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異世界ってやっぱり異国よりも言葉が通じないよね!?  作者: 月媛(*'―'*)♪
優しい大きな人達に、子供扱いされる私は中年女
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14.公爵邸 四日目──平穏すぎて怖くなる。


 おやすみの時にも、目覚めた後のおはようにも、公爵様は現れなかった。朝食にも。

 たぶん、昨夜はお帰りにならなかったのだろう。

 朝の身支度の間、こっそり目だけでまわりを覗ってるの、たぶん皆さんにはバレてるんだろうなぁ。

 これ以上は挙動不審に思われるからやめとこう。


 大人しく身支度されて、ルーテーショアさんに手を引かれて、階段を下り、食堂で着席しても、当主を待たずに食事が始まったので、やはり昨夜は帰らなかったらしい。

 これが普通なのか、たまたま昨夜は夜勤だったのか判らないが、使用人にも、お母様やルーテーシュアさんにも焦りや動揺は感じられなかったので、事件性や問題はないのだろう。


 午前中は図書室で絵本を眺めて単語を復習(やはり半分以上覚えてなかった。ここまで来ると呪いか逆チート説も検討せねば)し、午後はお庭でのんびりとお花を眺めてた。

 昨日延々とお花の絵を描いたので、お花好きと思われたのかもしれない。


 お貴族様の(先代の)奥方なのに、お母様は、ハーブやお花の世話に余念がなかった。

 ふんわりとしたつるつるのよさげな生地の、キュロットを足首で留めて、ちゃんと足は隠されていらっしゃる。

 上衣も、フリルこそついてるものの、生地は良さげだがシンプルな、ゆったりした袖のブラウスを着てらっしゃるのが、男装し切れてないオスカルのようだ。


 優雅な手つきで、不思議とさくさく作業が進む。もしかしたら、魔術を使ってるのかもしれない。


 それらの作業を日が沈みかける頃まで、ルーテーシアさんと共に眺めてた。

 私は飽きないけど、ルーテーショアさんもよく付き合うなぁ。

 もしかしたら、私の監視も兼ねてるのかもしれないけど。



 私の母や母の山野草友達の事を思ったら驚くほどの仕事量で、お母様は、広い庭園を手入れしていった。

 さほど汗もかかず(魔術で体温調節してるのかな)に、爽やか~に作業を終えられ、キラキラと浄化魔法で綺麗になってお屋敷に戻り、優雅な奥様に戻って夕飯に参加する。


 この日は、パエリアに似た、肉と野菜と押し麦に似た穀物を煮込んだ物がメインに出て来た。

 見た目は似てるけど、私が鶏と思ってる肉が入ってて、魚や貝に見える物が入ってないし、汁は結構残ってる。サフランで色づけじゃなくて、野菜の色のようだし。

 しかも、味はトマト煮込みに似てる。もしかしたら、本当にトマトかな? イタリア人と日本人には馴染みやすい味かもね。うまうま♪


 すっかりおなじみになったベリーが主のデザートをいただくと、

「ご馳走様でした」

合掌して椅子から立ち上がる。椅子も大きいので、座ったままだと足が床に届かず、やや飛び降りるに近い。


 はぁ、この後、また、メイドさんに見られながら入浴かぁ。これには全く慣れませんねぇ。

 スーパー銭湯とかよく行ってたから、開放感や人が居ることにはやや慣れてたけど、ただメイドさんが見てるだけっていうのは、忘れたはずの羞恥心バリバリ帰ってくるから。


 バスタブに入るために、昨日から、踏み台が置かれている。コレも、漫画で頼んだ物だ。

 自分で出来る事は自分でやる。私には日本での日常でも、こちらのお貴族様から考えると異様なのかもしれない。誰かが手を貸そうとして、少し手が伸びる。その度に「大丈夫ですから!」と手を伸ばして押し止めなくてはならない。

 みなさん、過保護なのか、私が危なっかしいのか信用ないのか……

 最初は縁に摑まって体を温める。時々、リスや小鳥の彫刻を撫でて和む。ずっとプールで縁にくっついてるみたいなままだと、腕と腰が怠くなるしリラックス出来ないので、また微妙に弾力のある真珠色の玉にしがみつきながら、肩まで沈む。

 ここで、閃いた。この人達は、魔法で水を増やしたり減らしたりするんだから、水嵩を減らしてもらえば、自室の浴槽で溺れる心配もないやん?

 メイドさんの中で、いつもお湯加減を調節してくれる黄緑の髪のお姉さんに、身振り手振りで伝えてみる。

 水面スレスレで手を横に振り、下に下げる。

 解ってくれたみたいで、呪文を小さく呟くと、湯量を少なくしてくれた。

 おかげで、真珠色の玉を滑らせて水面で回したり遊びながら座る事が出来た。


 髪を洗って貰ってる間、目を瞑って考える。


 ──言葉が通じないから漫画だけでは難しいけど、なんとかコミュニケーションとる方法はある。

 文化の違いからちょっとした意味の取り違えもあるかもだけど、ここの人達はみんないい人だから、今の所そこまで酷い事にはならなさそう。

 ジュードさんの言うとおり、ここの人達はみんな子供を大切にするのだろう。子供扱いには思うところもあるけれど、身の為になら我慢できないほどの事でもないし。


 だけど、いつまでもこうして子供のふりしてる訳にもいかないだろう。


 言葉が中々覚えられないのは痛い。発音が正しく出来ないし、そこで引いちゃう日本人の哀しさが浮き彫りとか言ってる場合じゃない。……のに、本当に覚えられないのは、ローマ字が頭に染みないのと同じ原理なんかな。

 気にした事なかったけど、ローマ字カタカナ数字限定で軽度のディスレクシア(難読症)なのかも?


 もしそうなら、今後もあまり語学は期待できないなぁ。そうなると、私はどうしたらいいんだろう。言葉は通じないまま、いずれここを出て……本当なら、今頃ジュードさんと王都へ行って、出世払いで自由民株を買って、一緒に冒険者するはずだったんだよね。

 言葉が通じないまま、漫画と身振り手振りでなんとかやっていけるかな。騙されたりしないかな。

 このままじゃいつまでたっても、ジュードさんを開放してもらうところまでこぎ着けられないよ。


 そこまで考えて、また久し振りに、人前で涙がホロリと零れる。

「こ、コレは汗です。涙じゃないですよ、汗ですからね」

 通じないとは思ってもつい言い訳してしまう。

 でも、メイドさんの1人が気を利かせてルーティーシャさんに伝えてしまったらしい。

 もしかしたら、考え込んでるうちに話しかけられてるの気づかずにスルーしてて、心配させちゃってて、その時点で呼んでたのかも。

 理解できない言葉は音楽と変わらなくて、ついつい聞き流しちゃいがちなのだ。


「ヴァニラ、ルファイエル、ヴィア(以下略)」

 ルーティーシャさんが困った顔で浴槽に近づき、濡れた私の頭を抱える。


 ──あ、これ、アカンやつや。よけいに泣けてくるやつや。


 結局、頑張っても無駄で、ルーティーシャさんのゆさゆさお胸に挟まれて、メイドさんも増えて5人フルで見てるのに泣いてしまった……



次回 第2章 15話

公爵邸 5日目──どうしたら、事態は進展するの?

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