表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
愚者の復讐  作者: 加賀谷一縷
第二章
71/149

六十九話 戦い当日

 戦いの日当日。

 ロイとアリアスを含むすべての兵がグレゴールの元、兵舎で一番広い場所へと集合していた。

 グレゴールは皆の前で演説でもするように話している。

 着ている鎧はロイたちが戦った時と同じものだ。

 ピカピカに磨かれており、それは微かながらに光沢するほどだ。


「いいか、今日我々は勝利を手にする。それだけだ」


 どこのリーダーも戦う前とかは士気が上がる言葉をかけるんだな。


「では共に行こう!」


 おおっ!という全員の返事。

 そしてグレゴールに続きぞろぞろと歩き始める。

 どれもしっかりとした足取りで、凛々しい顔の者、愉快に笑う者、真剣な表情の者様々だ。

 それはロイ、アリアスとて例外ではない。


「そういやこれが初めてだね」

「なにが?」


 戦うのが初めてではないはずだ。


「正式に兵として行くってのが」

「そうだな。前は治療とかいう名目だったからな」


 それにアリアスは初めてだろう。

 前は来ただけで、戦場で魔法は使っていない。


「これが兵って感覚……なのかな?」


 問いかけにロイは答えた。


「確かにちょっと違うよな。なんてゆーか」


 うーんとロイは相応しい言葉を探すが、なかなか見つからない。


「あ~、わかる。あれだよね、あれ」


 アリアスも気持ちの面ではわかっているようだ。

 話し声につられるようにグレゴールが歩み寄ってきた。


「もう少し緊張やらしているかと心配していたが……大丈夫そうだな」

「グレゴールより強い奴なんてそうそういねぇからな」


 ふふっとグレゴールは笑った。


「その余裕みたいなのがムカつく」


 ロ位は口を曲げて言った。


「すまないな。つい。さあ、二人もついてきてくれ」

「おう」


 ロイたちも兵舎を出て、戦場へと向かった。



 戦地であるライムント平原。

 草が鬱蒼生い茂る普段人気のないその場所が、今はさっきだった二つの兵の軍で埋まっている。

 始まりの合図の花火が上がるまであと少し。

 周りの緊張は高まる一方であったが、その中でも気にしない者がいた。


「眠くなってきた」

「……あんたらしいわ。叩いたら眠気飛ぶかしら?」

「あれぇ!?急に眠気がなくなってすっきりしてきたぞ!?」


 戦いの前だとは感じさせない明るい声で言った。

 銃を肩にかけて、それに精がアリアスとは逆にふわふわ浮いている。

 もちろんアリアスには見えていない。

 持ち主にしか見えないからだ。


「ホントにあれでいいのね?」


 ロイにはいい加減しつこいように感じる。


(いいんだよ)


 クロエに何か言うときは気を付けて話すようにしている。

 そうでないとどこからか粗を見つけて文句を言ってくるからだ。

 今回もめんどくさい感をできるだけ消して話した。


「そう。……ならいいんだけど」


 その言葉の中に寂しさか、怒りか。

 ともかく負の感情があったのは確かだ。

 それがなんなのか、ロイにはわからない。


(心配ない。なんやかんやで生きて帰ってくるさ)


 笑い飛ばすように言った。

 ロイはそうやれば少しはクロエが明るくなると思ったからだ。


「そんなの当り前よっ!」


 ……怒られてしまった。

 どうしたものか、と思うロイ。


(そうだな。当たり前だな)

「だからあたしがいいたいのは」


 クロエの言葉をかき消して、始まりを告げる花火が上がった。


「おし、行くぞ」


 ロ位は二人に言った。


「……もういいわ」


 クロエは諦めてロイについていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ