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愚者の復讐  作者: 加賀谷一縷
第二章
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六十六話 席

 その男は農具を地面に着き、こちらを見て言った。


「久しぶり……っていうほどでもないか」

「パ、パウロ!?」


 驚くほど違うのは雰囲気だ。

 赤の鎧を着ていないと、別人のようだ。

 今は地味な農民が着る土気色の服を着ている。


「君はロイに向こうはアリアスだね。なんでこんなところに来ているんだい?」

「まあそのいろいろあってな」


 アリアスもパウロ本人とわかったらしく、ロイの隣まで来ている。

 そうか、と言ってそれ以上は何も聞いてこなかった。


「後の二人は?」

「家で他の作業してるよ」


 指したのは奥の小さめの家。

 周りには畑ばかりで比較するものがないので、そこまで見劣りすることもないが。


「よかったら寄っていってくれよ」

「どうする?」


 と聞いてアリアスに判断を任せる。


「じゃあお邪魔しよっか」

「そうか。じゃあきてくれ」


 農具を肩にかけ、歩き始める。



 家の中は質素で生活する分には困らないが、これといって大したものはない。

 机が一つに椅子が四つ、台所に……と一般的な感じだ。

 その椅子には男が右に、女が左にが座っている。

 こちらを見て茫然としている。


「えっ、その人たちって」


 先に口を開いたのは女の方だった。


「ああ、ロイにアリアスだ」


 確か女ががアンネッテで、男がヴェルナーだ。

 二人とも前に見た時来ていた服ではなかった。

 一般的な服装をしている。

 ヴァルナ―は腕を組んで少し嫌な顔だった。


「まあ、掛けてくれ」


 おう、と返事して椅子に座ろうとする。

 が、問題が生じた。

 これ、どこに座ったらいいんだ?

 まずアンネッテの隣だ。

 それはまずいか。

 しかし、以前雰囲気がよろしくなかったヴェルナーの隣というのもあれだ。

 どこに座るかで今後の関係性やらなんやらが大きく左右されるだろう。

 この際パウロやアンネッテなどの関係性はどうでもいいとしよう。

 しかしアリアスだ。

 もしアンネッテの横に座れば、狙っていると思われかねない。

 いや、まったく意識していないと言われれば嘘になるが、それは逆にまったく意識いないのは情勢に失礼であるというか情勢特有の矜持的なものがあるだろう。

 脳内会議はますます進行する。

 であれば横に座っても問題がない。

 だがそうしてしまうと、アリアスがヴェルナーの横になってしまう。

 それは避けなければいけない気がする。

 なんだこの配置……

 知将でも逃げ出すレベルに、一般人以下の知能で敵うものか。

 むしろ一般人以下だから思いつく考えがあるかもしれない。

 この時間が一番つらい時間だ。

 それは相手も一緒だろう。

 一体何と戦っているのかわからないが、とりあえずここは敵地である。

 見方はアリアス一人。

 対して敵は三人。

 まず勝利条件の確認だ。

 こちらとしてはアリアスが自分に対して、負の感情を抱くことなく、且つ敵にもそれをされないことだ。

 負けは逆で誰かから抱けれれば試合終了だ。

 待てよ、とロイは思う。

 この迷っている時間。

 この時間こそが相手の時間、相手の狙いではないだろうか。

 だとすればこちらは完全に罠にハマってしまっている。

 思えばここにつれてこられた時点で勝負は着いていた?

 くそッ、策士かッ!

 ならこちらも策を練るまでだ。

 口での駆け引きをしてみるか。


「ああ、でも椅子が一個たりないな?」


 さあ、どう出る?宿主さんよぉ?


「確かにな、じゃあ一個奥から取ってくるよ」

「ああ……」


 詰んだ。

 詰みすぎて言葉が出なかった。

 敵は一人減った。

 しかしその減った人物が問題だ。

 ほとんど敵内で話せる人物。

 他とはあまり関わりないぞ、命は助けた人いるけど。

 戦局はよくならないどころか、時間が経過していくごとに悪くなる。

 俺は席に座るだけでなぜここまでしなければならないんだ!

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