九十六話 闇属性魔法教室:実践編②
ナイフが掠めた細い切り傷から血が流れる。
血が肌を舐める感覚がたまらなく不快であった。
逆の手で拭うもまたすぐに溢れ出る。
仕方なしに続行しようとしたとき、ラーシャが声をかける。
「あの、治しましょうか?」
治してもらえるのはありがたいが、はたしてレノーレのOKサインは出るのか。
「……」
無言ながらに頷いている。
OK出ました!ありがとうございました。
でもロイには一つの思いがあった。
「いや、遠慮しておくよ。これが終わったらよろしく頼む」
「はい、わかりました」
これは自分が成長するために戦っているんだと。
いつでも助けてもらえるわけではない。
魔法も覚えつつ、戦闘の経験も増やしていけばより強くなれる。
一石二鳥だね!
「レノーレってホントにこんな奴に負けたのー?」
「……黙って戦え」
「えー、よくわかんない武器だからって油断してたのかなー?」
「お前に事前に情報出しとくんじゃなかった」
このままではレノーレの顔が立たない。
頑張ってザミーラとかいう奴を倒すか。
「焼き尽くす焔」
これでどう動くか。
「電子の盾」
ザミーラの前にそれは展開された。
微かに黄色い、盾というよりかは膜のようだ。
よく見るとところどころが光っている。
黄色い正体だ。
炎はそれに阻まれ、ザミーラの元まで攻撃が届くことはなかった。
「雷か」
雷属性はアリアスの得意属性であったことを思い出す。
あっ、違う、アリアスの得意属性は雷じゃなくて風だった。
ほぼすべての属性を簡単に使いこなすため時々混乱してしまう。
あれには随分と助けられたと思いにふける。
が、そんな悠長なことをしている暇はない。
対策だ。
まず雷属性の攻撃には線雷槍があげられる。
他は……よし、あんまりないな。
とにかく属性はわかった。
「へっ、どう?ワタシの壁は?」
「いいんじゃないか、壊すけど」
「はぁ!?」
銃を構える。
ロイは魔法は得意ではない。
使える属性も炎と、使えるといえるかわからない闇だ。
それでもここまでこれたのには運だけではない。
銃があったからだ。
クロエを呼び出し、意を伝える。
「雷の苦手は……」
「土ね」
「じゃそれを打ち込めばいいか」
「できんの?」
さあ、と答える。
正直で、できるかは微妙だが、これは模擬戦だ。
「やってみる価値はある」
「ならやれば?あたしは賛成してあげるわ」
「ありがとな」
未だ展開されている盾を破る方法はこれしかない。
「ほら、食らえ!」
赤い魔法陣に、茶色の弾が飛んでいく。
属性によって色が違う。
それはザミーラにも伝わった。
それを理解したうえで、待ち構えていた。
いほど自分の盾に自信があるらしい。
弾が盾と接触する。
「あら、意外とやるもんね。でも……」
弾完全に止められ、威力も弱くなって尽きかけていた。
ざんね~ん……ってあれ?」
ザミーラの少し前方にいるロイは笑っていた。
「ほら、よく言うだろ?確信したときが一番の慢心だって」
ザミーラはすぐに行動した。
攻撃は終わってはいなかった。
だから自分が誇る速さで対応を試みた。
「後ろからなんて卑怯だぞ~!」
瞬間、爆風が辺りを包んだ。




