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『七行詩集』

七行詩 651.~660.

作者: s.h.n

『七行詩』


651.


もしも貴方が 一人で旅に出るならば


私も同じく 旅に出ます


別々の道で 見たことを いつか話せるように


そこで たくさんの出会いに恵まれたら


傍に居られない 私の代わりに


その出会いに 包まれていてください


いつの日も 孤独を感じることはないように



652.


懐中電灯 空に向けた


この光は どの辺りまで届くだろう


息が続くまで 歌ってみた


この声は どの辺りまで響くだろう


夜は全てを包むように


全てを吸い込むように 広がり


その夜を私は吸い込んで 再び歌い始めた



653.


口にすれば 届いたことも 届かぬことも


直接 確かめられるのに


私はどうして怖がったのでしょう


壊れてしまうなら そこまでのものだというだけで


信じられるなら ぶつかれば良かった


貴方は 崩れた心の瓦礫の中で


進むための力をくれました



654.


紅葉は 大事なあの人の


繋げなかった 手のひらのような形をして


それらが足元を吹き抜けていくと


出会いはその一枚に過ぎず 流れ去ったと知らされる


全てが等しく 年を取るのに


街は賑わい 新たな色に塗り変わる


私は煤けた自らの色に 鈍く染まってゆく



655.


貴方が駆け抜けた季節は


とても大切なものでしょう


貴方がその場所に立った日から


記念すべき今日この日までの


私達の知らない 貴方の宝を見せてください


そこに居合わせ 祝福できたことに


誰もが喜び 拍手を止めることはできなかった



656.


美しい思い出がありました


それは貴方が手掛けてくれたもので


私のための 宝でもありました


ほんの気まぐれが 私を動かし


それ以上 与えられるものはないと


去った後でさえ 私に残してくれたものがある


この先 全ての季節が それを礎に重なるでしょう



657.


君が目を覚ませば


落ちていく日々に 私はいますか


君が目を閉じれば


落ちていく夢に 私はいますか


もしも二人がここに居ないなら


別の世界で巡り会えたらいいね、と


枕元に 話しかけている



658.


鉛筆の芯を 削る音はもう聞こえない


この部屋に残ったものは


弦を揺らす音 秒針が足を進める音


真っ白な紙は 日焼けするのを待つだけでしょうか


真っ白な私は 自らに色をつけ始めた


それらが混ざり 黒く染まるまでの過程は


かけがえのない 挫折や小さな栄光の記録となる



659.


星空と向き合う私達もまた


地上の人々に紛れた 星のひとつです


この羽は 貴方が私に落としていった


どこまでも貴方を追うように


その頃貴方は 既にそこには居ないのに


どうしても混ざり合わないものが


夜には星を輝かせ 孤独にするのです



660.


雨はもうすぐ上がるでしょう


過ぎる季節の袖をつかんで


引き留めることはできないから


起こったことは そのままの形で


アルバムに飾りましょう


この先こんなにたくさんのことが


起こる季節はないでしょう




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