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愚者の復讐  作者: 加賀谷一縷
第三章
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九十六話 闇属性魔法教室:実践編②

 ナイフが掠めた細い切り傷から血が流れる。

 血が肌を舐める感覚がたまらなく不快であった。

 逆の手で拭うもまたすぐに溢れ出る。

 仕方なしに続行しようとしたとき、ラーシャが声をかける。


「あの、治しましょうか?」


 治してもらえるのはありがたいが、はたしてレノーレのOKサインは出るのか。


「……」


 無言ながらに頷いている。

 OK出ました!ありがとうございました。

 でもロイには一つの思いがあった。


「いや、遠慮しておくよ。これが終わったらよろしく頼む」

「はい、わかりました」


 これは自分が成長するために戦っているんだと。

 いつでも助けてもらえるわけではない。

 魔法も覚えつつ、戦闘の経験も増やしていけばより強くなれる。

 一石二鳥だね!


「レノーレってホントにこんな奴に負けたのー?」

「……黙って戦え」

「えー、よくわかんない武器だからって油断してたのかなー?」

「お前に事前に情報出しとくんじゃなかった」


 このままではレノーレの顔が立たない。

 頑張ってザミーラとかいう奴を倒すか。


焼き尽くす焔フランメアオフローダーン


 これでどう動くか。


電子の盾エレクトロンシルト


 ザミーラの前にそれは展開された。

 微かに黄色い、盾というよりかは膜のようだ。

 よく見るとところどころが光っている。

 黄色い正体だ。

 炎はそれに阻まれ、ザミーラの元まで攻撃が届くことはなかった。


「雷か」


 雷属性はアリアスの得意属性であったことを思い出す。

 あっ、違う、アリアスの得意属性は雷じゃなくて風だった。

 ほぼすべての属性を簡単に使いこなすため時々混乱してしまう。

 あれには随分と助けられたと思いにふける。

 が、そんな悠長なことをしている暇はない。

 対策だ。

 まず雷属性の攻撃には線雷槍タオゼントドンナーシュペーアがあげられる。

 他は……よし、あんまりないな。

 とにかく属性はわかった。

 

「へっ、どう?ワタシの壁は?」

「いいんじゃないか、壊すけど」

「はぁ!?」


 銃を構える。

 ロイは魔法は得意ではない。

 使える属性も炎と、使えるといえるかわからない闇だ。

 それでもここまでこれたのには運だけではない。

 銃があったからだ。

 クロエを呼び出し、意を伝える。


「雷の苦手は……」

「土ね」

「じゃそれを打ち込めばいいか」

「できんの?」


 さあ、と答える。

 正直で、できるかは微妙だが、これは模擬戦だ。


「やってみる価値はある」

「ならやれば?あたしは賛成してあげるわ」

「ありがとな」


 未だ展開されている盾を破る方法はこれしかない。


「ほら、食らえ!」


 赤い魔法陣に、茶色の弾が飛んでいく。

 属性によって色が違う。

 それはザミーラにも伝わった。

 それを理解したうえで、待ち構えていた。

 いほど自分の盾に自信があるらしい。

 弾が盾と接触する。


「あら、意外とやるもんね。でも……」


 弾完全に止められ、威力も弱くなって尽きかけていた。


ざんね~ん……ってあれ?」


 ザミーラの少し前方にいるロイは笑っていた。


「ほら、よく言うだろ?確信したときが一番の慢心だって」


 ザミーラはすぐに行動した。

 攻撃は終わってはいなかった。

 だから自分が誇る速さで対応を試みた。


「後ろからなんて卑怯だぞ~!」


 瞬間、爆風が辺りを包んだ。

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