子殺し
××警察署は、××区××に住む×藤A子容疑者を連続殺人容疑で逮捕しました。調べに対し、A子容疑者は、容疑を否認しているとの事です。
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「終わったよ」
逮捕される数週間前、A子は息子の遺影に手を合わせ、そう報告した。
彼女の息子は、数ヶ月前に殺されたのだった。
A子は、現場から逃げ去る三人の少年を目撃したが、警察には言わなかった。
自らの手で、復讐する為に。
『まだ終わってないでしょう? 息子は、もっと殺して欲しがっている』
隣に立つ誰かがそんな事を言った。
自宅には自分しかいない筈なのだから、普通なら驚いて確認するだろう。
しかし、A子は疑問にも思わず、其方を見る事も無く答えた。
「あの子は、そんな子じゃない!」
侮辱するなとA子は憤る。
『殺されるまではね。それが解っていたから、彼等の家族まで殺したんでしょう?』
「違う! あの子が喜ぶなんて、思ってない!」
『目撃者まで殺したのに?』
「それは、捕まりたくなかったから!」
『嘘ばっかり。そんな事、全然思っていないじゃない』
謎の女の言う通りだったので、A子は黙り込んだ。
目撃されたのは、三人目を殺した後だ。
見られたと気付いた時に、もう捕まっても構わないと思っていたのに。
「そうね。私は殺した。でも……それは、あの子が望んでいると思ったからじゃない! 私が殺したかっただけ! そう! 私が殺したかっただけなのよ!」
霧が晴れたような思いだった。
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数ヶ月前にA子容疑者の息子も何者かに殺害されており、警察は、連続殺人事件の最初の被害者と見て捜査を進める方針です。
以上、お昼のニュースでした。