◆四月七日
十年前に起こった火災事故。その鮮烈な出来事が少女たちの運命を変えていった――
□このページでは、物語の始まり、根幹でもある“十年前の火災事故”の詳細についてです。
◇十年前、その“事故”は地方都市の商業施設で起こった。
・四月七日、土曜日。その日は入学式を間近に控えた未就学の子供とその家族、またフードコートでは当時人気を博した戦隊物のヒーローショーも行われていた為に商業施設は大いに賑わっていた。
だが、ささやかな幸せは長くは続かず――商業施設は瞬く間に炎の海となる。
死者・十名、負傷者・百八名というこの平和な日本において類を見ない甚大な被害を生み出したこの事故は“未曾有の火災事故”と呼ばれ、人々の関心を誘ったのだった。
・原因は極めて単純なものだった。
スプリンクラーをはじめとした消火設備が点検時の見落としでうまく作動しなかった事。
避難経路の確保を管理者側が怠っていた事。
設備の老朽化により火の周りが早かった事……
不幸な偶然がいくつも積み重なって起こった不慮の事故だった。
◇犠牲となった十名はほとんどが三十以下、その半数近くが未就学の子供であった。
前述の通り、未就学の子供連れの客が多かったことで、避難時に混乱が起きた事も被害の拡大に繋がってしまったのだ。
◇被害者一覧は以下の通りである。(括弧内は没時年齢)
・吾妻 美雪(22)
未就学の子とヒーローショーを見た帰り、食事を取ろうとした矢先に巻き込まれた。
フードコート内のモニュメントとして飾られていた石膏像の下敷きになる形で遺体は発見され、子供はそのそばで意識不明の重体で発見されたが、一命を取り留めた。
・大宮 晃太(33)
鈴音(33)
桔子(6)
小学校入学を控えた子供達を連れ、家族で買い物に来ていた際に事故に巻き込まれた。
夫は妻を守るようにして抱きしめた形で、娘の桔子ははぐれたのか両親とは離れた通路側で遺体となり発見された。
・桐生 亜里沙(28)
海翔(3)
りく(6)
未就学の子供含む一家全員でヒーローショーを見に来た際に巻き込まれた。
弟と手を繋いだままの姉はフードコート近くで、母はその少し先で遺体となり発見された。
・久世 春美(34)
一人で買い物に来ていた際に巻き込まれた様子。
未就学の子の母であったが、子供は家にいたらしく無事であった。
・林 今日子(59)
犠牲者の中では最年長。この商業施設の清掃業務に従事中巻き込まれた。
従業員専用の控室で遺体となり発見された。
・箕島 百花(31)
一人で買い物に来ていた際に巻き込まれた様子。
乳幼児を連れており、子供を庇う形で遺体は発見された。
※子供は一命を取り留めた。