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愚者の復讐  作者: 加賀谷一縷
第二章
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八十四話 限界

 ファニクスはロイの手に持っているソードブレイカーを見つめていた。


「それは……また可笑しなものを」

「レイピア対策ってとこだ」

「無駄なことを」

「なにっ?」


問いには答えず、ふっ、と笑った。


「わからないから貴様はこれから負けるんだ」

「前に一太刀も浴びなかったけどな!」


 こう人を煽っていくスタイル。

 ばつが悪そうな顔をする。


「口だけは達者だな。しかし、今日はそうはいかんぞ」

「だったら証明してみろ!」


 先に動いたのはファニクスだった。

 ロイに向け、一直線に走る。

 レイピアの主な攻撃は突くことだ。

 ソードブレイカーで対処するのは少し無理がある。

 縦、あるいは横に振られる剣ならそれを受け止めることも、絡めて折ったり、投げ飛ばすことも容易だ。

 しかし突きとなるとタイミングが極端に難しくなり、またちょっとのミスが命取りとなる。

 確かにレイピアは厄介だ。

 ロイはそれに銃を向け、自分の元へ到達する前に引き金を引いた。


「あんたも近接でやってやるとかないの?」

「ねぇ!俺はできないことはしないからな!」


 キリッとした顔で言う。


「悲しくならないならいいわ」

「なるに決まってんだろ!」


 それらを吹き飛ばすように弾丸が発射された。

 お馴染みの赤色の魔法陣に赤色の弾丸だ。


「遅い」


 ファニクスは呟くと、レイピアを鞭を撓らせるように切り上げた。

 弾丸は二つに割れ、後方へと飛んでいった。


「前よりも遅くなっているぞ」


 その言葉はにはがっかりだというニュアンスが含まれていた。


「うるせぇ。こっちはお疲れモードなんだよ!」

「だったら疲れたまま死ね」


 光の如き速さでレイピアが襲い掛かってくる。

 避けようとするも、剣先が二の腕を掠る。


「ってぇ!」


 レイピアの剣身にロイの血が滴る。

 攻撃はそれだけでは終わらず、血が宙を舞うぐらいに素早く水平に切りつける。

 避けきれない判断し、銃を盾代わりにして防ごうとした。

 突きではないため、防ぎきれると思ったからだ。

 その考え自体は間違いではなかった。

 しかし別に問題があった。

 受け止めたとき、踏ん張れるだけの力がなかったのだ。

 思わずのけ反ってしまう。

 レイピアだと、それほど力が込められていないと高を括ってた。

 己のミスだ。


「どうした?弱くなっているぞ?」


 つまらなそうに言う。

 早く終わらせてしまいたいと思ってるかもしれない。


「集中しないと勝てないわよ!」


 クロエの喝が入る。


「そんなことわかってるって!」


 もはや集中などで勝てる、対等に戦える状況ではない。

 向こうは万全の態勢、たいしてこちらは始まりから満身創痍だ。

 結果など誰が見ても予想できる。


「もう終わりだ」


 片をつけようと、再びレイピアをロイに向ける。

 魔法も使わずに倒すつもりだろう。


「ああ!くそっ!魔法使うか」


 血迷った発言だ。

 これ以上魔法、ないしは銃を使えば死ぬかそれに近いことになるのは避けられない。


「魔法はやめておきなさい」

「でもこのままじゃ勝てねぇぞ」


 ファニクスは素早くレイピアの射程圏内に入る。

 ここで負けることは許されない。

 後ろにはアリアスがいる。

 倒れることなどもってのほかだ。

 だったら刺し違えてでも勝つ。

 ファニクスは確かな手ごたえを感じた。

 レイピアはロイの腹を貫通しており、血が吹き出している。

 口からも血が流れ出ている。

 それでもこう唱えた。


焼き尽くす焔フランメアオフローダーン!」


 ロイの魔力が完全に尽きた瞬間だった。

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