26.いつまで誤魔化せるのかな……
──もっと君のことを聞かせてくれ……
どうやって誤魔化そうか、或いは本当のことを話すべきか、話すのならどこまで話していいのか、考えていると、おバカの証明か、疲労からか、知恵熱出て来た気がする……
「慣れない魔道に酔ったか? 少し熱が出て来たようだな、今日はゆっくり休め」
私の前髪を払うように頭部を撫でる。昔お父さんがしてくれた感じに似てるかな。
ふふっ……
つい、笑いがもれた。今後の身の振り方や進退に関わる、重大な問題を決めようとしている時だって言うのに、私は、難しい事を考えたりずっと緊張感を持ち続けるのは無理みたいだネ。
でも、もう少し、言葉が通じなくてポヤーンとした不思議ちゃんな子供っぽい謎のオバチャンで居たかったかも……
そりゃ、ルーシェさんにお膝の上でお食事タイムされたり、お父さん抱っこで移動するのはいたたまれないし平常心どっか行くし、反応に困るけど、大切にされてる感じは、向こうではついぞ味わえなかった感覚だ。
多分、物心ついた頃はお父さんに似たようにされてはいたはずだけど覚えてない(写真はいっぱいある)し、日本人だもん、ちゅーはなかっただろう。たぶん。
折に触れぽっペちゅ~やデコちゅーも恥ずかしいけど、向こうの西洋風に似た生活習慣なら、そういうもんだと諦めるしかないのかな……
不思議と、恥ずかしいし居たたまれない感は困るけど、嫌ではない。
貞操の危機に助けに入ってくれた、いわゆる物語のヒーロー的な出逢いが好印象で、お貴族様としての洗練された身のこなしや態度に嫌味がないのもポイント高いのだろう。
これで私が物語のヒロインなら惚れちゃうコースだね。残念ながら、青年貴族と中年、それも初老にさしかかる年増オバチャンではロマンスも生まれないけど。
歳の差、約20歳だよ(笑) 人一人成人する時間が流れるくらいの差。ちょっと早めに結婚した人で考えれば、親子ほど違うんだ……
そんな、あり得ないロマンスを、例え話でも、考える自分が恥ずかしくなる。
高校中退して子供を産んじゃうくらい恋愛に生きた同級生も2人居る。彼女らの息子と同い年か、更に年下かもしれないルーシェさん。
友人の息子と恋愛? あり得ないでしょ。
顔を隠したくて、毛布を口元まで引き上げる。
恥ずかしすぎて、なさけなさ過ぎて、友人達の事を思い出して寂しくて、子供扱いを不満に思いながらも大切にされる心地よさを感じていたい我が儘に呆れて、複雑な感情に涙が滲んでくる。
「私はもう行くが、なるべく早く帰るから……○∇※★*※⭐︎(以下略)」
え? あ、あれ? また、言葉が判らなくなっちゃった?
ルーシェさんはそれこそお父さんみたいに、慈愛の目で見下ろしながら、デコちゅーしてくれて、頰を手の甲でペしぺしすると部屋を出て行った。
ほっぺはカ~ッと熱いが、おでこの知恵熱はなくなっていた。デコちゅーは、子供を宥める手段ではなく、熱を吸い取る回復魔法だったんだ……
知らない出会ったばかりの子供(と思っているけど実は年増)にも優しいルーシェさんに感謝しながら、目を閉じた。
───── ◆ ◆ ◆ ───────
夢を見た。あちらで、お仕事中に高校の友人が買い物に来てて、子供を連れてる。
その友人は、高校中退して結婚し、子育てを関西でしてるはずだ。東京の職場に来るのはおかしいのに、普通に相手する。
子供は、中学生になるかどうかの男の子。
本当なら、もう30歳だよ? でも、夢の中では子供だった。
その子が、あーちゃんをお嫁にしたげるから、早く雪豹の子供を産んでくれって迫ってきて、無理でしょうと答えたら、急に大人になって私をお父さん抱っこで抱き上げる。
「あーちゃんが、子供を産むまで、歩かせないよ」
だから、それは無理。雪豹の子供をって言うのも勿論、私はオバチャンで子供を生むのは無理なの。言って聞かせると、にっこり笑ってほっぺちゅ~をして、
「私が言うのだから大丈夫、子供を産むまで、返さないよ?」
えっ? なんでルーシェさんが東京に居るの?
「トウキョー? 何を言ってるんだ、ここは、エリキシエルアルガッフェイル公爵領の私の屋敷だ」
「…っ! うっわはぁ~!?」
毛布をはねのける勢いで飛び起きた。
ものすっごい寝汗をかいてる。
変な夢見たなぁ……
なんかの暗示か願望が出てる……って事はないよね?
「ヴァニラ、ルッティンモリアン◆*◇**※」
天蓋の幕を開いて、ルーティーシャさんとマーサさんが入ってくる。
私を気遣うようになにかを言ってくれるけど、やはり解らなかった。




