表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ずきん無しのレイチェル

作者: ふるか162号

ずっと、執筆中の小説の中にあったので書き上げてみました。

元々は連載用に考えていたのでプロローグだけです。


 私、赤ずきんちゃん。

 オオカミと呼ばれる魔物を狩っているの。


 え?


 赤ずきんちゃんはオオカミに食べられる?

 馬鹿言わないでよ。

 オオカミは……狩るモノ(・・・・)でしょう?



 私は赤ずきん。

 ……この世からすべてのオオカミを駆逐してあげるわ。


 二十年後……。


 私は赤ずきんちゃん。

 お母さんは伝説のオオカミハンターと呼ばれた初代赤ずきんちゃん。

 お母さんみたいに私には鍛え抜かれた肉体も剛腕も無いから、銃火器を使ってオオカミを駆逐するわ……。

 私……は赤ずきんちゃん。

 最強の赤いずきんを被った赤ずきんちゃんよ。


 

 さらに二十年後。



 ハンター頭巾。

 オオカミと呼ばれる異形の魔物を狩るハンター。

 それぞれが、それぞれの色や形の頭巾をかぶり、オオカミを駆逐するのがお仕事。

 その中でも、最強にして伝説とまで言われる色……それが赤ずきん。

 


 私の名前はレイチェル。十五歳の女の子。

 お婆ちゃんはオオカミハンターとして名を馳せた有名な赤ずきん。

 お母さんも赤ずきんを被り、銃火器を駆使して赤ずきんの名にふさわしい活躍を見せた。


 そして……私は……。


 赤ずきんじゃない。

 私は赤ずきんを被らない。


「お母さん。私は赤ずきんにはならない」

「れ、レイチェル。何を言っているの? 赤ずきんは代々受け継がれているずきんなのよ」

「お母さんが何を言おうと私は嫌だ」


 私は家を飛び出す。

 ハンターなんて危険なお仕事に付きたくない。


「ねぇ、ヒサメ。どうしてこの世界にはオオカミがいるんだろうね」

「くぅーん」


 この子は私の友達のヒサメ。

 少し大きな犬なんだ。


 この世界にはオオカミと言う異形の魔物が存在する。

 私のお母さんも、おばあちゃんもそんなオオカミを狩るハンター頭巾だった。

 特におばあちゃんは伝説のハンター頭巾、赤ずきんだった……。


「くーん」

「うん。そうだね。私達はハンターとは無縁で生きていこうね」


 私は赤ずきんが大嫌い。

 ハンターなんて怖い仕事なんてしたくもない。

 

「あおーん」

「ふふっ」

「レイチェル!」


 この声は、私の幼馴染のティルだ。

 ティルはハンター頭巾をサポートする役目を持つ、サポーターの家系で、おばあちゃんとお母さんのサポートを、ティルのおばあちゃんとお母さんが務めていた。


「あれ? ティル。どうしたの?」

「今日もヒサメと一緒にいたんだね」

「うん。お母さんが赤ずきんになれってうるさくてね。この場所は好きなんだよ」


 ここは、村から少し離れた丘。

 ここからは海が見えるんだ。


「はは。レイチェルのおばあちゃんは最強のハンター頭巾だったからね……」


 ティルのお母さん達も、赤ずきんに関わって来ていたから、おばあちゃんを神格化している。


「はは……。そもそも、最強なのはお婆ちゃんだけであって、二代目であるお母さんも、怪我が理由で早くに引退しているからね」

「それでも、レイチェルのおばあちゃんとお母さんもこの村では英雄なんだよ」


 ……英雄ね。


「はは。私は赤ずきんにはなれないよ。強くもないし……」

「でも、レイチェルの剣の先生は、レイチェルにも才能はあるって言っていたよ」


 才能なんてないよ……。

 だって、オオカミを見たら……怖いんだよ。足が震えるんだよ。泣きそうになるんだよ。


「本当は剣も使いたくないんだよ……」


 私は、少し俯く。

 ティルはそんな私の手を握ってくれる。


「レイチェル……、別にハンター頭巾が嫌なら、私が守ってあげるよ。だから、帰ろうか」

「うん……」


 ティルはいつも私を励ましてくれる。

 自分も女の子なのに……。


 私達は、村に向かって歩き出す。

 あれ?

 村の方角から煙?


「あれ? 村から……煙が!?」

「私が見てくるよ」


 ティルは、急いで走り出す。


「私も行くよ」

「私一人で大丈夫だよ。おばさんから教えて貰った射撃があるから、ゆっくり帰って来て。きっと、どこかで火事があっただけだろうから」


 ティルはそう言って、笑いながら、手を上げて走って行った。

 私はヒサメに指示を出す。


「ヒサメも一緒についていってあげて」

「あおーん」


 ヒサメはティルに向かって駆けていった。

 私は足が遅いけど急いで村に向かう。

 ティルとヒサメはもう見えない。ティルは才能にあふれているから、身体能力が高い。


 しばらくすると、村に到着する。

 村の入り口には、傷ついたヒサメがいた。

 ……え?


「く、くぅーん」

「ヒサメ!? その傷はなに!?」


 これは何かに噛みつかれた後?

 もしかしてオオカミ!?


「ヒサメはここにいて!」

「くぅーん」


 私はヒサメをその場に休ませ、急いで村に入る。

 そして、私の眼に……。


「てぃ、ティル?」


 巨大なオオカミに食べられている、ティルがいた……。

 え?

 な、なんで?


 てぃ、ティル?


「ティル!!」


 返事がない。

 も、もう死んでいるの!?


 嫌だ!!


「ティル!!」


 私は剣を抜いて、オオカミに斬りかかろうとするけど、その時足を掴まれた。


「え?」

「れ、レイチェル。に、逃げなさい……」


 私の足を掴んでいたのは、血塗れのお母さんだった……。


「お、お母さん!?」

「静かに……。突然、オオカミが襲ってきたの……」

「お母さん。ティルが……」

「ぐぁおおおおおおおん!!」


 オオカミがこっちに気付いた。

 くそっ。


「オオカミが来るわ。ティルにも、逃げて貰おうと思ったけど……逃がせなかった……。だから、貴女だけでも逃げて……」

「お、お母さんも!」

「ふふっ。お、お母さんはもう駄目よ……」

 

 血塗れのお母さんは、もう下半身がなかった……。

 オオカミに喰われたんだ。


「嫌だ!」


 目の前にオオカミが迫る。


「ま、待っ……。レイチェル。に、にげな…」


 ……え?


 突然、後ろから何かに喰らい付く音がした。

 どういうこ……、お、おかあ……さん?


 そこにはもうお母さんはいなかった……。


 私の目の前にはティルを喰ったオオカミ……。

 後ろにはお母さんを喰ったオオカミ……。


「あ……。い、いや……。あぁああああああ!!」


 許さない。

 オオカミなんて許さない。


 私は剣を強く握る。


 殺してやる。

 殺し尽くしてやる。


 私はオオカミの首を斬り付ける。そして、後ろからくるオオカミも斬り刻む。


 ……。

 いる。

 二匹じゃない。

 まだ、いたのか!!

 殺してやる……。


「殺す」


 私はオオカミを殺す。


「殺す」


 オオカミを斬る。


「殺し尽くしてやる」


 オオカミを斬り刻む。


「お前等オオカミは私が一匹残らず殺してやる」


 私はオオカミを斬り続けた。

 そして……。



 朝日だ……。


 私は一晩中オオカミと戦っていたみたいだ……。

 私の周りには、斬り刻まれたオオカミの死骸が転がっていた。

 

 そして……、私の村は……。

 私を残して全滅した。


「みんなの……お墓……。作らなきゃ……」


 私は村のみんなのお墓を前に誓う。

 手には、お母さんの血で染まった頭巾を握りしめる。

 

 伝説の赤ずきん……。

 何が伝説だ……。


 私はこんなモノを被らない……。


「私は赤ずきんを名乗らない……。でも、オオカミは一匹残らず斬り刻んでやる」


 私は赤ずきんを首に巻く。

 その時……。


「くぅーん」

「ヒサメ。傷は大丈夫なの?」

「くぅーん」


 ヒサメは、私の足元で座っている。


「ヒサメ。ここでお別れだよ……。私はこれからオオカミの血に染まっていくから……」

「わん!」


 ヒサメは私の足にすり寄ってくる。

 まるで付いてきてくれるみたいな目で私を見つめる。


「ついて来てくれるの?」

「わん!」


 ヒサメは嬉しそうに鳴く。

 みんなが死んで一人になったと思ったけど、違うよね……。

 本当は、ヒサメには血塗れになる私みたいじゃなくて、幸せに生きてほしいけど……。


「ごめんね……。私と一緒に血に染まってくれる?「わん!!」……ありがとうね。じゃあ、一緒に行こう」




 私は……三代目赤ずきん……。


 違う!!


 私は……。ずきん無しのレイチェル。

 オオカミを全て駆逐する者……。


 必ずオオカミを滅ぼしてやる……。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] オオカミども…きっと貴様らにも何かしら重い理由や背景があるのだろう、赤ずきんが狼を狩るという奇妙なねじれにもなにかが隠されているのでしょう。 だが関係ない。尊い百合の邪魔をしたな?貴様らは…
[気になる点] 赤ずきん……ヴァンパイアハンター?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ