12話 魔王級は意外と…
出兵に関する業務で急増した仕事を一旦切り上げ、少会議室に僕達姉弟とクロイゼ伯父、ヴァレシルとグレンディル、ヴァレシルの腹違いの妹で、内政を取り仕切るイルミーナが集まった。
僕達が居ない間に変事が起こった場合の対処、『夜と月の王国』領内に侵攻してからの統治や降伏した者の扱いなどを話しながら食事が終わり、食後の紅茶を飲みながらひと時の休息をする。
「私が訊くのも何だけど、本当に私に留守を任せてもいいの?兄と結託して国を奪回するかも知れないわよ?」
ひと息入れてから、イルミーナが徐に口を開いた。
「ヴァレシルさんにも言いましたけど、人間族の普通の暮らしを保証して貰えるのでしたら、頭は他国と渡り合える者なら誰でもいいです」
僕が昨日と同じ様な回答をすると、
「ふーん…。まっ、私は行政に人間族が加わってやり易くなったし、あの制度の運用が始まれば更に楽になりそうだから貴方達が頭でいいわ。
何より、貴方達が私の提案を呑んでも勝ったのだから約束はちゃんと守らないとね」
イルミーナはそう言うと、再び紅茶を楽しむ。
「私は今聞いても些か信じられないのですが、あのエルダーバンパイアを捕えたのはアルベルト様が一対一で戦っての事なのですよね?」
と伯父が訊いて来たので、
「そうですよ。さすが『夜と月の王国』で一二を争うと言われているだけあって、魔王より強かったですね」
「ああ、そう言えばフレッド達はこちらに来る前に魔王と戦って降伏させたのだったな。
とは言え、こちらには魔王級はそれなりの人口の都市を探せばいる程度だから、基準を上げた方が良かろう」
そうヴァレシルが言ったので、
「確かにそうですね。この部屋の中だけでも伯父上以外は全員魔王より強いのですから…
今度からヴァレシルさんとグレンディルさん基準で考えましょう」
微笑んでそう返した。
それを聞いたグレンディルは、
「いやいや、私などまだまだ若輩ですよ」
と謙遜したが、ヴァレシルは、
「お前が若輩なら13と11と10歳のコイツらはどうなる?
前から言ってるが、お前はもうちょっと自分に自信を持て…同世代の竜共では間違いなくお前が抜きん出た存在だ。
ファーブニルの曾孫という事を抜きにして、
儂はそう思ってるからな」
(と言っても、なかなか聞いてくれないのだが…)と思いながら言った。