13話 今回の魔道具は
雑談も終わり、スコルツの様子が気になったので、あまり時間は取れないが様子を見に行く事にし、貴人用の軟禁部屋に足を向けた。
部屋の見張りに答礼し、中に一声かけて入る。スコルツは窓際の椅子に座り、まんじりともせずに外を見ていた。
「スコルツさん、いくら身体が頑健とはいえ、瀕死にまでなったのですから休むか食べるかしないと倒れてしまいますよ」
手を付けられていない食事を見やりながら、スコルツに声を掛けるが応えはない。
あまり時間もないのでどうしたものかと思っていると、ヴァレシルが入って来て、
「お前はまだまだやる事が沢山あるだろう。ここは儂に任せて仕事に戻れ」
と言った。
確かに打ち負かされたあまり知らない相手より、それなりに面識がある相手の方がいいかもしれないので、
「ではヴァレシルさん、よろしくお願いします」
任せて執務室に戻る事にした。
◆ ◆
積み上がっていた書類を大体片付け、出兵中に使う魔道具の説明の為にイルミーナの元を訪れた。
「あら陛下、何か御用ですか?」
イルミーナの問い掛けに手に下げている包みを軽く掲げ、
「この魔道具の説明をしようと思って来たのだけど、ちょっといいかな?」
と訊いた。
「また新しい魔道具ですか?陛下は本当に色々作ってますね」
少し呆れた様子で言うイルミーナの前で包みを開き、40㎝×30㎝程のジュラルミン製の箱が2つ出て来る。
「これは《チェンジ・ボックス》と名前を付けたのだけど、ペアになっていて、片方の箱に生き物以外の物を入れてキーワードを言うと、中身がもう一つの箱と入れ替わるという魔道具だよ。
特に距離制限は無いので、遠くにいても書類や報告のやり取りが出来る様になるね。
これを片方預けますので、出兵中に裁可が必要な書類とかがあったら送ってくださいね」
と説明してから実演してみせると、
「こ、これはいいですね…我が国は直接統治にしていきますから、遠隔地とのやり取りが新しい通信球でも難しいし限界があるので、受け渡しの時刻を決めたりしておけば連絡がスムーズに出来ます。
市井に出しても需要が凄いと思いますよ。
因みに何日で1セット作れるのでしょうか?」
かなりの食いつきで訊いてきた。
「明日から出陣だから、1日1セットずつ作って行こうと思っているよ。
行軍中についでに道路整備もやる予定だから、慣れて余裕が出来たらもっと作れるかも知れないね」
「是非、是非お願いします」
初めて見た程の真剣さで、イルミーナから作製をお願いされた。