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愚者の復讐  作者: 加賀谷一縷
第一章
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七話 始まりの原因

 帝国を好いている者は帝国民を除くと少ない。

 それは圧倒的軍事力に物を言わせ侵略を続けているからに他ならない。

 しかしそれだけの大国であるだけに他国がなかなか手が出せずにいるというのがこの世界の現状である。


 男が案内した場所は、人をさらって閉じ込めておくには親切すぎるほどの普通の部屋だった。

 こんこんとノックをすると中から声が聞こえてきた。


「……はい。どうぞ……」


 か細い声は知らない所へ連れられてきた恐怖の所為か。


「入るぞ」


 扉を開けるとそこにはベッドに座る少女がいた。

 小さくまとまり怯えている様子だ。

 だが姉の存在に気付くとすぐに立って走って向かった。


「お姉様……」


 抱き着くとラーシャもそれに応じるかのように頭を撫でる。

 一見微笑ましいが、どうも面白くない。

 帝国の人間だと思うと敵意を持ってしまう。


「さあ、質問に答えてもらおう」


 少々乱暴に言う。

 ラーシャは頷いた。


「ここはどこだ。なんで帝国の王女だという事を黙ってた」


 ゆっくりと口を開き、ロイの質問に答えていく。


「ここは帝国に逆らうために作られた組織の隠れ家です」


 とんでもない場所に来てしまっているみたいだ。


「おいおっさん、後で話がある」

「おっさんじゃねぇ。クラインだ」

「おうそうか。俺はロイだ。よろしくな」


 自己紹介タイムもほどほどにラーシャに問う。


「で、黙っていた理由は」

「はい。それは迷惑をかけると思ったからです。最初はここまできてくれると思ってませんでしたから」


 ここでもラーシャの気遣いか。


「しかしよく王女がこれたな」

「ええ。第二都市の方で事件と他の騒ぎのおかげで警護が手薄になっていましたから」


 第二都市といえばイェレミーアスだ。

 騒ぎなんてあったのか。


「いやあ、上手くいったぜ。俺考案の大道芸団作戦」


 あのサーカスはさらうためのものだったのか。

 つまり昨日さらわれたという事になる。

 それで今日ここまで来るとは行動力がありすぎる。


「なんでまたイェレミーアスなんかにいたんだ?王女なら帝都にいるだろ」

「私とセシリアは父の考えと合わずよく対立していたので近くには置きたくなかったのでしょう」


 セシリアとはラーシャの妹だろう。


「その父ってまさか……」


 アリアスは驚いたように言った。


「はい。シェヴァリエ・ヴァルフガング・ベルナール。帝国の皇帝です」


 その娘というのも十分に凄いが、それと対立するとは考えれない事だ。

 皇帝に対立するのは、言い換えれば帝国と対立する事だ。

 帝国人らしくない。


「ちょっと聞け、おまえら。帝国に逆らいたくはないか?」


 クラインと名乗った男はにやりと笑った。


「ちょうどその話をしようと思ってたところだ」


 ロイも久しぶりに口角が上がった。


 立ち話も何だとその場全員で別の部屋に移動した。

 中心に大きなテーブル、椅子があるだけの殺風景な部屋だ。


「では改めて、俺はクライン・ライヒェン。ここのディオーレ支部のリーダーをやってる。よろしくな」


 その後順々に自己紹介をして次はセシリアだ。


「あの……セシリア……です」


 初めて会った時と同じぐらいか細かった。


「すみません。セシリアは初めての方とはあまり話せないんです」

「そ、そうですか。し、仕方ないですわね?」


 ずっとラーシャの袖を握っているのもその所為か。


「じゃあ、まずおまえらがこれからどうするかだな」


 ロイは勢いよく立ち上がって、


「俺はここの一員として帝国と戦う」


 そう高らかに宣言した。

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