けば、
良作がたくさんあるので、困ることはないだろう。
「まず、私は血を見るのがダメなので、
魔物を倒したりするのは無理です」
「ふむふむ。
ならば、王族か貴族になるか?
奴等ならば、魔物と戦う必要もあるまい」
「あ~、でも王様とか貴族って、
社交性がないとダメですよね。
私は人付き合いが苦手なので、
できれば、そういう煩わしいのが無い方がいいです」
「ふむ。
では、賢者にでもなって、
田舎に引きこもるか?」
「あ~、私はあまり本とか読まないんですよね。
それに家事も得意では無いから、一人で生活できるでしょうか?」
「むむ。
中々難しいのう」
「すみません、我侭ばかりで」
「いやいや、好きな条件を言えと言ったのはワシじゃからな。
おっ、そうじゃ、ドラゴンに転生するのはどうじゃ?」
「えっ?ドラゴンですか?」
「うむ、ドラゴンならば、あの世界にはドラゴンがそんなに居ないので、
人付き合い…ドラゴン付き合いの心配はいらんだろう」
「はぁ」
「普通の人間であれば、ドラゴンと戦って勝つことなどはできんし、
ドラゴンに勝てる魔物など、それこそほとんどいない。
よって、魔物と戦う必要もない」
「そうか、ドラゴンなら巣に引きこもって、
のんびり過せそうだ!
それがいいです」
「む、巣に引きこもり?
ま、まあそうだな、
お主の望み通り、のんびりは過せるだろう」
「では、ドラゴンでお願いします」
「よし、決まりじゃな」
……ここはどこだ?
真っ暗だ!
それに、何でこんなに狭いんだ?
これじゃあ、寝返りも打てないし、身体を伸ばすこともできない。
でも、暖かいし、居心地は悪くないんだよな。
とはいえ、やっぱり狭い。
どうにか、ならないか?
手を伸ばしてみる。
ピキッ!
あれ、何かが割れるような音がする。
それに、少し光が射してきたような…
もう一度手を伸ばしてみる。
ピキッ!メリメリ、ピキィ!
明らかに何か割れていく。
それとともに、明かりが…
そうか!
ここは、卵の中か!
そうだよ、俺ドラゴンになったんだ。
つまり、この調子で、卵の殻を破って外に出ればいいんだな。
中々うまく動かない手足や尻尾を使いこなし、
やっとの事で、卵から脱出した。
いや、誕生したというべきか?
生まれたばかりだからか、
まだ、目は良く見えない。
かろうじて、明るい事はわかる。
しかし、耳はしっかり働くようで、声が聞こえてくる。
「やった~!やった!やった!
無事に産まれたぞ~~!!」
野太い声だが、心の底から嬉しさが伝わってくる。
父親だろうか?
「やっと産まれてくれたわね。
なかなか孵化しないから、諦めそうになったけど、
諦めないで本当に良かったわ」
さっきの声に比べれは明らかに高い声。
冷静さを装っているが、こちらも喜びが伝わってくる。
母親だろうか?
「2人とも本当に頑張っていたからな!
無事に産まれてくれて良かった!
だが、これで終わりではないからな!
むしろ、この子を無事に育てなければならないのだから、
これから始まるとも言えるのう」
あれっ、先ほどの2人とは違う声。
声の低さから男だとは思うが……祖父とか?
「そうね、館長の言う通り、
これからが本当の始まりかもね。
ウチで産まれた、初めての赤ちゃんなんだから」
えっ!また違う声。
ハスキーな声だけど多分女性だ。
祖母?
いや、そんなに年寄りではなさそうだ。
叔母とかかな?
「でも、これで希望が見えてきましたね。
一時は本当に絶滅してしまうところでしもんね。
ドラゴン」
また、別の声って、それどころじゃない!
な~んだとぉ~
「そうだ、我々はドラゴンを絶滅させないように、この施設を建てたのだ!
各国の国王様からも、援助を取り付けた。
そして、今こうして、結果が出始めた。
だが、俺達の戦いはまだこれからだぁ~!!!!」
打ち切りか!
じゃなくて、そうかこの世界では、ドラゴンは絶滅危惧種なのか…
神様………
確かに、煩わしい人付き合いはない。
魔物と戦う必要もない。
人間に殺される心配も無い。
天敵に襲われる可能性も無い。
衣…はもともと必要ない。
食…黙っていても用意してくれる。
住…施設の中だが、十分広いし快適だ。
最高じゃないですか!!
心の底から言いたい!
ありがとう。
こうして、男は第2の人生(竜生?)を満喫したという。