14話 出陣
そして出陣の朝、郊外に近衛3千と第一師団1万、『炎と氷の傭兵団』の合計1万4千から成る『夜と月の王国』侵攻軍が集結した。
僕達姉弟三人とグレンディルは壇上に立ち、出陣式を行う。
「兵士諸君、一昨日『夜と月の王国』は我が宮殿に刺客を送り込み、私達を傀儡とせんとした!
言うまでもなくこれは許し難き暴挙であり、相応の賠償なくば軍をもって制裁を加えねばならない!
既に『夜と月の王国』に使者を送り、謝罪と賠償を要求している。
国境での会談時、こちらの要求を飲めば良し、飲まぬ場合はそのまま戦争に突入する!
諸君の奮戦を期待する!…では出陣!」
【(初級魔法)リプレイ・サウンド】で兵士全員に聞こえる様に僕は訓示を行い、出陣を告げる。
歓声の中、隊列は先頭に僕の乗る竜車、近衛3千、姉と弟が乗る竜車、グレンディル率いる1万1千の順で、せめて近衛と正規軍の間に居るように懇願されたので先頭に姉弟三人が乗る形からこの様になった。
この大陸最大のダンジョンから産出される多様な鉱石のおかげで『鉱石と闘技の国』は経済的に大陸の中でもかなり豊かであり、道路は綺麗に石畳で舗装されている。
その石畳を元に魔王領を開拓した時に活躍した【(中級魔法)ペーブメント】を使い、耐久コンクリート製の道路へと変えていく。
魔力回復量が消費魔力に比べてかなり余裕があったので、道路幅を広げて排水溝も付けて、ついでに排水溝の隣に細めの道路も付けておいた。
行軍の為に道の左右に避けている旅人や商人達が、呆けた顔で出来上がった道路を見ているのを後目に、舗装によって振動の無くなった僕の乗る竜車を先頭に軍は進んで行く。
出陣からおよそ2時間経ち、小休止を取る為に道路脇を少し舗装し、その分軍を道路からずらして竜車がすれ違える程のスペースを開けてから一旦軍を停止させた。
小休止なのであまり時間はないが、姉と弟がいる竜車の所まで【(上級魔法)飛行】で移動すると、グレンディルも竜車まで来ていた。
なお、近衛や師団の兵数には輜重兵(物資を運んだりする2線級の兵)や軍属は含まれていません。
『炎と氷の傭兵団』は竜族約200、竜人族約700、ドワーフ他約300 の合計約1000(+炎獄鳥と氷獄鳥約200)で構成されている魔大陸最強の部隊です。